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女子会とお別れ


「──やっぱり、ストーリーでいうとド○クエ5が面白いと思うんですよっ!」

「あー、それは分かるわ。話を聞くだけしか出来なかったけど、一番やりたいのは何? って聞かれたらドラ○エ5だわ」


 あれからずっとお喋りが続き、すっかりと日が落ちていた。


「もういいかしら?」

「ん? あぁ、終わったか?」

「ん、バッチリ」


 さすが飲み込みの早い人は違うな。


 ほんとに俺の一ヶ月間はなんだったのだろうか。


「私もお喋りが過ぎましたね。くしゅんっ」

「さすがに冷え込んできたな」

「私に任せてっ」


 レーデが火を起こす。

 バチバチっと火花が散り、綺麗だ。


「じゃ、そろそろ飯にするか」


 ふっ、既に食材は手に入れている。

 お喋りの間に取りに行ってたんだ。


「ファングボアーの肉とイーティングフラワーとかを取ってきたぞ」

「(ぱぁー)」


 クナイが目を輝かせる。


 ふっ、機嫌をとるために頑張ってきたんだ。これで、今回は見逃してもらいたい。


「んじゃ、二人はずっと修行してたんだし、三人でお喋りでもしてろよ。料理は俺がするよ」

「さすがはルーロ様ですね。先程の話から、早速好感度稼ぎを──」

「ゲフンゲフンっ! なんの事か分からんなっ!」

「·····好感度?」


 ほら、レーデの目が怖くなったっ!


 サラテッ! てめぇ、なんてことをっ!


「(てへっ)」


 てへぺろじゃねぇんだよっ!


 可愛いけどもっ!


「(むすぅ)」


 ほら、クナイのご機嫌が悪くなっちまったじゃねぇかっ!


「もういいから、早く休めっ!」


 ったく、人がせっかく下心があるとはいえ、親切にしてやってんのに。


「「「はーい(ん)」」」


 先程俺が座ってた石の上に三人が仲良くちょこんと座る。


 俺は、少し離れたところで黙々と料理を始めたのだった。



 ✻ ✻ ✻



「フフフッ、私、女の子同士で話すの夢だったんですよっ!」


 サラテが笑いながらに言う。


 王女という身分だったがために、同年代の友達が少ないのだ。

 いわゆる〝女子会〟とやらを夢に見ていたのだろう。


「私も友達がいないから」

「あー、私もリットとは仲が悪かったから、お喋りは経験してないわ」

「なら、三人とも初めてですね!」


 嬉しそうに笑みをこぼすサラテに、二人もつられて笑みを浮かべた。


「今更だけど王女様なのに敬語じゃなくて大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよ。友達ってことで、敬語なんていりませんっ! ルーロ様なんて敬語なんか一回も使ってませんよ?」

「あー、ルーロはそういう所あるからね」

「ん、だいたいタメ口。もしくは変な語尾を付けるだけ」


 話題は自然とルーロの事に。

 サラテは、面白そうに語る二人を微笑みながら見る。


「御二方とも、ルーロ様の事が好きなんですね」

「「──ッ!」」

「そ、そんな訳ないじゃないっ!」

「··········ん、そんな訳ない」

「フフフッ、今はそういうことにしておきましょうか」


 余裕そうなサラテを恨めしそうに二人が見る。

 

「そ、そういうサラテはどうなのよっ!」

「気になる」

「わ、私はそういう感情は知りませんよ」


 サラテは何処か遠い目をしながら、言った。


「私に恋情なんて不要ですから·····」


 急に雰囲気を変えたサラテを、察したレーデが慌てながらに言った。


「で、でも、恋はしてみたいでしょっ!?」

「·····そうですね。確かにしてみたいです」

「どういう人がタイプ?」


 女子会といったら、やっぱり恋バナだろう。


 心なしか、ルーロが聞き耳を立てているような気がする。


「·····そうですね。私は魔王様みたいな人が好みです」

「ま、魔王って」


 レーデが呆れるように見た。


「王女様がそんな事いったら、大変なことになるわよ?」

「ですが、攫ってくれそうじゃないですか! 確かに、勇者様はカッコイイ方と伝えられていますが、勇者様は一人よりも大人数を選択するお方だと思います。それが正義だとするならば、一人を選択する悪い魔王様の方が、私としては好きですね」

「ふーん、私もそれはちょっと分かるかも。自分自身を選んで欲しい時もあるわよね」

「ん、その考えに異論なし」


 「ふむ·····そういう男が」とメモるルーロ。やはり、聞き耳を立てていたようだ。


「レーデ様はどうなんですか? クナイ様も気になります」

「私は·····馬鹿な、そうね、諦めの悪い馬鹿が見てて面白いから好きね」

「私は、私を認めてくれる人」


 「あれ? 俺のことか? ·····いや、違うか」とルーロは諦めた様子で、料理に戻る。


 淡い期待が砕かれたようで、ルーロは落ち込んだ様子であった。


「じゃあ、もう恋をしてるんですね」

「··········そうね」

「ん」

「フフっ、微笑ましい限りです。誰とは言いませんが、彼には一生縁のないものなんでしょうねっ!」


 サラテがわざと大きな声で言ったので、それが見えぬ矢となって、ルーロを刺す。


「なんでアイツの話になるのよっ! アイツは馬鹿は馬鹿でも、嫌いな方の馬鹿だわっ!」

「·····同感っ!」


 グサグサっと刺さる。


 ルーロのメンタルは今日だけでどれぐらい壊れたら気が済むのか、女の子とは恐ろしい存在である。


「そ、そろそろ出来たから、その辺にしてくれ·····」


 ルーロは胸を抑えながら、報告する。


 赤くなっているレーデとクナイの顔は焚き火で見えなかったのだった。



 ✻ ✻ ✻



 女子の会話を聞くもんじゃないなと感じる今日この頃、俺のメンタルは崩壊寸前です。


「じゃあ、頂くとするかっ!」


 ファングボアーの肉を豪快に焼いたステーキが実に美味そうだっ!


「·····美味い」

「ん、おいしい」

「ルーロ様にこんな一面が·····」


 ステーキを一口食べた三人の感想。


 ふっ、華麗に決まったな。


 師匠と二人きりの時、料理は俺の担当だった。見た目が凝ってるようなものは出来ないが、味は美味いと自負している。


「ふふんっ! そうだろう、そうだろう。さぁ、いっぱい食ってくれ。こっちのフラワーサラダもなかなかだぞっ!」


 木の実を入れ、和えたフラワーサラダ。木の実の歯ごたえのある食感と、イーティングフラワーのシャキシャキ感が非常に合うサラダだ。


「さっぱりしてて、ステーキとあうわね」

「ん、おいしいっ!」

「料理が出来るなんて·····なんか、負けた気分です」

「本当は米があったら良かったんだがな」

「米ですかっ!」


 サラテが過剰に反応する。


「あぁ、東の方にあるらしいぞ? 師匠が美味いって言ってたから、今度行く予定なんだ」

「私も一度でいいので、米を食べてみたいです」


 確か、温泉の街『パング』だった気がする。


「その時はサラテも誘っていくか」

「あっ·····そ、そうですね。お願いします」

「悪い、王女様なのに大丈夫か?」

「え、えぇ、日程があえば行けます」


 歯切れの悪いサラテ。


 ·····そろそろ、ハッキリして貰いたいな。

 みんなが完食した頃、一段落したところで尋ねる。


「なぁ、サラテ。お前って──」


 ドカァーンッ!!!


 大地が爆ぜ、焚き火が吹き飛んだ。


「あっぶね」


 間一髪、避けたはいいが、黒ずくめの怪しい男が二人、目の前に立つ。


「王女様をお連れする護衛ですので、ご安心を」

「にしては、随分と物騒じゃねぇか?」


 見た感じなかなかの手練だ。

 魔力も奪えそうにない。


「──ッ!」


 サラテの目が見開かれる。

 どうやら知ってる顔らしいな。


「どうやらお時間が来たようです」


 サラテが諦めた様子で言った。


「すみません。では、行きましょう」


 見る限り絶対、引き戻しにきた訳じゃないのは分かる。


 それは二人も同じなようで──


「ちょ、ちょっとっ!」

「サラテ、顔が真っ青」


 おいおい、マジかッ!


「あぶねぇっ!」


 二人を突き飛ばし、右手で空を切る。

 一本、防げなかったようだ。短剣が俺の右手を貫通した。


 突然、短剣を投げてくるって、頭イカれてんのかっ!?

 しかも、心臓目掛けてとかよッ!


「こちらも穏便に済ませたいのです。出来れば、お引き取り下さい」


 やってくれたなッ!


 俺が臨戦態勢をとったところで、サラテが声を荒らげた。


「やめてくださいッ! 私は家に戻るだけです。ルーロ様、その手をお引き取り下さい」


 ·····そんな顔で言われたら、引くしかないな。


「では、これで」


 そして三人は消えていった。


 俺はどうしても、最後の泣きそうなサラテの顔が忘れられなかったのだった。

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