初めての買い物と道具制作 前編
初めてのおつかいならぬ、初めての買い物を始めようっ!
──ということで、俺は王都に来てからだいぶ経ったが、ほとんど冒険者に時間を注いできたので、王都に詳しくない。
なので、今回、スペシャルな人を呼んでおりますっ!
「じゃ、よろしくっ! ミーヤ」
「はいですぅ。頑張りますぅ」
彼女はパッと見、そうパッと見、仕事が出来なそうなドジっ娘風であるが、仕事が完璧なギルド嬢だ。
つまりは、王都に詳しい人材。
今回、サクヤの件で必要になってくる道具を買うため、ミーヤの休みを利用した『初めての買い物』をやっていこうと思う。
ちなみに、ミーヤにサクヤの話はしていないし、話すつもりは無い。
「じゃ、早速頼む」
「·····その前に、私の服装みて感想はないのですかぁ?」
·····感想?
大きめのセーター? に、黒の長めのスカート。似合うし、可愛いが、感想か·····。
「ふわふわ系のミーヤにとても似合う服装だと思う。うん、可愛いっ! いや、綺麗と言うべきか·····迷うな」
下手な嘘は要らない。俺は思ったことを本心で言った。
「·····そういう事を言うから、嫌われるんですよ?」
「ふぁ!?」
「下手に可愛いとか、綺麗とか言うと、ダメなんですからねっ!」
·····実に難しい。
「·····でも、分かった。これから気をつける」
「そうして下さいぃ。では、最初に何を買うのですかぁ?」
今回、買うのは『魔道具』に必要不可欠な物だ。
魔道具というのは魔法の効果が付与されている道具、又は、装備のことを言うのだが、原材料は主に魔物の素材が使われる。
魔物には得意な魔法がある。アイシングキャットは氷魔法。シャドウウルフだったら影魔法である。
だが、ここで不思議に思う人もいるだろう。何故、五属性と珍しい二属性以外の魔法があるのか? と。
それは人間が使える属性の話だ。
前も説明したが、魔力とは人の身には余る代物である。
魔力を活用する方法、それを〝魔法〟と言うのだが、人が扱えるのが七属性に対し、魔物はほぼ無限大のレパートリーが存在する。
で、中でも珍しい属性というのが、アイシングキャットの『氷属性』だったり、シャドウウルフの『影属性』だったりするという話だ。
話を戻すが、人間に氷属性や影属性の魔法を扱うことは出来ない。実際には出来るのだが、やれば大きな代償を支払うことになるだろう。
その問題を解決するのが『魔道具』ってことだ。
魔物の素材を使うことで、その魔物の得意属性の効果を発動する事が出来る。
で、今回はそんな『魔道具』を自作するって言う事なんだが。
「俺が欲しいのは、まずポーションと、後は魔石だ」
ポーションとは回復薬のことなんだが、それとは別に『魔石』が必要になってくる。
魔道具を作るにおいて、魔石とは必要不可欠な存在である。
魔物の素材をそのまま使っても効果は発動しない。なぜなら、既に息絶えた魔物であるからだ。
少し説明が難しいのだが、魔石とは魔物の心臓部にあたる部分である。
そして、シャドウウルフの魔道具を作りたければ『シャドウウルフの魔石』を使わなければ、素材が効果を発揮しない。
魔物の素材が効果を発揮するのは、その魔物に適応した魔石が近くにあることが必須条件。
つまり、魔石を魔道具にぶち込まなければ効果を発揮しないということだ。
「·····もしかして、『魔道具』を作ろうとしてますぅ?」
ミーヤには即バレしたな。まぁ、魔石の使い道が魔道具にしかないのだから、当たり前だが。
「ちょっと、パーティの強化にな」
「あの、失敗するとどうなるかって、知ってますぅ?」
「知ってるが?」
もし、失敗したら、魔物が生み出される。
基本、魔物を倒すと魔石は消える。だが、稀にドロップすることがあるのだ。
だが、魔石は心臓部。素材が近くにあれば、自然治癒が発動して魔物が復活する。
だから、魔石店というのは厳重に完備されている。
「もし、失敗したら分かってますよねぇ?」
「あぁ、分かってる」
失敗し、それにより被害があれば罪に問われる。だから、失敗なんて出来ない。
「·····なら、いいですぅ。本当は嫌なんですけど、その目を向けられたら仕方ないですぅ」
「悪いな」
「いえ、では案内しますぅ」
そして、歩いて向かった先は怪しげな階段だった。
「魔石は基本、表で販売されません。裏で販売されますぅ。では、ご案内ぃ」
階段で下っていくと、先程までの人々の騒音が嘘のように聞こえなくなる。
冷えきった風が、俺の頬をなでた。
「らっしゃい」
地下の先に立っていたのは婆さん。
怪しげなフードを被ったムードムンムンな婆さんだ。
「魔石を売ってくれ」
「なんの?」
「シャドウウルフとオーガ、そして、八咫烏」
「──ッ! 小僧がなんでそんなもんを」
八咫烏とは非常に珍しく、龍種に並ぶ、伝説級の魔物である。
「八咫烏ってのは相当の値が貼るよォ?」
「分かってる。だが、どうしても必要なんだよね」
八咫烏が討伐確認されているのが、過去に五件。その中で二つ、魔石が存在する。
「儂の店で一番の代物だ。百億以上はするねぇ」
「あぁ、分かってる」
『死の谷』で倒してきた魔物は俺が装備している他に、師匠が換金してきている。
その分の金を全て使う。
「小僧のソレ。なかなかじゃないかぁ?」
「『鬼神の牙刀』と『黒狼のマント』は自作だ」
「それがあれば充分だと思うがねぇ」
·····確かにな。
この二つがあれば防御力も攻撃力も充分過ぎるほどだ。
だが──
「『八咫烏の翼』を作りたいんだ」
「·····ほぉ?」
婆さんの目付きが変わった。
「小僧は知ってるおるねぇ」
「そうでもないさ」
オロオロとしているミーヤに婆さんが説明した。
「ヒヒッ、『八咫烏の翼』ってのはねぇ。魔王が使っていたとされる胴の『魔道具』だよぉ。漆黒のマントで、効果を発揮すると四枚の翼に変化することから〝翼〟の名がついた」
「──ッ! なんで、ルーロ様がそんなものを!?」
「必要なんだよ。どうしても」
今回、必要になってくるのは如何に伝承通りの魔王に寄せるかだ。
「ということはあれかい? オーガを使う『魔道具』ってのは『鬼神の面』ってことかい?」
「そうだな」
「そして、『黒狼の長靴』ときた。なんだい? 小僧は魔王にでもなりに来たのかい?」
「·····まぁ、そんな所だよ」
この婆さん、博識だな。
「ヒヒッ、気に入ったよ。小僧が何を成すためにこれを求めるのかは知らないが、そうさねぇ、全部含めて百億にしてやるよ」
「なかなか太っ腹だな」
「老い先短い人生だ。ここで馬鹿な賭け事に興じるってのも面白い」
「·····そうか。なら、婆さんの賭けは当たりだ。俺は今からとんでもないことをするからな」
「ヒヒッ、楽しみにしてるよぉ?」
任せとけッ!
「なら、奥の部屋に。そこで、魔道具を作りな」
「いいのか?」
「小僧が失敗したら、儂が責任を持って駆除してやろう」
「ありがたい、なら、ミーヤ。悪いが、ここでお別れになっちまう」
「はいですぅ。お役に立てて何よりですぅ」
ミーヤが帰った頃、俺は魔道具作りを始めるのだった。
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八咫烏ってカッコイイっすよね。
魔道具の説明に関しては、後編で詳しくやります。それでも分からなかった場合、感想でご指摘頂ければ、返答しますし、その部分を書き加えます。




