ルーロの大誤算
「A級としてのスタートおめでとうございますぅ」
ミーヤが嬉しそうに言ってくる。
「ありがとうな」
「さしあたって、冒険者の説明に入らせて頂いますぅ」
·····そう言えば、知っているようで知らなかったわ。
「よろしく頼む」
「はいぃ、ではまず、冒険者のランクシステムについて説明しますぅ。ランクが付けられているのはご存知だと思いますが、それはクエストを受ける際に必要なものだと思ってくださいぃ」
つまりは低ランク冒険者が、高ランククエストを受けられないみたいなもんか。
「次に、クエスト失敗のお話ですぅ。クエストを失敗、又はリタイアされた場合、お金が発生しますぅ。違約金という事で、そのクエスト毎に変わってきますので、ご注意くださいぃ」
当たり前か。
クエストを中途半端に投げ出すなんて三流がやることだ。
「次は、クエストの説明ですぅ。クエストにもランクがありまして、冒険者ランクになぞって受けていただければと思いますぅ。加えて、通常クエストの他に緊急クエストと言うのが存在しますぅ。緊急クエストの場合、その危険度に沿って相応のランクをお持ちの冒険者は強制参加なので前もってご了承くださいぃ」
街の安全を守るためだ。
そのぐらいは構いやしない。
「緊急クエストにも報酬は存在するんだろう?」
「はいぃ、魔物の素材に加え、最功労者には多大な報酬を積ませていただきますぅ。なので、魔物の一部は絶対に狩りとって下さいぃ。通常クエストでもそうですが、それがクエスト達成の証ですぅ。採取してこなければ、魔物を倒してないとみなされ、失敗となりますのでご注意くださいぃ」
なら、忘れないように採取は怠らないようにしよう。
「最後に冒険者カードですぅ。既に生成済みですのでお渡ししますぅ」
手渡されたカードは金色に輝いていた。
長年夢見たゴールドカードだっ!
超嬉しいっ!
「紛失された場合、再発行にはお金が──」
「ぜっ、たい、なくしませんっ!」
「りょ、了解しましたぁ。では、他にご質問があった場合はその時々にご質問下さいぃ」
·····よしっ!
早速、初クエストを受注しよう。
「じゃ、早速だが、A級のクエストはあるか?」
「はいぃ。初クエストには最適なのがありますぅ」
そして、ミーヤが取り出したのは一枚の紙。
「これがそうですぅ」
「ん? 『アイシングキャットの討伐』?」
「はいぃ、非常に珍しい魔法──『氷属性魔法』を扱う、厄介な魔物ですぅ。これは流石のルーロ様も簡単にはいかないだろうってエルサ様がぁ」
·····一つ、大きな誤算があった。
俺、大抵の魔物、簡単に討伐出来るわ。
「·····マジか」
「どうかされましたかぁ?」
「いや、なんでもない。それにする。受注してくれ」
「了解しましたぁ」
そして大きな判子がクエストの紙に押された。
これが受注の証なのだろう。
俺は紙を持って、二人の所へ向かった。
「遅かったわね。で、結局、何を選んだのかしら?」
「これ」
「·····『アイシングキャット』?」
クナイが読み上げた魔物名にレーデが驚く。
「は? あ、アイシングキャットって、危険度が凄い高い魔物じゃなかった!?」
「·····多分、私も倒したことない」
·····そうなんです。
アイシングキャットって凄いめんどくさい魔物なんです。
でも──
「一秒もかからず討伐出来るすよ」
「「へ?」」
「いや、速攻で討伐出来るんすよ」
「ちょ、ちょっと待って!? アイシングキャットよ? 氷属性を使う珍しい猫っ!」
「そう。そのアイシングキャットが速攻で倒せる雑魚魔物だってこと」
俺は『魔力操作の極致』に至るため、『死の谷』で修行した。
アイシングキャットなんて旅立つ時に、師匠と話をしながらでも勝ってたぐらいだ。
ちょーう余裕なのである。
「·····どうしよう。俺、強くなり過ぎた」
「今、無性にアンタを殴りたくなったわ」
「·····同感」
·····クッ、仕方ない。
ここは二人を育てることにしよう。
「お前らって『魔力操作』が両方下手だから、アイシングキャットを相手に修行するか」
「「!?」」
だって、それしかする事ないし。
「二人ともB級だろ? A級に上がって来ないと、後々面倒だろ?」
「·····そうね」
「ん」
パーティに一人でもそのランクに匹敵する高ランク冒険者が居れば、そのクエストは受注可能だ。
例えば、今みたいに俺が受けた『アイシングキャットの討伐』のクエストを、二人と一緒に行ける。
だが、A級クエストの中でも上位と下位があり、上位になると二人は同行出来ない。
「ということで、二人の強化をするってことで決定でいいか?」
「·····そうね。悔しいけど、負けちゃったし」
「·····ん」
「レーデは『魔力操作』を覚えると、格闘術の時に攻撃力が上がって更に強くなれると思うぞ? クナイも飲み込みが早いから『魔力制御』が出来た今なら『魔力操作』を上手く出来ると思う」
レーデに関しては火属性の適性者なので、俺よりも強くなれる可能性がある。
クナイは魔属性もそうだが、忍者としての技術も合わせると格段に強くなる。
二人とも俺を越せる才能があるんだ。
羨ましいが、そこは認めなければならない。
認めた上で、更に高みへ行くしかないのだ。
「じゃあ、初クエストに行くとしようかっ!」
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