後悔が生まれるのはいつだって事が済んだ後
個室で一人。
俺は──
「やっちまったぁぁぁあああッ!」
後悔していた。
「ハグしちまったよぉ!」
思い出されるのは昨日の出来事。
『俺が、一生守ってやる』
「──じゃ、ねぇよっ!」
恥ずいって、なんで後悔するものって、だいたい後になって気づくんだよっ!
それを言うんだったら、覗きを·····ゲフンゲフン。
いや、もう二度としないって決めたんだ。
「どっちにしろ、マジで終わったぁ」
師匠が口を酸っぱくして言っていた言葉を思い出す。
あれはそう、まだ力を得る前の事──
「小僧はざまぁした後はどうするつもりだ?」
「俺は最強の冒険者になる為に頑張りますね。その為にパーティも作らないとだし·····やる事は沢山ありますっ!」
「·····そうか、なら伝えておこう。もし、女の子とパーティになった場合、触れるような行為·····そうだなぁ、ハグや頭ポンポンなどをしたら絶対嫌われると思え」
「え? どうしてですか?」
「·····小僧みたいな奴(大してイケメンでも無い奴)が間違ってでも触ってみろ。俺みたいになるぞ」
師匠は遠い目をしながら言った。
「エルサに触ったとき、俺は細切れにされそうになった。後、アイツも·····」
これが、あの龍殺しを成した『龍殺し』の一人、『黒き亡霊』なのかと疑うほどに身震いが凄い。
「と、とにかく、イケメン以外が安易に触ると嫌われるし、殺される。これは肝に銘じとけッ!」
「う、うすっ!」
この師匠の言う通りなら──
「よりによって師匠がやってはいけないと例に上げた二つの行為をダブルでやっちまったぁぁああッ!! 終わったよね? これ俺の人生が終了の鐘を告げてるよッ!」
クナイに嫌われたのだろうか。
そう考えると、あの時のドキドキした感情はトキメキじゃなくて死への恐怖だった!?
もしくは、クナイの笑顔は愛想笑いだったのだろうか。
俺の渾身のセリフを聞いて、場を察してわざと笑ってくれたのだろうか!?
これ以上は俺のメンタルが警告を鳴らしている。
もうやめてっ! 俺のメンタルはもうゼロよっ!
·····切り替えだ。切り替えをすれば、俺は出来る子だッ!
「失礼しまぁす」
そんな時、ギルド嬢らしき女性が入ってきた。
「これから先、ルーロ様をサポートするかもしれない受付。名前はミーヤと言いますぅ」
茶髪をくるくるとパーマをかけた女性だ。
愛らしい人ではあるが、この人仕事できるのだろうか?
「あっ、今疑わしい目で見ていますねぇ? この人仕事できるの? 見たいな目をっ!」
ミーヤは俺に向かって謎のサムズアップ。
なんだ? 俺の考えていることは丸わかりってか? うるせぇ。
「俺はどうやら顔に出るらしいから、別に誇らしげに親指立てなくていいよ」
これ以上、俺を刺激するな。
ただでさえ、ガラスハートの豆腐メンタルなのに。
「むぅ、分かりました。では、試験を始めます!」
よし、こいっ!
切り替えた俺なら大丈夫なはずだッ!
「では質問を始めますぅ。その一、パーティメンバーと二人きり、魔物に囲まれています。ではどうします?」
パーティメンバーと二人きり·····クナイと二人··········
「ハ──じゃないッ!」
「ハ?」
「違う。……そう、あれ、ハラハラドキドキしますよね!?」
「え? あっ、はい」
間違ってハグって言いそうになった。
危ない。切り替えだって、俺。俺なら出来るってやれば出来る子だって!
「では質問を変えます。仲間がミスをした時、どうしますか?」
「頭──なんでもありませんよ?」
「頭って·····」
「あれですって、あの·····あ、頭大丈夫か? って慰めるんですよ!」
「それ、慰めてないですよね」
頭ポンポンじゃねぇだろっ!
それはイケメンに許された特権だっつうに!
「で、では、質問を続けますぅ──」
はぁぁぁぁああ、マジで危なかった。
あの後、なんとか切り替えて試験を終えることが出来た。
「大丈夫?」
「あぁ、なんとかな」
クナイは何事も無かったかのように近づいてくる。
あの事は気にしてないみたいだ。
はぁ、良かった。
気にしてない、そう、気にしてない··········なんかそれもそれで傷つくな。
俺ってば、そんな影響力無いのかな。
あぁ·····なんかもう··········チーズ蒸しパンになりたい。
「第三試験を始めます! 集まってください」
セイノが試験者たちを呼びかける
「いこ」
「·····あぁ」
クナイが気にしてないならいいか。
チーズ蒸しパンを頭の端に置いといて、俺はセイノの元へ駆け寄った。
「第三試験は戦闘技術を見させていただきます」
第一試験が森を生き抜くための『知識』。
第二試験が冒険者になる為の『心構え』。
第三試験が戦い生き抜く為の『戦闘』。
どれも、冒険者に必要な事って訳か。
「ではルールを説明します。形式はトーナメントで行います。負けても戦闘スキルはしっかりと見させて頂きますので、冒険者になれないって事はありません。しっかりと自身のベストを尽くしてください」
ようするに勝ち負けよりも試合の中身を見ると言うことか。
まぁ、一位を目指すのなら優勝は当たり前だな。
「続いて武器や防具の使用です。原則、禁じている武器も防具もありませんが、相手を過度に傷つける。もしくは殺害までに至りそうな場合、全力で僕たちが止めますので、その時の罰は騎士団にお任せします」
見ると、観客席で冒険者、更に騎士団の人たちがいる。
おっ、エルサもいるじゃん。
全力で手を振ると苦笑い気味に返してくれた。
「ゴホンっ!」
「あっ、すんません」
さすがに浮かれすぎた。
隣にいるクナイもジト目で見てくる。
あれ? 殺気がもれてません?
··········いや、気のせいだ。気にしないったら気にしない。
「説明の続きに入ります。試合を行うのはここ試験会場でもある訓練場を使用します。試合を行っている最中は武器の手入れもよし、ライバルの実力を見るのもよしです。有意義な時間をお過ごしください」
セイノの言葉が終わると同時にギルド嬢さんたちが巨大な紙を開いた。
「これが対戦表です。対戦相手を確認してください」
俺は『魔力操作』で強化した目で対戦表を覗くと対戦者の名前が見えた。
「第一試合は··········クナイっ!?」
「フフフッ、驚いたでしょう? 貴方たちが第一試験時に共にした人が第一試合の相手です。別に嫌がらせではないですよ? 誰よりも信頼するべき仲間だから、手の内は見せなければなりません。その実力も知るべきものです」
確かに分かるが、昨日の今日でコレか。
しかも、殺気が·····ゲフンゲフン、気にしない、気にしないッ!
「では、準備に入ってください。これから第一試合を始めます」
そして第三試験が幕を開けた。
下の✩✩✩✩✩から評価を。
ブクマ登録をして下さるとモチベーションが上がります。




