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突き進め頂点へ! 日本競馬のゆめへ!  作者: シャルシャレード
2章 3歳
35/37

その夜

 清弘の姿は、日本ダービーの祝勝会が行われる会場にあった。

 

 この会場では基本的にはこういったパーティーが主に開かれているのだが、シャンデリアにお洒落な窓や木製のドア、この会場で結婚式も行われるのも納得できるほどの華やかさがあった。


 スピーチが進んでいき、和やかな雰囲気が流れていく。

 

 そして清弘のスピーチの番になる。

 『今日はこのような会を開いていただいてありがとうございます。今日はホワイトジェムの状態が抜群だったので、自分は乗っているだけでした。この、ダービーの勝利は関係者の皆さんの力無くしては成しえなかったと思います。日頃感謝と共に、本日は、ありがとうございます。』

 緊張な面持ちから謙遜の言葉が発せられた。

 祖父、父、そして清弘。ダービーでの勝利は清弘本人だけではなく、高村家の悲願を達成した瞬間でもあった。


 

 『では、皆さんグラスを手に取ってください。乾杯!』

 大田の音頭とももに会場中から笑い声や話し声が聞こえる。

 競馬の話題や身の上話などが聞こえてくる。

 清弘は挨拶責めを受けていた。特に大田を始めとした沢山の馬主が多く、その内容はうちの馬に乗ってくれないかというものばかりであった。

 騎手にとって騎乗機会が増えることはかなり喜ばしいことで、清弘はその挨拶に対応していた。


 『疲れた。』

 挨拶責めがひと段落をし、各々酒が入り、喋りたいように喋るようになってきた。


 あまりその雰囲気が得意ではない清弘が会場の端で一人で烏龍茶を飲んでいると。

 『よう、ダービージョッキー!主役がこんなところで何してんだよ!』

 話しかけてきたのは同期の山本。厩舎は違うが同期の中で1番仲が良いとのことで大田さんが招待したらしい。


 『俺、あんまりこういう雰囲気得意じゃないんだよな。』

 清弘はやや酒が入った状態のため、本心が口から出てきてしまう。

 

 『まあそれもそうだが、それよりも聞いたか。この会場は大田さんがホワイトジェムの新馬戦の前からずっと抑えていたらしいぜ。』

 その話を聞いた清弘は苦笑いを浮かべる。


 『そうなんだ。それは感謝しないとな。』


 『羨ましいよ。俺なんか祝勝会なんて何年も開いてもらってない気がする。正直、騎手を辞めたいなって何回も考えてるよ。』

 山本は明るい表情を作るが、声色はやや暗かった。


 『辞めんなよ。あの大胆な山本の逃げは俺も参考にしてるし、春日さんも褒めてたよ。』

 清弘は山本の胸をポンと叩く。


 『そうなのか。そんなこと初めて言われたからちょっと反応が。』

 山本は照れるように頬をかく。


 

 『高村先輩、おめでとうございます!ダービーの騎乗本当に凄かったです!』

 背後から突然話しかけられる。清弘が振り返るとそこには小柄で可愛らしい感じの女の子がいた。


 『ありがとう。鈴木にそう言ってもらえると嬉しいよ。』

 話しかけてきたのは鈴木志穂。高村と同じく松崎厩舎に所属している4年目の若手騎手である。女性騎手という事で注目を集めて、プレッシャーを感じる事もあり、なかなか力を発揮できなかったが先日のかしわ記念で地方ながらついにG1を初めて制覇した。


 『ほんとかっこいいです、尊敬します!それ比べて山本先輩ときたら…。』

 鈴木は山本の方を振り向く。


 『ひどくないですか鈴木さん。俺泣いちゃいますよ。』

 そう言いながら山本は目頭を抑える。


 『まあまあ、山本も頑張っているわけだしあんまり責めないであげてよ。』

 清弘は山本をフォローする。


 『高村先輩は、山本先輩に甘いですよ。私ならもっといじめてやります。』

 鈴木はニヤリと顔を浮かべる。


 『辞めてよ、鈴木!助けて清弘!』

 山本は清弘に抱きつくようにする。


 『私もー。』

 鈴木もそれを見て抱きつくようにする。


 『こいつら酔いすぎだよ。』

 清弘は見て呆れる。


 

 『清弘ー?なんで女の子に抱きつかれて喜んでるの?』

 清弘は背筋が凍る感じがした。声の主は中島である。しかし、中島の雰囲気がいつものそれとは明らかに違う。酒に弱い中島は少しだけでもヘベレケになってしまうのだが、ワインを片手に持っていた。


 『中島さんもどうです?』

 煽るようにして鈴木がさらに深く抱きつく。


 『この、成敗じゃ!』

 中島も、清弘に飛びついてくる。


 『もう、やだ帰りたい。』


 そのあとのダービーの祝勝会は、中島を抑えることに終始して、幕を閉じた。


 

 

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