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突き進め頂点へ! 日本競馬のゆめへ!  作者: シャルシャレード
2章 3歳
32/37

日本ダービー

 奇数番のホワイトジェムは先にスムーズにゲートに入る。


 ゲートに入った後、もともと気性はそこまで荒くはない隣のバレリーズが立ち上がり嘶く。このダービーの気に当てられたのだ。そんなバレリーズを横目にホワイトジェムはとても落ち着いている。隣の馬が暴れたら落ち着きを失いやすいのものなのだが、ホワイトジェムは全く気にする様子はない。それを見た清弘の方にもようやく落ち着きが見える。


 ここまできたら後はやるだけだ。

ホワイトジェムがここまで落ち着いてるんだからやれる。心配する必要はない。 清弘は開き直る。


 そして、ようやく大外枠のサクスマーブルのゲート入りが完了する。


 ダービーに初めて乗る者、最後のダービーとなる者、重圧を背負いそれに打ち勝とうとする者、ダービーにかける者、競馬人生の全てをかける者、夢を叶えようとする者、ダービーのその先へ行こうとする者。


 さまざまな感情が大きく渦巻く。


 

 そんな全員がかけてきた、日本ダービーが始まる。


 さぁ、いくぞ!



 ガシャン


 

 ゲートが開く!


 いきなり、スタンドから声が上がる。

 シャークボーイが出遅れたのだった。

 逃げ馬であるシャークボーイのこの出遅れは痛い。

 シャークボーイ主戦の清弘がホワイトジェムに乗るため、ダービー初騎乗の5年目の内田に乗り替わった。

 5年目とは言え、去年香港ヴァーズを人気薄で逃げ勝っている。

 鞍上の内田は手綱をグイグイ押し、中団ほどに行かせた。

 しかし、ジリ脚気味なシャークボーイにとってかなりきついレースとなった。



 一方のホワイトジェムは好スタートを切った。

 そして、やはり予想通り前に行きたがる。その流れに身を任せ、最内にポジション取り、

 ホワイトジェムは前に行く。

 そして、アルファジャックルはその後ろに着く形となった。

 やはり、外から二頭突っ込んでくる。サクスシャインとボーエンマックスだ。


 サクスシャインは新馬戦、条件戦は逃げて勝利。

 ただ、出遅れグセから逃げ足はそれ以来なりを潜めていた。

 しかし、今回は出遅れしなかった。

 早坂自身最後のダービーという最高の舞台で。

 乾坤一擲の逃げをうつ。

 しかし、そうはさせまいとボーエンマックスも競りかける。どんな時でも暴走逃げ。1着か最下位かそんな馬であり、今回も競かけていく。

 この二頭は逃げ馬なので来ることが予想できた。


 さらに、清弘の予想に反してダマスカスローとサクスマーブルも先頭に競りかけていったのだ。

 重賞を2着3回を記録しているダマスカスロー。

 その戦績に劣らない実力も持っていた。

 戦前の控える競馬をすることを匂わせていたのは何処へやら。積極的に仕掛けていく。

 そしてサクスマーブルも続く、トライアル プリンシパルSを2着の後にここに乗り込んできた。

 本来は差し馬なのだが、この大一番に動いてきた。


 最初のコーナーから激しい先頭争いを繰り広げる。

 さらに中団グループも後ろから付いて行く。


 ダマスカスローは他の馬に競りかける前に上手く下げた。4頭で競ると明らかにハイペースになるそれに巻き込まれる前に下げる、安楽の頭脳的騎乗。

 先頭争いは結局サクスシャインとサクスマーブルが競り勝ち、5馬身遅れてボーエンマックスとダマスカスローが並ぶ。

 そこから3馬身ほど離れて5番手の位置にホワイトジェムが追走する形。

2馬身離れてアルファジャックルがいる中団となった。

 その後ろは10馬身ほどに広がり落ち着いた。

 22馬身差の超縦長のレース。これは、後ろからはかなりきつい。


 あの爆速逃げのボーエンマックスが遅れをとる。

 つまりこのレースは例を見ないほどのハイペースになることになる。

 やはり、前半のポジション取りの影響で1000mの通過タイムは超ハイペース。

 前に行った馬は明らかに折り合いがついていない暴走逃げ。そのため、前残りにはかなりきつい。前残りに持ち込むためにペースを落とし、息を入れる必要がある。


 しかし、3コーナー手前でスタミナ勝負に持ち込むために息を入れさせまいと、スイープナイトの池田騎手が煽るようにして早めに仕掛ける。

 皐月賞5着から来たスイープナイト。池田騎手渾身のまくりに出る。そのことによりペースを緩めることはできなかった。



 3コーナー、4コーナーの中間点で早くもボーエンマックスとサクスマーブルの脚が上がる。

 スタミナ自慢のダマスカスローとサクスシャインが並び先頭に立つ早めに仕掛けたスイープナイトが4コーナーでがその後ろについた。

 スイープナイトに引っ張れるようにして直線で後続、中団の馬が追い出し、各馬一斉に迫ってくる。


 直線に入り大歓声が起こる。

 後方待機のデスハイハンディが鞭を入れ、外から仕掛け始める。

 さらに人気薄のダマスカスシティーもそれに続く。

 しかし、脚が伸びない。

 後方も前に引っ張られラップが早く、後方の馬の足も止まりかけていたのだ。


後方の馬は伸びず、苦しい展開。


 しかし、ホワイトジェムの手応えはまだ良い。

 清弘は後ろを振り向く、アルファジャックルの鞍上はまだ動いていない。


 まだだ、まだ動くな。


 ホワイトジェムが息を入れた。

 アルファジャックルを引きつける。

 残り450m。

 前を見ると、差は6馬身ほど。

 流石にあのペース、粘っていたとは言え、前の足は止まりかけていた。

 スイープナイトも思ったより伸びがない。

 もう一度後ろを向く、今だ、今しかない。


 そこで清弘は、追い出し、鞭を入れた。

 ホワイトジェムはそれを待っていたかのように一気に加速、あっという間に先頭に並びかける。


 そのタイミングでアルファジャックルは動き出したのだ。

 大歓声が上がる。アルファジャックルを押し上げるような地鳴りのような大歓声が。

 それを見てサルベージタキオンも動き出す。

 ここまで4戦4勝でG1を2勝。

 マイル以上初挑戦のサルベージタキオンだが、後方から唯一足を伸ばしてきた。

 マーク屋的矢が外からアルファジャックルに馬体を合わせ蓋をする作戦。

 しかし、わずかに開いた内の進路を猛然と進み、サルベージタキオンを置き去りにし、あっという間にホワイトジェムに並びかける。


 14万人近い大歓声が沸いた。

 残り300、2頭が先頭で並ぶ。叩き合いだ。

 馬体を合わせに来たアルファジャックルが足を伸ばす。

 ホワイトジェムも負けじと足を伸ばす。


 勝負根性。

 それが今回打倒アルファジャックルのための唯一の作戦。

 直線で2頭の叩き合いに持ち込む。

 精神力での戦い。ただそれだけの作戦であった。

 


 残り200、後ろは離れる。

 ホワイトジェムが苦しくなった。

 アルファジャックルは伸びる。

 それでも清弘は必死に追い、ムチを入れる。

 しかし、クビ差リードを許す。


 もうダメなのか。


 頭の中でぐるぐると駆け巡る。

 初騎乗、初勝利。

 騎手新人時代の挫折。

 信じてくれた松崎調教師。憧れの父。

 夢を一緒に見てくれると言った中島。

 母のベストスマッシュのお世話をしていた時。

 そして、初めてホワイトジェムを見たときの衝撃。

 夢の父の馬で日本ダービーの制覇。



 いや、違う。

 ホワイトジェムはこんなもんじゃない。

 俺の覚悟が足りないだけだ。

 もう乗れなくても良い、だからこれだけは、このレースだけは勝たせてくれ。



 歓声はもうアルファジャックルだけに対する歓声ではない。二頭に対する歓声だ。

 観客は馬券を忘れ、二頭に引き込まれていく。



 残り100m もう一度、差し返す。

 もう体力も無い体で、気力だけで走っている。

 しかし、戻ってきたのだ。

 新馬戦で見せた重心が低く惚れ惚れするフォームが。



 行けええええ



 残り50m ホワイトジェムとアルファジャックルが再び並んだ。両者一歩も譲らず。


 そして、清弘にはそこからはすべてがスローモーションに見えた。

 ホワイトジェムの状態や気合。他馬の位置や呼吸。全てが鮮明に感じられた。



 300m以上に及ぶ2頭の叩き合いの末ホワイトジェムとアルファジャックル。全く並んでゴールした。

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