オウジョ、コワイ
「「·····」」
「あの、二人とも、どうしたんだ?」
尋ねても、黙りを決め込む二人。
·····怒らしてしまったのか?
いや、怒られるようなことはしてないはずだ。
「何を怒ってるんだ?」
「··········私は水浴びをしなさいと言ったのよ?」
固く閉じられていたレーデの口が開く。
「あぁ、しっかりと顔を洗ってきたぞ?」
「じゃあ、なんで、アンタのマントを羽織ったタオル一枚の女の子がそこにいるのよっ!」
もしかして疑っているのか!?
俺がサラテに手を出したかもしれないと!?
「お前·····俺の鋼の心を、侮辱するのか?」
「いやっ! だって、ほぼ半裸じゃない!?」
俺が女の子ばかりのパーティで何も感じてないと?
師匠と一年間一緒だったが為に、溜まりに溜まっている、俺の本能を一生懸命抑えているというのに──ッ!
「誓って、手なんか出てないッ!」
「──でも、覗きはしましたよね?」
「その件は、ほんとにすみませんでしたぁっ!」
ごめんなさい。
まさか、まだ根に持っていたとは。
そりゃあそうですよね! だって、覗かれてるんですもん。
話題がズレただけで、あの場で結局、許されてないもんねっ!
「「·····」」
「いやっ! 違うんだって、たまたま、たまたま見ちゃったっていうか、なんて言うか。そのぉ、ね?」
「『ね?』じゃないのよ、『ね?』じゃっ!」
「·····ギルティ」
「俺の話を聞いてくれよっ!」
だって、あの場は仕方ないだろ?
湖があって、水浴びをしようと思ったら先客がいて、運がいいのか悪いのか、たまたま見ちゃっただけなんだよっ!
アレは覗き不可避だろっ!?
「言い訳なんて聞きたくないわね」
「·····ん。それ相応の罰を受けるべし」
「そんなっ!」
いや、だってッ!
·····俺が悪いのか。
「じゃあ、罰は追追考えるとして、貴方、名前は?」
「サラテと言います」
「はい、サラテね。うん、サラテ·····サラテっ!?」
レーデが〝サラテ〟の名を聞いた途端に、叫ぶ。
「アンタ、なんでサラテ様を覗いちゃったのよ! 死刑じゃない!?」
「·····ほんとに王女様?」
「えぇ、そうですよ。でも、ルーロ様は話の合うお方なので、一応生かしていると言ったところです。ですので、死刑はしませんよ? ·····但し、許さないですけど」
とんでもない一文が最後に聞こえてきたんですけど·····
不可抗力なのになぁ。
「聞けば、お二人は修行をなされていると、ですので、その間、私は少しの間だけでもいい。彼とお喋りをしたいのです」
「·····コイツとお喋り?」
「はい。もしかしたら最後になるかもしれませんしね」
「?」
レーデは話が分からず、疑問符を浮かべる。
そんなレーデにサラテは「いえ、こちらの話です」と話を続ける。
「どうでしょう?」
「いや、とりあえず格好をなんとかしてくれれば·····」
「(こくこく)」
·····そう言えば、そうだわ。
「サラテ、服は?」
「ルーロ様のを貸してください」
「え? っていっても、俺もそんなに量を──」
「いいんです」
そこまで言うなら──
「ほれ、パーカー。師匠特製の服だ。フードが着いてるから、中々カッコイイぞ」
「ほわぁぁあ、これがパーカーっ!」
早速木陰で着替えてくると、レーデとクナイを連れ、数分後、帰ってきた。
「やっぱ、サイズが大きかったか」
「いえ、ちょうど下も隠せたので一石二鳥ですっ!」
「なら、いいか」
文句がないなら、大丈夫だ。
つか、改めて見ると、すげぇな。
グレーのパーカーなのだが、俺でも少し大きめなので、少し小柄なサラテからすれば充分過ぎるほど大きいだろう。
実際、袖から手が出ずに、ブカブカなのが伺える。
だが、それがいいっ!
可愛いっ!
「(むすぅ)」
「どうしたんだ? クナイ」
「·····別に」
そして、プイっとそっぽをむいてしまった。
レーデもジト目で睨んでくるし。
「では、お喋りしましょっ!」
「あ、あぁ、そうだな。じゃあ、レーデとクナイは『魔力操作』で扱える魔力の量を増やす修行に入ってくれ」
暫く、サラテに付きっきりになるから、指示だけは完璧にする。
これ以上、二人から嫌われるのは嫌だ。
既に結構、嫌われているのに、更にとなるとメンタルが持たんっ!
「前、クナイに教えたが、手の動きと魔力をイメージとして連結させ、手のモーションで魔力を自在に扱えるようにする。そして、手の動きで魔力の量も調節出来るように、自身で戦闘中出来そうな簡単なモーションを考え、それで実際に出来るまで、頑張ってもらう」
何個か、例を上げた方が分かりやすいだろうか?
「例えば、俺の場合、手でなく言葉と連結させている。例えば『一段階』とか、『全開出力解放』とかだな。『魔力奪取』をする時は右手で空を切るようにしている」
これぐらい、説明すればいいか。
まだ、ジト目が治らないけど大丈夫。きっと、お喋りが終わった頃には治ってるはず。
きっと、そう、きっとっ!
「では、私たちは遠目で見ていましょう」
「そうだな」
事実、俺は暇してるからな。
こういっちゃあなんだが、いい暇つぶしになる。
そして、俺らは少し離れたところにある手頃な石の上に腰を下ろした。
「·····ハーレムなんですね」
··········ん?
「まさか、ハーレムだとは」
···············ん? (二度目)
「開口一番、何を言ってんだ?」
「ずっぅうっと、言いたかったんです。ルーロ様はハーレムだねって!」
「何処が?」
確かに〝ハーレム〟は知っている。
師匠が、長年の夢だと語っていたから、よく覚えている。
あの、アレだろ。
周りに女性を侍らしてるモテモテキングのことだろ?
「それと、これがなんなんだ?」
「だって、御二方を侍らしてるじゃないですか!」
俺の方が身分低めなぐらいなんですけど。
それに、付き従ってるか? ·····アレ。
いや、パーティという意味ではそうかもしれないが、好意を抱かれていると聞かれたら、違うと言える。
「·····でも、そう見えちゃうかっ!」
いやぁ、見えるなら仕方ない。
そうだよなっ!
普通、嫌ってる奴とパーティ組まないもんなっ!
「でも、不思議ですね」
「ん? なにがだ?」
今の俺は非常にテンションが高い。
見えるだけならタダだからな。いやぁ、さすが王女様。俺のツボを分かってるぅっ!
「ルーロ様に魅力なんてないのに、何故でしょう?」
──魅力なんてないのに·····
──魅力なんてないのに·····
──魅力なんてないのに·····
俺の心で木霊する強烈な一言。
「·····え?」
「私はたくさんのライトノベルを読ませていただいた事があります。どれも、夢物語のようで素晴らしいものでした。しかし、ハーレムだけは納得出来なかったんです。あらすじでは冴えない男、又は、陰キャ男と書かれているのに、どうしてモテるのだろうと」
あの、コレ·····
「怒ってます?」
「いえ、決して。先程の覗きなんて、ね?」
『ね?』じゃないよ『ね?』じゃっ!
特大ブーメランが俺に向かってくるが、そんなもん知らんっ!
「──話を続けますね? そして、読んで分かったのです。そりゃあモテるな、と。それは、優しい人間なんてこの世にいると思いますが、自分が窮地なのにそれでも助けてくれる人はいません。それが例え、物語上の設定だとしても、好意を抱く対象としておかしくはありません。ですが、ルーロ様は違います。優しいというよりかは鬼畜。人の全裸を見る変態です。どこに魅力がありますか?」
笑みの恐怖。
笑顔の裏に隠された強烈な怒りに、俺は負けた。
「·····俺、モテてないよ」
「え?」
「むしろ、嫌われてるよ」
「そうですよね? いやぁ、驚きましたよ。だって、パーティに女の子しかいなかったんですもの」
「ハハッ」
頭がおかしくなりそうっ!
「平凡な顔ならまだしも、加えて覗きをしてる人なんて普通、惚れませんよね?」
「アハハッ!」
──オウジョコワイ。
そして、王女様の一方的な会話は、この後も続いたのだった。
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