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歩む者《ウォーカー》


 俺は冒険者ギルドの合格者発表を今かと待っていた。


「やっべ、緊張してきたぁ」


 大丈夫か? イケメンじゃないと冒険者合格出来ないとかないか? だとしたら俺は速攻でアウトだけど。


「·····落ち着いて」

「クナイ、それが落ち着いていられるか! イケメンじゃねぇと合格出来ねぇかもしれねぇんだよ!」

「··········何の話?」


 困惑気味に問いかけてくるクナイ。


 コテンと小首を傾げる姿はやっぱ可愛い。

 

「イケメンは知らないけど、ルーロはかっこ、いい、よ?」


 歯切れの悪いカッコイイ。


 俺がクナイの方を向くと、速攻で顔を背けられた。


 ··········無理して言ってくれたのか。


 すまねぇな、イケメンじゃなくて。


「そういうことじゃないから!」

「エルサ!」


 俺の頭をスパンと軽く叩いてくる女性。

 細剣を腰に携えた姿は美しい。


「あのね、貴方の考えることがよく分かるけどそういうことじゃないの?」

「どういうことですか?」

「はぁ·····」


 呆れたように見てくるエルサ。


 もしかして──


「俺ってイケメンですかね!?」

「──それはない」


 ほら、どうせ、どうせ、そうですよ。


「いじけないの!」

「もういいっすよ。師匠からも言われてるし、俺は冴えない男っすよ」


 はぁ、なんだろう。憂鬱になってきた。


 すると、クイクイっと裾を引っ張られる。


「レーデ? どうしてここに?」

「アンタが言ったんでしょう!? 私を貰うって!」


 ·····そういえば言ったわ。


「俺のパーティでいいのか? っても、冒険者になれると決まった訳じゃないけど」

「第三試験一位が何を言っているのよ。それに、私は、その·····」


 顔を赤くするレーデ。

 恥ずかしいのか?


「私を有名なパーティが拾ってくれるまでの仮のパーティだから! 勘違いしないでよね!?」


 ·····俺ってば、悲しいよ。


「俺の事都合のいい男だと思ってんでしょ!?」

「何馬鹿なこと言ってんのよ」


 クナイには嫌われるし、エルサにはイケメンって言われないし、レーデには都合のいい男扱いされるし、散々だ。


「ほら、張り出されたわよッ!」


 レーデに引っ張られ、俺は冒険者合格者を見た。


「俺の名前は··········は?」


 一位・クナイ

 二位・レーデ


 あれれぇ、おかしいぞぉ!?


「マジで、さ。なんなの? 俺の一年間ってなんだったんだよ!」


 おかしいじゃん!?


 俺、一位だよ! 実技トップですよ!?


「ルーロくん、ルーロくんは居ますか?」

「··········ここですけど?」


 怒られるんだ。


 イケメンもといギルをぶっ飛ばしたから、俺は不合格だったんだ。


 やっぱ、イケメンだけが残るんだよ。


「着いてきて下さい。ギルド長がお呼びです」

「嘘だろ!? あの少年がギルド長に!?」

「やばくね!?」


 確定じゃんか。


 行きたくねぇけど、ギルド長からの呼び出しだしな。

 行かなかったら、来年試験を受けられないから行くか。


「貴方がルーロくんですね?」

「そうですよ。冴えないルーロ、イケメンじゃないルーロです。そんなルーロになにか?」

「こ、こっちです」


 ギルド嬢も引き気味に俺に接してくる。


 ギルドの二階に上がっていくと、一室の前で扉を二度三度ノックする。


「ギルド長、連れてきました」

「入れ」


 扉の先には筋肉隆々の厳ついおっさんが立っていた。


「ありがとう。君は下がっていいよ」

「失礼しました」


 そうして、この場に俺とおっさんだけが残った。


「で、話というのは?」

「まぁ、座れ」


 促され、俺は長椅子に腰をかけた。


「ルーロ、君は実技で一位だったね」

「そうっすね」

「決勝でギルを打ち破ったと」

「そういうことになりますね」


 おっさんの目付きが鋭くなる。


「しかも、属性適性がない」

「そうですけど、なにか?」

「··········フッ、クハハハッ!」


 てっきり怒られると思っていた俺は、驚く。


「何がおかしいんすか?」

「やっぱ、アイツの弟子か。俺の圧にも物怖じしないその姿勢、おかしいに決まっているだろう?」


 ん、アイツ?


「俺は『黄の盾戦士(イエロータンク)』と呼ばれててな、名をクリクソンという」

「え? じゃあ『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』!?」

「そうだ。俺はあの功績が認められて、ギルド長になってたってわけだ」


 じゃあ、この人が『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』でも有名な。


「『センスレス』」

「おいおい、俺が二つ名を決めた訳じゃないのに、それはおかしいだろ?」

「いえ、周りがそう言っていただけで俺はそうは思いませんから」

「ハッ、口が達者だな」

「よく言われます」


 『センスレス』。言わば、ギルみたいなもんだ。

 他のメンバーがカッコイイ名前の中、この人だけ微妙な二つ名なのだ。


 だからセンスレス。


「だいたいよぉ、なんで俺だけ『黄の盾戦士』なんだよ。俺にも『黒き亡霊(ブラックファントム)』みたいな二つ名が欲しかったよ」

「そうっすね」


 こうして伝説のパーティと話せるというのはいいものだ。


「さて、話を戻そうか」

「·····はい」

「お前が倒したのは次世代エース。既にB級が確約されてた奴なんだよ」

「·····へぇ」


 知らなかったな。


「もちろん、これを知っているのは上層部のみ。下手に公開したら五月蝿い奴らがいるだろ?」

「そうっすね」


 不正だとか、インチキとか嫉妬の嵐だろう。


 まぁ、俺が倒しちまったけどな。


「でだ、あれでも一応勇者候補や次世代エースとして期待されてたんだよ、それを倒しちまったってことは、不都合でな」


 ふむ、つまりは──


「俺が正規スタート出来ないっていうことっすね?」

「そうだ。お前のランクはB級以上ってことになる。それは駆け出し冒険者として異例なんだよ。かの有名な勇者もB級からのスタートだったしな」


 ·····そりゃあ、そうか。


 あんだけ大人数の中で期待されてた奴を倒したんだ。


 その事実は覆されないし、かといって低ランクスタートだと適材適所に配置出来なくなる。


 冒険者ランクによって依頼難易度は大きく異なる。低ランクだと高ランクの依頼が受けられないのだ。


 つまり、俺が高ランク冒険者になるまで待たなきゃならない。

 だが、魔物の活動がある今、そんな事は時間の無駄だということだ。


 かといって、高ランクスタートだと嫉妬の嵐。


「お前にその中で活動出来るか、その意志を聞きたいんだ。世間から何を言われようとも、お前は最強の冒険者を目指すか?」


 そんなの言われるまでもねぇ。


「当たり前っすよ。俺は俺の道を歩くだけだ。それに──」


 俺はここに至るまでに多くの人と関わりを持って、そして──


「それに、俺には信頼出来るパーティがありますからね」


 クナイとレーデと俺は最強の冒険者を目指す。


「だから、大丈夫っす。俺を見てくれる人がいるから」

「·····そうか。ならば、お前はA級スタートだ。最初のうちは何かと言われるかもしれないが、その信念を折らずに、活躍してくれることを祈る」

「うすっ!」


 話が終わり、ギルド長室を出ると、クナイとレーデが待っていた。


「待っててくれたのか?」

「ん」

「当たり前じゃない。どうせ、冒険者になれたんでしょう?」


 あれ? まだ言ってなかったはずだが。


「アンタは顔に出やすいのよ、顔がニヤけてるわよ?」


 やっぱ顔に出やすいのか、俺。


 でも、そりゃあ、嬉しいに決まってる。

 一位こそなれなかったが、念願の、しかもA級スタートだ。


 いいスタートが切れたもんだ。


「そう言えば、二人のランクは?」

「ふん、B級よ!」

「·····同じく」


 クリクソンがやってくれたのだろう。

 

 ありがてぇな。


「じゃあ行くか」

「·····そう言えば、パーティ名はなんなの?」

「気になる」


 フッ、遂にこの名前を言う日が来たか。

 昔からずっと考えていた名前だ。


「俺たちのパーティ名は、追放されて、それでも新たに道を歩み続ける者──『歩む者(ウォーカー)』だ!」

「·····アンタもギルに負けず劣らずのネーミングセンスね」

「·····ん」


 ちょっと待てっ! 


「『次世代龍殺しネクストドラゴンキラー』よりかはマシだろ」

「まぁ、別に名前が何だって、ついて行くわよ」

「私も、ずっとルーロと一緒」

「ぐぬぬッ!」

「うー!!」


 二人が牽制し合ってる?

 もう仲が良くなったのだろうか?


「負けないわよ」

「·····私も」

「おい、初クエスト受注しちまうぞ?」


 ──ったく、でも、これからだ。


 俺らは『歩む者(ウォーカー)』。

 最強の冒険者になるその日まで、俺らの足は止まらない。

第一章が終わりました。


見切り発車で書いていた為、改稿作業が入るので明日は投稿出来ませんが、明後日を楽しみにして頂けたらと思います。


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[一言] 『歩む者』諸君・・・君たちが最強の冒険者になるその日まで、作者様の筆が止まらないことを祈っているよ・・・。
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