まさかの出会い
「よっしゃぁっ! じゃあ修行を始めようぜっ!」
「テンションがやけに高いわね」
人に教えるってなんかワクワクしない!?
「それよりも、なんで『魔の森』なんかで修行するのよ!」
「なんか悪いのか?」
なんだろうか?
「大ありよっ! アンタ、ここ化け物みたいな魔物が多くて有名な森じゃない!」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「なんで分からないのよっ!」
「アイシングキャットが確実にいるのはこの森だろ?」
「そうだけど、他にも──」
「甘えは捨てなって、この修行で甘えなんて無いから」
思い出される一年間に及ぶ、苦行の数々。
いくら修行といっても、度が過ぎてた。
「·····で、何をするの?」
「いいねぇ、クナイ。その質問を待ってたんだ」
最初からアイシングキャットと戦っても、この二人でやっとって辺りだと思う。
だから、楽々倒せるまでに成長させる。
「『魔力操作』の基本は自身の魔力を知るべし。ということで、二人にはこれから『魔力操作縛り』というルールを追加します」
「何それ?」
「簡単に言うと、『魔力操作』しか使っちゃダメってこと」
つまり、レーデは火属性魔法が使えないってことだ。
「あっ、クナイも手裏剣とか苦無を使ったりしたらダメだぞ。しっかりと『魔力操作』のみで戦うこと」
「でも、私の『魔力操作』じゃあルーロにすら、ダメージを与えられなかったわよ?」
ルーロにすらって、すらってなんだよ。
俺ってそんな下に見られてんのか?
全く、悲しいぜ。
「それは『魔力操作』に使う魔力が少ないから。魔法を使わないんだから、魔力全てを『魔力操作』に使わないとダメージなんて入らないぞ?」
「ていうか、素手でダメージなんて入るのかしら?」
とことん疑ってくるな。
レーデは、その辺を直せばもっとモテるだろうに·····。
「今、失礼なことを考えたでしょ?」
「そ、そんなわけ──」
「顔に出やすいのよ」
·····そんなにかよ。
「まぁ、この話は置いといて、見本を見せるからよく見とけよ」
なんとか話の話題を逸らし、魔物の方に向けさせる。
「じゃあ、魔物を呼ぶとしようかっ!」
「──っ!? それはっ!」
おっと、クナイは知ってるのか。
このアイテムを。
「『魔呼びの鈴』」
これともう一つ『魔除けの鈴』がある。
効果はその名の通り、魔物を呼ぶことが出来るのと、魔物を避けることが出来る鈴である。
チリーンと綺麗な音色が響けば、途端に足音が大きくなっていく。
「ちょ、ちょっとこれ大丈夫なの!?」
「·····一回鳴らすだけで、十体は来る」
「じゅ、十体って·····この森で鳴らしたら一巻の終わりじゃない!?」
「まぁ、まぁ、そんな慌てなさんな」
俺を誰と心得る。
かの『黒き亡霊』を師に持つ男だぞ? こんなの朝飯前だ。
「ひぃ、お、オーガっ!?」
「こっちはポイズンスパイダー·····」
おぉ、ぞろぞろ出てきやがったな?
「じゃあ二人はここで待ってな」
「あ、あれは流石に無理よ」
「(こくこくこくこく)」
クナイも激しく同意しちゃって、ビビりすぎなんだから。
いや、心配してくれてるのか。
「大丈夫」
「で、でも──」
「二人には指一本触れさせやしない」
二人の顔が赤くなった。
俺としたことが、惚れさせちゃったかな?
いや·····怒ってるだけか。
「と、とりあえず、見てろよ」
こういう時は離れるのが一番だな。
逃げるように二人から間を開けた俺は、切り替えて目の前の大群に意識を向ける。
『魔力奪取』したんじゃあ、二人の見本にならないから、しっかりと『魔力操作』だけをやっていこう。
「<一段階・解放>」
解き放たれる魔力。
オーガ二体、ポイズンスパイダー三匹、アイシングキャット二匹、ゴブリン五体か。
──余裕だッ!
「さぁ、来いよッ!」
分かりやすく挑発すると、ゴブリンとオーガが反応する。
ゴブリンは知能が高く、俺の行動が〝煽り〟だと認識し怒っている。
オーガはプライドが高く、〝煽り〟に弱い。
この二種族が最初に突っ込んでくる事は分かっていた。
だから、嘲笑うかのようにアイシングキャットの方へ向かう。
「てめぇに魔法を打たせるわけねぇだろ?」
アイシングキャットも知能が高い、だが、ゴブリンと違って理性も備わっているため、冷静に魔法を発動させることに意識を向けていた。
恐らく、ゴブリンとオーガが攻めたことで、自分にはまずこないと考えたのだろう。
だから、それを読ませてもらった。
「ニャッ!?」
「まず、二匹」
パワーが乗った手刀が、軽々と首をはねる。
返り血が俺の顔にかかるが、気にしない。
「次、いってみよっかぁっ!」
次はポイズンスパイダーの処理だ。
といっても、これは簡単だ。
足を全部折って、行動不能にしちまえば毒の心配はない。
「はい、三匹処理完了」
下段蹴りで三匹とも処理をした。
断末魔の叫びなんて、知らん知らん。
「次に厄介なのがゴブリンだな」
ゴブリンは仲間を呼ぶことがある。
殺す優先順位は高いが、他に高い奴らがいたため、後になっていた奴らだ。
「おらッ!」
腹に腕を突っ込む。
気持ち悪い感触を感じながら、引き抜くと一体が絶命した。
「残り四体っ!」
一体が死んだことで、残りの四体が撤退体制をとっていた。
だが、背を向けたことが悪い。
そこを見逃す俺じゃないぜっ!
「おらよッ!」
俺の拳でゴブリンの頭が爆ぜる。
俺の右手と左手は既に血で真っ赤だ。
「·····最後はお前らだ」
オーガが一番最後なのは、コイツらのプライドが高いからだ。
つまり、逃げることをしない。
「さぁ、かかってきなっ!」
「GAAAAッ!」
大剣を担いだ、一体のオーガが前へ出た。
·····一騎打ちか。
「いいぜっ! 乗ってやるよっ!」
「GAッ!!」
振り下ろされる大剣の一撃は重い。
避けた先で、大地が爆ぜる。
「おらッ!」
「Gaッ!?」
流石の防御力だ。
一発殴った程度じゃあ倒れない。
なら、連打だ。
「<連撃>」
拳の連続攻撃。
オーガの腹部にへと止まることの無い怒涛の連撃は、オーガを絶命させるまでに至った。
「次はお前だ」
「GAAAAッ!」
すると最後の一体が、死んだオーガに近づく。
そして、使ってた大剣を担いだ。
「お前、かっけぇな」
「GAッ!」
ならば、俺も全力で応えよう。
「<全開出力解放>」
このオーガはできる。
「さぁ、最後の勝負だ」
「GAAAAAAAAッ!」
このオーガは自分が負けることを分かってる。
それでも逃げないのは己のプライドが為。
そして、死んでいった仲間の想いの為。
それも担いでこの場に立っている。
その思いに応えよう。
「オラッ! 行くぜっ!」
「GAッ!」
オーガの二連撃。
縦と横薙ぎを避け、大剣の上に乗る。
「背中に傷をつけさせないためにっ!?」
オーガは背中を狙った俺に、避けるでもなく、撃退するでもなく、腹を向けた。
カッコイイじゃねぇか。
「なら、せめて楽に逝かせてやる」
そして心臓を手刀で貫いた。
「楽しかったぜ」
「··········なんで、ドラマが出来てるの?」
「·····分からない」
困惑気味の二人の元へ帰って行った。
「どうだ? 案外いけるだろ?」
「それは分かったから、水浴びて来なさいよ。返り血でびちゃびちゃよ?」
「·····それも、そうだな」
水浴びをする為、二人の元を離れ、俺はさまよっていると──
「··········うそーん」
綺麗な湖の中、先客が居たようで、運がいいのか悪いのか、その姿が見えた。
金色の長髪をなびかせた、ルックスの素晴らしい女の子。
·····見覚えがある。
昔、凱旋パーティの中、『龍殺し』と共に参加していた美少女。
この国の王女様だった。
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