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初めての買い物と道具制作 後編


 さて、早速、取り掛かろう。


 タイムリミットも迫ってる事だしな。


「これが『八咫烏の魔石』か·····」

「ヒヒッ、オーガやシャドウウルフとはオーラが違かろう?」

「·····あぁ」


 作業テーブルの上に置かれている、紫で妖しげな石。これが、八咫烏の魔石。


「ところで、小僧。『八咫烏の翼』をどうやって作る?」

「あぁ、それは──」


 八咫烏の素材ってのはほとんど出回ってない。それもそうだろう、最後に討伐されたのが今から百年前だ。残ってすらいない。


 そこで今回、使用する素材はブラッククロウと呼ばれる黒い鴉を使う。


「ブラッククロウの素材じゃ、『八咫烏の翼』とは言えんな」

「あぁ、分かってる。だから、進化を利用する」

「ほぉ?」


 婆さんは興味深そうに覗き込む。


 これから行うのは、ある種の実験だ。


 『進化』と呼ばれるそれは、魔物の成長であり、ブラッククロウが百年生き続けると、進化をする。つまりは、更に生き続けるために躰を変化させるのだ。


 遠くへ飛べるように二枚の羽は四枚にへと、青い目は赤い目にへと、そして足は三本にへと変化する。


 そして、八咫烏にへとなる訳だ。


 こういった進化というのは魔物の神秘的なもので、王国の学者たちも頑張って謎を究明しているらしい。


 そして、今回は人為的に、強制的に進化を促す。


「『八咫烏の魔石』は八咫烏の心臓だ。ブラッククロウの翼が呼応して、進化が始まるはずだ」

「小僧は何故、これを思いついた?」

「実は俺、一度だけ八咫烏を見たことがある」

「──なんだと?」


 『死の谷』で修行をしている時、空を無尽に飛び回ってたのを見た。


 魔力を奪って倒そうとしたんだが、さすがに伝説級だと上手くいかず、逃げられたんだがな。


「その時に魔力回路を見て、思ったんだ。ブラッククロウに類似してるって。ということは、躰の構造の大まかな部分は同じ、魔力も似てる。なら、魔石が近くにあれば、素材が勘違いして進化をするんじゃないかって」


 だが、既に息絶えた魔物の素材だ。


 そこが、一番の問題点であり、逆にこれが成功すれば、ほぼ『八咫烏の翼』は完成する。


 魔物はまだまだ分からないことが多い、多分、この実験をするのは俺が初めてだろう。


「最初から賭けだが、成功してくれなきゃ困る。いや、成功させる」

「ヒヒッ、いいねぇ。若返った気分だよ」


 じゃ、早速、やってみようか。


 ブラッククロウの羽を魔石に近づける。


「·····すぐには出ないか」

「そうさねぇ、だが、反応はしてるみたいだ」


 言われて見ると、微かに羽が揺れていた。

 もしかしたら、もしかするかもしれない。


「じゃ、先に『鬼神の仮面』とかを終わらすか」

「それがいいねぇ」


 ということで、八咫烏は置いといて、先に他を完成させる。


「小僧は『魔道具』を作ったことがあるのかい?」

「いや、ない」


 俺が装備してる『鬼神の牙刀』や『黒狼のマント』は装備品であって、魔道具じゃない。


 だが──


「やり方は教わった」

「誰に?」

「エリド」

「──ッ!」


 師匠の名を言うと、婆さんの目が変わった。


「あのガキの弟子かい!?」

「師匠を知ってんのか?」

「あぁ、もちろんだとも。あのガキ、俺に魔道具の作り方教えてくれって一週間も土下座してたからねぇ」


 ·····初耳だ。


「さすがにそこまで根気強く言われたら、教えるしかなかろうて。真剣に聞いて、学んで、それはもう立派になったよ」

「·····そうか」


 師匠も同じことをしてたのか。


「ちなみに師匠は何日で魔道具を作ったんだ?」

「はて、確か·····二日だねぇ。なかなかに覚えが早いから、驚いたもんだよ」


 それを俺は一日に三つ作るのか。


 ·····ここで、師匠を超えるのも面白いっ!


「なら、俺はそれを塗り替えてやるよ」

「ヒヒッ、やってみな。小僧がどこまでのものか、見させて貰うよ」


 俺は、『オーガの魔石』を取り出した。


 綺麗な透明感のある赤だ。


 これを目の形に加工する。そして、オーガの骨を主成分とした仮面にはめる。


 仮面のデザインは角が二本生えた、鬼面である。我ながら、カッコよく出来た。


 さて、鬼面を作るのはひたすらに削っての繰り返しで簡単、魔石の加工も別に難しくはない。


 だが、一番の問題。魔道具を作る上で、難しいと言われているのが、魔石と素材の融合だ。


 この時、魔力で覆って、形にしなければならない。


 というのも、そのままだと自然治癒で魔物が復活する。なので、魔力でそれを抑えなければならない。


 これが、非常に大変で、多すぎたら魔道具としての効果が発揮しずらくなり、逆に少な過ぎれば魔物が復活する。


 その魔道具にあった魔力じゃないといけないのだ。


 だが、お忘れだろうか? この俺、魔力に関して、トップレベルに扱うのが上手いです(どやぁ)


「これは驚いた。小僧、綺麗だな」

「俺は魔力操作に関しては、誰にも負けるつもりはない」


 俺にかかれば、ちょちょいのちょいだ。


 これで失敗したら『魔力操作の極致』の名が泣く。


 ちなみに『鬼神の仮面』が発動する能力は『威圧』、『夜目』、『鑑定』の三つ。

 『黒狼の長靴』は『瞬足』、『影潜り』の二つである。


 どれも、実用性の高いものなので、今後とも使える魔道具だ。


「残りもやっていくか」


 そして、瞬く間に『黒狼の長靴』が完成した。

 そう、ここまでは簡単だ。


「問題なのが、コレだな」


 未だ、呼応しているだけの羽。


「·····ふむ、試しに魔力の波長を変えて、ブラッククロウの羽に送ってみぃ」

「波長?」

「そうさね。魔力の波長ってのは魔物や人によって変わってくる。八咫烏の波長を真似て、ブラッククロウに送ってやれば、もしかしたら、かねぇ」


 ·····波長か。


「でも、八咫烏の波長ってなんだ?」

「ヒヒッ、それはこれさね」


 ──ッ!?


 確かに、先程とは違って、婆さんなのに婆さんじゃなく感じる。


「気づいたようだねぇ」

「あぁ、でも、婆さんって一体何者なんだ!?」

「それを言わないのが、レディってもんよ」


 ·····ソウデスネ。


「つか、婆さんがやった方が早いんじゃ──」

「小僧が使うものだろうに、儂がやったら意味がなかろうて」


 それもそうか。


 じゃ、さっき感じた魔力になるべく寄せて、ブラッククロウに送ってみる。


 ──ピクッ!


「反応した!?」

「ヒヒッ、これなら進化もするだろうね」


 婆さんの予想は的中した。

 だんだんとブラッククロウの羽が形状を変えていく、毛先とかも変わってきて、見たことないがこれが八咫烏の羽なのだろう。


「見蕩れている場合じゃないよっ! ほったらかしたら、復活しちまうっ!」

「──そうだっ!」


 急いで羽を回収。


 よし、ここからは俺の作業だ。


「『八咫烏の翼』は魔石から出現するタイプにしようと思うんだ」

「それは面白い案だねぇ」


 魔道具には2パターンある。


 『鬼神の仮面』のように作った素材に魔石をはめ込むタイプと、今からやる魔石から取り出すタイプだ。


 いわゆる収納型。


「魔石に魔力を覚えさせて、俺の魔力を送って、翼を実用可能に広げるやり方だな」

「ほぉ、他には?」

「〝モードチェンジ〟ってのを導入しようと思う。普段はマント。そして、魔力を送ると、翼に変化するっていうのはどうだろうか?」

「いいねぇ。夢があるっ!」


 八咫烏はその姿を隠すために、姿を変えることが出来る。


 それを利用して、マントに変化させた状態から翼を四枚広げる状態に変えられたら、面白い魔道具が完成する。


「こっからは大変な作業になるな」

「どれ、儂も手伝おう。完成まで付き合ってやろうかねぇ」


 そして、共同作業が幕を開けた。






「か、完成した」


 苦節五時間。


 深夜もいいところ、もしかしたら明け方かもしれない時間帯に終わった。


「ヒヒッ、ここまでやったのは久しぶりだねぇ。まぁ、ほとんどは小僧がやったんだがね」

「いや、婆さんのアイデアなしでは完成しなかったよ」


 流石、ベテランと言うべきか、その都度のアドバイス、そしてアイデアは非常に助かった。


「これで小僧のすべきことは終わったのかい?」

「あぁ、後は仲間をどうにかすれば実行に移せる」


 だが、まずは──


「寝よっ!」


 瞬間、疲労が一気に訪れ、俺の意識を軽々刈り取ったのだった。

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