表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/155

VSレーデ


「いやぁ、緊張するわ。さすがに」


 訓練場に設備された休憩室で俺は次の試合を待っていた。


 壁には対戦表が貼られており、次の対戦者が書かれている。


「レーデ·····」


 次の対戦者はレーデだ。

 火属性の適性者であるレーデは昔から優秀だ。一筋縄ではいかないだろう。


 だが──


「勝たないといけない」


 レーデに勝てば、次の決勝でギルと当たる。

 負けられないし、負けない。


 師匠も言っていた。


「諦めたらそこで試合終了だ」


 って。


 だから、どんな相手だろうと俺はベストを尽くすだけだ。


「次の試合を始めます」


 さぁ、行くか。

 ツンデレを倒しにッ!




「久しぶりだな」

「··········えぇ、そうね」


 ·····あの、さ。

 俺は女の子に嫌われ過ぎじゃね?


 殺気が漏れているんすけど。しかも、殺気だけだったらクナイに勝っているかもしれない。


 すんません師匠ッ!

 ツンデレってなんすかっ!


「ツンツンデレデレって事だ」


 頭の中の師匠が答えてくれたが、本当に意味が分からない。

 ツンツンしかないんすけどぉ? デレが一つもないんすわっ!


「両者、構え」


 案の定、無慈悲に試合開始の合図は告げられた。


「では、試合開始ッ!」


 レーデの先制。


「貴方の力は分からないけど、量で勝負するわ──『無数の火球』」


 際限なく出現する火球。

 それがバラバラに飛んでくる。


「<魔力・絶>」


 一斉に魔力を奪うが、量が異常に多く、全てを奪うことが出来ない。

 クナイ戦時の俺を見て、量で押し切れば勝てると判断したんだろう。


 これは避けないとまずい。


 ──ファースト解放ッ!


「それも知ってるわ」

「ッ!?」


 余裕そうにレーデは淡々と告げていく。


「驚異的な身体能力。魔法が使えないルーロに、これ以上の効果が存在する技なんてない。なら、近づけさせなければいいだけだわ」


 レーデは『無数の火球』を数球、自分の周りに配置させる。


「そんなんで、俺の足を止めれると思うなよッ!」


 俺は関係なく、レーデの真後ろに回り込む。

 

 貰った──ッ!?


「──真後ろに来るのは予想出来てたわ」

「ッ! な、にっ!」


 火球が地面に着弾し、地面が爆破した。

 土煙で視界を防がれる。


「セイっ!」

「カハッ!」


 矢継ぎ早に回し蹴りが俺の腹部を襲った。


「魔法使いが魔法だけ鍛えているわけがないでしょッ!」


 腹部を蹴られ、完璧にタイミングが遅れた俺はレーデの怒涛の拳舞に為す術がない。


「ラストッ!」


 気合いの籠った正拳突きが俺の顔面をクリーンヒットし、俺は地面に突っ伏した。


「·····勝者──」

「まだ終わってねぇ」


 ったく、どこ見てんだか。


「なんで立てるの!?」

「あのなぁ、確かに武術は凄かったが、魔力操作がお粗末過ぎるんだよ」


 俺はファーストを解放している。

 つまり、防御力も通常に比べて上がっているのだ。そこに魔力操作がお粗末なレーデの攻撃が加わっても、ほとんどダメージを受けない。


「本物の魔力操作を見せてやるッ!」

「む、無数の火──」

「遅いッ!」


 俺は額に向けて、デコピンをした。

 ただのデコピンと侮るなかれ。普段ならともなく、今の俺の状態で放たれたデコピンは超痛い。


「これで終わりだな」


 吹き飛ばされ、派手に転び、ボロボロになっている。


「終わらせない、まだいける」


 それでも尚、立った。


「なんでそこまで··········お前なら落ちることも無いだろ?」

「──よ」

「え?」

「嫌なのよッ!」


 レーデの言葉は俺だけではなく、観客中に響き渡った。


「追放して、それでも会えると思ってたのに、勝手にどっか行って。一緒に強くなろうって思ってたのに、勝手に強くなって帰ってきて。女の子と一緒に楽しそうにッ!」


 一緒に強くなる?

 

 確か前に──


「私、出来ないぃぃ」

「あと少しだから、頑張れよ」


 小さい頃、レーデは魔力操作が出来なかった。

 俺は最強の冒険者に憧れていたから、凄く練習して出来ていたのだが、レーデだけはからっきしダメだった。


「どうやってできるようになるの?」

「うーん、努力かな?」

「私も頑張ってるのにぃ」


 あの頃はレーデも素直だった。

 強さに対してひたむきで、だから俺は言ったのだ。


「一緒に強くなればいいだろ」

「え?」

「出来ないなら俺が教えるし、逆に俺が出来ないことを教えてくれよ。そしたら、強くなれる」

「ほんと?」

「当たり前だろ」


 遂には泣き始めたレーデをそうやってなだめたのだ。


 それから、メキメキと上達し、遂に俺よりも上手くなった。

 あの頃からか。今のように棘のある言葉遣いになった。


「──あんな昔のこと覚えていたのか」

「当たり前じゃない。どれも大切な思い出なのよッ!」


 ·····レーデ。


「それなのに勝手にいなくなって、一緒に強くなるって言ったのに。私が教えようって思ってたのに」

「·····そうだったのか」


 誤解してたかもしれない。

 確かにレーデは言葉に刺があるが、どれも俺を思って言ってくれた言葉だった。


「だから、許さない。許さないのッ! 私の方が強いって証明して、また、次こそはッ!」


 レーデの魔力が膨れ上がる。


「今度は一緒に、一緒にィッ!!!!」


 レーデの赤色の魔力が綺麗な真紅となって、膨張する。

 

「これで決めるんだからッ!」

「レーデさん。これ以上はッ!」


 セイノが止めようと近づくが、その圧倒的な魔力に近づけない。


 さすがの俺も、ここまで膨れ上がった魔力は奪えようとも奪えない。


 だから、俺は真っ向から受け止める。


「渾身の魔法を喰らいなさいッ! 『サラマンダーの獄炎』ッ!!!」


 この世界に魔力が存在するように、また精霊が存在する。


 純度の高い魔力を好み、自由で姿を見せない謎多き生物。

 契約を結べば圧倒的な力が宿り、契約を背けば命を奪われる。


 精霊は属性ごとに存在し、五大精霊と呼ばれる最高位の存在がある。


 それがレーデの肩に──『サラマンダー』と呼ばれる小さなトカゲいや、ドラゴンが居た。


 この一撃は高位精霊の一撃。人の身では到底耐えられない最高火力の獄炎。

 ならば、俺も応えよう──


「<全開出力解放(フルバースト)>ッ!!!」


 ファーストで引き出せる最大出力。内から溢れ出る魔力を確認し──

 

 ただただ、拳を突き出した。


 これで勝てるとは思えない。獄炎の魔力を出来るだけ奪い、威力を充分に殺す。


 衝突する獄炎と拳風。

 引き起こる拮抗、とてつもない暴風が巻き起こる。そして──


「あっ·····」


 それは誰の声か。


 拮抗が崩れた。

 俺の拳風が獄炎を巻き込み、そして打ち消した。


 倒れるレーデ。消えた、サラマンダー。

 残ったのは静寂だった。

 

「おい、審判ッ!」

「あっ、しょ、勝者、ルーロッ!」


 皆が呆気に取られていく中、レーデを回収しようとした職員たちを押しのけ、俺がレーデに近づく。


「離れてください。過度に魔力を使用した事により、命が危険な状態なんですッ!」

「そんな事は分かってる」


 俺はレーデを抱えあげる。

 かつて、レーデが絵本を指さして言っていた。憧れのお姫様抱っこと言うやつだ。


 お姫様抱っこをしたのが俺で悪いが、緊急事態だ。


「いいわ、彼に任せなさい」

「エルサさん!?」

「エルサ、ありがとう」


 職員が心配そうに見つめている中、俺は医務室に向かった。



「やべぇな」


 魔力量が残りわずかだ。


「<魔力・与>」


 すぐさま魔力を与えた。

 やっぱ、中々の魔力量だな。ごっそり持ってかれた。


「う、うぅ〜ん」

「·····気づいたか」


 半目でレーデが目を覚ます。


「る、るーろ?」

「そうだ」

「えへへぇ、ルーロだぁ」

「ちょ、はっ、え?」


 ガバッと抱きつかれる。 

 ここ最近、抱きつかれることが多いんだが、それは。


 ·····と、思いながら、しかし、師匠の教えを思い出し、すぐさま離れようとする。


「クソ、無駄に力が強いんだが」

「ルーロだぁ、ルーロっ!」


 身体強化してるのに、この力っておかしいだろ!?


「えへ、ルーロの匂い、ルーロ、ルーロ·····るー、ろ? は、へ?」


 ようやく意識がはっきりしたか。


「なんで、ルーロの顔が近くに? えっ? キャァァアアッ!」


 ドンと強い力で突き飛ばされる。


「キモイ、変態、最低ッ! 気を失っている時に抱きつくなんて有り得ないッ!」


 ·····理不尽ここに極まれり。


 勝手に抱きつかれて、頑張って俺は離れようとしているのに、すごい力で抱きついてきて。


 目を覚ましたら、突き飛ばされ、罵声の雨。


「レーデが勝手にやったんだよッ!」

「そ、そんな訳ないじゃない。私がルーロなんかに抱きつくなんて·····魔物に抱きついた方がマシよ!」


 師匠、貴方の教えは本当でした。


 やっぱ、触れられるのは嫌なのか。

 しかも、抱きついてきたのそっちなのに。


「まぁ、それだけ元気だったらいいや」


 なんかもう、この場にいたらドンドン悲しくなってくる。

 はぁ·····俺が何をしたってんだよ。


「ちょ、ちょっとっ!」

「なに?」

「その·····あの、あ、あ·····」


 なんだコイツ。

 感謝でもしようとしているのか? 珍しい。全然人に感謝しないレーデが〝ありがとう〟を口にする日が来ようなんて──


「あ、アンタに回復されても嬉しくないんだからッ! 感謝なんてしてあげないんだからね!」


 ──前言撤回。


 やっぱ、レーデだわ。


「分かってるよ、じゃあな」


 ドアを開けて、医務室から出ていくと、声が聞こえてきた。


「なんで素直に感謝出来ないの私ッ! あぁ、もう馬鹿·····」


 なんて言ってるか分からないが、大方──


「マジ最悪だわ。感謝なんてする訳ないじゃない! バァーカ」


 だろう。


 考えれば考えるほど悲しくなってくるので、俺は遂に考えることを辞めた。


 やっぱ、レーデは分からない。

下の✩✩✩✩✩を押して評価を。

ブクマ登録をして下さるとモチベーションが上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 理不尽に追放しといて何言ってんのこのあほ女は。
2024/01/19 11:15 うんこちんちん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ