VSクナイ
「では三試合目を始めます」
遂に俺の順番が来たか·····
相手はクナイ。
〝忍者〟という未知の相手だ。
だが、恐れることは無い。
仲間だろうと、なんだろうと倒すしかないのだから。
「··········おい、あれ」
「やべぇ、可愛くね!?」
野次馬共がクナイの素顔を見て驚いている。
今までがアレだっただけで、包帯を外した姿は確かに可愛い。
クナイもいい気分ではないだろうが、決して悪い気分でもあるまい。
「(むすぅ)」
···············あのぉ、殺気が。
普通、野次馬に殺気向けるよね!? なんで俺に殺気をぶつけてるの? あの子っ!
「ず、随分と殺気をぶつけてくるな」
「·····別に」
あれれぇ、おかしいぞぉ?
こんな時に限って何故、機嫌が悪い!?
大丈夫かな? 俺·····ボコられないかな。
不安になってきた、マジやべぇ。
「両者、構え」
セイノが無慈悲に告げる。
あぁ、もういいさ! やってやるよッ!
「では、試合開始」
歓声が沸き起こる。
瞬間的に、意識がそちらに向けば──
「そこっ!」
苦無と呼んでいた短剣が俺の頬を掠めた。
「次は当てる。命中術極意、咲け──<蓮華>」
六本の苦無が俺目掛けて飛来する。
軌道からして頭、両腕、両足、心臓か。
·····え? 待ってこれッ! 俺を殺す気ですよ!?
セイノ、おま、コレ、見過ごしちゃダメだろ!?
「··········」
セイノ、貴様、何、見てないふりしてんだコラァッ!
チラッと見たけどコイツ明らかに見過ごしてるわ。
クソッ! 仕方ねぇ。
「<魔力・絶>」
そして苦無はガシャンと地に落ちた。
あっぶねぇ、間一髪つぅ!
森羅万象、全てのものに魔力は存在する。
それは苦無を投げる時さえも、人は少なからず魔力を使い、それが力となって飛来する。
当然、その力である魔力を奪っちまえば威力は軽減され、そして地に落ちる訳だ。
「次はこっちからだ!」
「──ッ!?」
ファースト、解放ッ!
「貰ったッ!」
一瞬で背後に回る。
しかし、うなじに手刀を繰り出そうとした瞬間、クナイの姿が瞬く間に消えた。
「移動術──<縮地>」
「──ッ! こりゃあ確かに、クナイが免除されるだけあるわっ!」
所詮、ギルの時に見せた力は一端に過ぎない。
そんな事は分かりきってたはずなのに、何処かで慢心していた俺がいたってことか。
これは、ふざけている場合じゃないな。
そりゃあ、エルサもファーストで倒せないって言ってたわけだ。
しかも、俺の手持ちも多いっていう訳じゃない。
ファイナルを使っちまえば、一瞬であるが、それはダメだ。
この力を過信してはダメだと師匠に口酸っぱく言われているからな。
あー、考えれば考えるほどどうしようか迷う。
つか、ここまでの技術があるのに──
「なんで、冒険者になろうって思ったんだ?」
ギルの時の殺気といい、この技術力といい。
正直、冒険者以外の道があり過ぎる。
それこそ、忍者ってのになれたかもしれない。
なのに、何故──
「··········自由の為」
「自由·····?」
「私は家に抗う。そして自由を掴む」
どうやら、家柄が関わっているようだ。
まぁ、到底、俺には知りえない事なのだろう。
しかし、分かっているのはクナイが全身全霊をかけて俺を倒そうとしていること。
ならば、俺も『魔力操作の極致』そのものを使って、それに応えなければならない。
「<極致・一門>」
解放状態が〝極致〟だとするならば、それに至るまでに四つの門を潜り、乗り越えなければならない。
その中の一門、つまりは『始まりの世界』を見せよう。
「<破滅されし世界>」
<破滅されし世界>。
魔力が世界そのものを侵し、侵食された世界。
一つの終末である。
濃密な魔力が重力の如くのしかかり、動きを抑制させる四つの門の第一の世界。
その一部分を、この場に出現させてみせた。
観客たちは周囲に設置されている観客席から観戦している為、俺とクナイ、そしてセイノだけ、この世界を体験しているという事になる。
ちなみに、セイノは巻き込まれただけだ。
頑張れば、セイノを体験させずに済ませることは出来るが、先程見逃した罰である。
「さぁ、この世界でクナイが何分持つか。見物だなァッ!」
「な、なめないでッ!」
·····立った、クナイが立った。
その細い足で、この重力下の中、立ち上がった。
俺がこの世界で立つのに一週間はかかったってのに、コイツ、一瞬で·····
これ以上体験させると、ファーストを解放させる勢いなので、早めに終わらせるとしよう。
「この状況下でまともに動けるわけが無い。一瞬で終わらしてやる」
「十六年の成果を、今こそ──『火遁』ッ!!!」
動けないから、近づけさせまいと炎を周りにっ!?
魔法じゃないが、魔力を使用している。
忍者特有の技ってわけか?
だが、忘れているな。
俺が魔力を奪うことが出来ることを。
「<魔力・絶>」
右手で空を切る。
完璧に奪い去った訳じゃないが、炎の勢いが弱まった。
これを見逃す訳にはいかないだろっ!
「──終わりだ」
手刀を繰り出し、クナイを気絶させる。
試合終了だ。
同時に<破滅されし世界>を閉じて、セイノに自由を取り戻させる。
恨めしそうに睨んでくるが、そんなもん知らん。
「しょ、勝者、ルーロッ!」
拍手は起こらなかった。
観客からしてみたら突然動けなくなったクナイを俺がトドメを刺したように見えたからな。
何があったのか分からないのだろう。
まぁ、それでも構わない。
この試合で俺が一番見せつけたかったのは、たった一人である。
「··········最後はお前だ」
小さく呟いたから本人は気づかなかっただろう。
だが、誰よりも自覚しているはずだ。
そうだよなぁ──ギル?
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