王女がヲタクじゃないと誰が決めた?
·····どうしよう。
「さぁ、言い訳はございますか? 無ければ、即腹切でございますよ?」
あれは遡ること数分前──
「きゃぁぁぁあッ!!」
「·····終わった」
女性は自身への視線に敏感だという。
まさにその通りだった。
ちょうど、目が合ったのだ。
「·····私を誰かと分かってての行動ですか?」
「·····王女様ですよね」
「分かってるなら話は早いです。即刻、腹切を所望しますっ!」
タオル一枚でそのルックスが隠れる訳もなく、先程からチラチラと·····見える。
そりゃあ、俺は正座している訳だし、下からのアングルなら100パーセント見えるだろ!?
「·····見えるんすけど、それはいいんすかね?」
「ぅうぅ」
声にならない奇声を上げる。
落ち着くまでに数分を要した。
そして今に至る。
「言い訳もなにもないですよね? 純潔の乙女の裸体を覗いた罪は重いですよ?」
「俺は別に覗こうと思ったわけじゃない」
このままでは即刻打首だ。
それは阻止するっ!
「では、なんだというんです?」
美少女の顔が近くまで接近する。
こ、コイツ·····見えそうで見えないラインを攻めてきやがるっ!
だが、このままタオル一枚だと、こっちが身が持たないので『黒狼のマント』を羽織らせた。
「──なっ!?」
「とりあえず、着といてくれ。じゃないと集中出来ん」
「私の体が醜いと!?」
「逆だ、逆っ! 綺麗だから体が持たないのッ!」
すると、怒りで赤くなっていた顔が更に赤くなる。
「そ、そんな恥ずかしい言葉を簡単にっ!?」
「思ったことは口にしろってことは師匠の教えだ」
変に気遣うと、空気が悪くなると教わった。
本当のパーティというのは思ったことを言い合える仲だと言う。
「貴方の師匠の顔が見て見たいですっ!」
「師匠の場所は知らんよ。あの人、どっか行っちゃったと思うし。今頃、隠居生活でも送ってんじゃね?」
多分もう、『死の谷』には居ないだろう。
冒険者も引退したし、残りの余生を存分に生きている頃だろう。
「·····失礼ですが、師匠の名前は?」
急に静かになって、コイツなんだ?
別に隠すようなことでもないから、いいか。
「エリド。『黒き亡霊』の──」
「やっぱり、エリド様でしたかっ!」
·····ん? 様?
「なんだ? 師匠と話したことあるのか?」
「もちろんですっ! エリド様の全てが秘密となっている中、少ない情報源から探し求め、彼の名前、歳、血液型、使う魔法、出生は全て判明させることが出来ましたっ!」
「お、おぉう」
あまりに勢いが強い。
「エリド様が属性適性をお持ちじゃない時は驚きましたよ」
「──ッ! なんで知ってんだ!?」
「え? 普通に調べたんですよ。私、魔法やその類が好きでして、エリド様は不思議な魔法を使っておられたので、調べてたんですよっ!」
急にこの子、文字数が多くなったんですけど·····
「魔法というのは面白いものですが、やはり、私が一番好きなのは〝アニメ〟でしょうか!」
「なんで、その事を知ってんだ!?」
「エリド様からお聞きしたのですよ。〝地球〟っていう星が存在し、そしてそこにはアニメや漫画という物が存在すると」
やっべ、王女様、もしかして──
「やはり王道な『NA○UTO』や『ワン○ース』、『ドラ○ンボール』も面白いのですが、ライトノベルが原作のアニメも中々捨てがたいっ!」
──ヲタクじゃねぇかっ!
俺、王女様って気品さが溢れる上品な女の子だと思ってたが、どうやら偏見だったようだ。
この子、すごぉい。
「『遊○王』からカードゲームにハマり、そこからRPGもやり始め、『ドラゴン○エスト』や『○ァイナル○ァンタジー』も──」
「分かった、分かったからっ!」
師匠が口頭で説明してくれたゲームも全部知ってやがった。
それに、その口ぶりだと──
「王女様って、その辺プレイしたことあんのか?」
「サラテでいいですよ。·····そうですね、話で聞いて、面白いと思ったので、闇魔法でエリド様の記憶を読み取り、木魔法でそれを創造して、作ってやってました」
「は?」
「あっ、私、『二属性適性者』なんですよ」
「·····マジか」
·····サラテだったっけ?
この子、規格外だわ。
自分の興味を示したものをとことん詰め、そして実現させる行動力。
──拍手喝采ッ!
「··········サラテ」
「あっ、また私、こんなに·····」
「いや、卑屈になるなっ!」
「え?」
「お前のその飽くなき探究心、そして夢を掴む行動力。君の才能は素晴らしいっ!」
いやぁ、この子本当に凄いわ。
話してて楽しい。
「··········そんな事言われたの初めて·····」
「なんか言ったか?」
「いえっ!」
全国の女の子諸君っ!
君たちはお姫様に憧れるかもしれない。
そんな諸君は、サラテを見て落胆するだろうか? これが現実のお姫様なのだと。
だが、そんな諸君らに問いたい。
──王女様がヲタクじゃないと誰が決めた?
「あの、お名前は?」
「あぁ、俺はルーロっていう」
「では、ルーロ様っ! この後、お喋りに付き合ってくれませんか?」
「え?」
「私、時間を持て余しているのですよ。ですので、その、お付き合いを」
「·····まぁ、いいか。ちょっと待っててくれ」
湖で顔の返り血を落とす。
··········つか、俺、よくこんな顔で王女様と話していたな?
自分が怖いし、何より、そんな俺の顔を見て注意しないサラテが怖い。
まぁ、いいか。
「俺、パーティとこの森を来てるんだが、サラテはいいのか?」
「何がでしょう?」
「護衛とかいないのか? ってこと」
それらしき気配は周りにない。
一国のお姫様がここに護衛なしで居ては、ダメだろう。
「··········護衛は遠くから見守っているよう言いましたのでっ!」
「·····なら、いいが」
俺の索敵範囲より遠くにいるって、どんだけだよ。
·····なんか、隠してるのか?
いや、ここは素直に受け取っておこう。
「じゃあ、俺のパーティが待ってるから、ついてくるか?」
「はいっ!」
✻ ✻ ✻
「彼女は?」
「現在、正体不明の男と移動中」
サラテの言う通り、遠目より伺っている黒ずくめの男が二人。
しかし、その様子は護衛とはかけ離れている。
「彼女は大事な〝生贄〟だ。その日、その瞬間まで替えのきかない〝道具〟だからな」
「·····分かってる。絶対殺させやしないし、自由行動が終わったら──」
「そこまで考えているなら、大丈夫か。なら、暫く一人で任せる」
「了解」
「俺は、これからその事に関しての許可を貰ってくるよ」
男はニタァと気味の悪い笑みを浮かべた。
「我らが雇い主、国王様にね」
ヲタクという定義があやふやなので、もしかしたら変えるかもしれません。
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