魔王ルシクル降臨
「ごめんっ」
突然謝られた俺は困惑を隠せない。
先程、『戦士たちの休息』に訪れ、レーデをなんとかしようと思っていたのだが──
「全部、八つ当たりだった。余裕そうに見えるルーロに、私がイラつきをぶつけちゃった。でも、もう大丈夫。絶対助けるって決めたから」
どうやら、大丈夫なようだ。
後ろでクナイがドヤってるし、クナイが頑張ってくれたのだろう。
「ありがとうな、クナイ」
「ん」
よし、もう心配することはないな。
んじゃ、今日にでも作戦を実行することにしよう。
「皆が集まったから、俺が調べたことを話す」
まず、二人には包み隠さず、サラテもといサクヤのことを話した。
双子の妹であり、『王国の罪』と呼ばれる儀式の生贄にされること。それは『勇者伝説』が発端であり、魔王の嫁として、その魂を魔王のもとへ届ける為の犠牲だということ。
その全てを話し終わった時、二人の顔は一層の決意が伺えた。
「絶対助ける。サクヤをそんなことにさせないわ」
「ん、可哀想」
俺の知らないところで成長していたようだ。
微笑ましい、この二人はどこまで成長するのか楽しみだ。
「よし、絶対助けるためにも、作戦を伝える。まず、決行は夜にしようと思う。そして、王城に侵入する訳だが、陽動というか意識を別のところに向けさせるために、レーデに『花火』を打ち上げてもらいたい」
「花火……?」
「そうだ」
未知の単語にレーデが小首をかしげた。
「色様々な火花を大きな破裂音とともに、空高く打ち上げる空に咲く火の花だ。できるか?」
「やってみる」
「よし、頼んだ」
作戦の序盤、肝心である『花火陽動作戦』はレーデにしかできない。
このパーティ、唯一の火属性だからな。
「んで、クナイだが、非常事態のために王城の近くで待っていて欲しい。このパーティで一番の機動力を持つ、クナイに頼みたい」
「ん」
クナイには婆さんお手製の連絡機『フォンスマ』を渡しておく。
薄い金属板のようなものだ。師匠が教えてくれた。
「これにいざとなったら連絡をする」
「分かった」
よし、大方の伝達は済んだかな?
「侵入は俺だけで行く。まぁ、いろんな理由があるんだ」
今回、俺は魔王として、侵入する。
メリットとして、侵入がバレた時の理由付けとして使える。この『勇者伝説』の話を利用させてもらう。
第二に、俺の顔バレ防止だ。万が一にでもバレたら、今後で冒険者ギルドに迷惑がかかる。エルサはすぐに連絡するよう言っていたが、国でも英雄に近しいエルサが反逆罪ってのはまずいだろう。
だから、細心の注意を払って、進まなくてはならない。
「二回目だが、決行は夜だ。レーデの花火を合図にして、侵入する。レーデは二時間経っても戻って来なかったら、クナイと合流。その時、『フォンスマ』で俺からのメッセージを待っていてくれ」
「わかったわ」
そして、一旦俺らは解散した。
「さて、そろそろか」
日が傾き、漆黒が空を支配する。
そんな夜空に綺麗な花が咲く。
「綺麗だな」
ドカーンという破裂音とともに、大きな花が咲き、そして散る。
王都中が、あの花に釘付けになっているだろう。
「じゃ、クナイ。行ってくる」
「ん、気をつけて」
「おう」
そして、俺は王城の前に来た。
「なんだ? アレ……」
「綺麗じゃないか。どこかでパーティをしているのだろうか?」
案の定、門番たちは花火に夢中になっていた。
作戦を始めようか。
「八咫烏」
呼びかけると、胸元に装備した『八咫烏の魔石』が妖しく光り、呼応した。
「マント」
設定されたコマンドの発声により、八咫烏が反応する。
魔石から漆黒のマントが出現し、俺の姿を包み込む。首元までしっかりと隠れているので、肌の一切が伺えない仕様になっている。
俺は『鬼神の仮面』を取り出し、顔に装備する。
「魔王・ルシクル。それが俺の──いや、我の名」
今宵、俺は魔王となる。
さぁ、『王国の罪』編の終盤──クライマックスの始まりだ。
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