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9話

 シミュレーターの開発を終え、再び人型兵器の開発が始まる。関節のことはひとまず後回しにしてきたのだが、改善すべきところは関節部のみ、というところまで来てしまった。これ以上は引き延ばせるわけもなく、本格的に関節の素材に関して考えなくてはいけない。

 まあ、トラブルが減ったことは救いか。騎士団はシミュレーターでの訓練に精を出すようになったため、フェルトやティオに構っている暇がなくなった。つまりは、トラブルも減ることとなったのだ。


 「そういえば………」


 騎士団で思い出した。人族の方も方で大変だったらしい。騎士団の数は全盛期だったころの1%ほどにまで数が減ってしまったらしく。およそ6万ほどいた王国騎士団は、現在では1000人程度にまでなっていた。また、隊長格の者も多く死んでしまったらしい。それほど、魔物の襲撃は激しいものだったようなのだ。

 ヴェランディル王国騎士団は1番隊から8番隊までが存在し、それぞれ別の役割を担っている。騎士団の団長は1番隊が務め、それぞれの隊に二つ名のようなものがあるそうな。




 まず、1番隊。通称『金獅子騎士団』。騎士の中でも真っ正面からの戦闘で最も強く、実力のある者のみが入ることを許される騎士団の主力部隊らしい。元々所属していた数は5000人程。所謂最後の砦であり、騎士一人一人の練度も高い。また、騎士としての誇りも高く、問題行動を起こす者とていないということらしい。いたとしても、次の日にはクビにされるそうな。頼り甲斐のある、最も優秀な部隊。それこそが1番隊であるようだった。


 隊長はレオナルド・ヴィサス。騎士団最強にして、指揮官としても優秀だったと言われている。言われている、と過去形なのは生死不明だからだ。……言葉は濁していたものの、実際には生きている確率は低いと見ている。彼は王の命を救うため、何人かを率いて王城へと戻ったらしいのだ。それから連絡は取れていない。これが何を示しているのか、本当はわかっているはずだ。騎士団は信じたくないだけで。


 副隊長は前にも説明されたが、ロメリア・リリオープ。女性にして1番隊副隊長となっているのだから、その才能は推して知るべしだろう。まだ長くはない付き合いではあるものの、彼女の強さ、賢さは感じているのだから。団長のいない騎士団を纏めているし、十分に才能もあるのだと思う。




 2番隊、通称『銀亀騎士団』。名前がどうなのか、と思うのだが、侮るなかれ。彼らは鉄壁の防御を誇る騎士団で、魔族を人族大陸へ踏み込ませなかった最大の要因である。体格のいい者や我慢強い者で構成され、元々所属していた数は1万人程。その防御力は他種族でさえ舌を巻くというのだから、なかなかのものである。不意を突かれた形でなければ、魔物の被害は出なかったかもしれないとも言われている。


 隊長はカルル・ブワールン。土属性魔法と鍛え上げた肉体によって、数多の敵から攻撃を防いできたそうだ。しかし、彼もまた死亡していた。こちらは確認が取れているそうだ。不覚を取った、とも言われているのだが、実際はクリストフェルを庇ったとのことだった。カルルがいなければ、今の私はここにいない。というのはクリストフェルの話である。まさしく、騎士の名に恥じない人だと思う。


 副隊長はニックス・ブローディア。アッシュブロンドの髪に、茶色い瞳。190を超える巨体に、高い身長に比例するよう膨れ上がった筋肉。出会えば、なるほど。防御を得意とする、という言葉がしっくりくるような男性だった。寡黙な人物であるらしく、あまり話すことはできなかったが。




 3番隊、通称『黄梟騎士団』。梟はフクロウのことらしい。ノアに聞いたところ、フクロウとは知識や学問のシンボルとされる動物であるらしいので、納得であった。この部隊は魔法を得意とする部隊。魔法を研究し、有事の際は攻撃や補助、救出活動など幅広い分野で活躍するらしい。それ以外のときは大体魔法の研究をしているそうな。元々所属していたのは3000人程。


 隊長は接点のあるルクレース・ハマメリス。なんと火、水、風、光と四属性も使える優秀な魔法使いである。魔法のこととなると、色んなことを放り出してしまうのが困った癖か。まあ、それに関しては僕にも似たようなところがあるので、責めることはできないが。魔法に関しての知識も深く、大抵のことは彼女に聞けばわかるとまで言われるほどだ。


 副隊長はキュカ・ソルセルリー。魔法は女性の方が感性が高いらしく、こちらもまた女性である。キュカさんもまた死亡しており、死因はルクレースさんを庇ったようであった。話を聞いていると、ルクレースさんに非はないと思ったのだが。魔法使いなのにほぼほぼ乱戦状態に放り込まれれば、死にそうになるのは当然である。襲い掛かって来る魔物の攻撃を捌きながら、民を守っていたルクレースさんの防御が疎かになってしまったことなど、責められるはずもないだろう。迫る攻撃からルクレースさんを庇ったのがキュカさんだった。




 4番隊、通称『赤狼騎士団』。犯罪奴隷にて構成された危険な集団で、頭のネジが飛んでいる人が多い。ガラも悪く、ノアで問題を起こしているのもこの騎士団のメンバーが多いらしい。元々所属していたのは1万2000人程。ただ、これは死を前提として使われているから、だそうだ。死を恐れずに戦うので、ある意味では恐れられていた部隊とされている。最も突破力のある部隊とも言えるだろう。


 隊長はテオドール・ニンファー。僕が危険だと感じたあの人である。彼は一見すると、強面であるだけで常識人のようにも見える。のだが、実際はまるで違う。テオドールさんは重度の戦闘狂であり、交渉なんてものはまるでできない。戦いをやっている間はいいのだけど、終わったらどうなるか。彼のことを知ってからはさらに警戒を強めた。


 副隊長はクリフォード・バオナミル。この人も死んでしまっているようだ。死因は普通に戦死。最期は無惨とも言えるような、魔物に食い殺されるというものだったものの、最後の最後まで笑っていたそうだ。4番隊の人はこんな人ばっかりなのだろうか。心配になってきた。




 5番隊、通称『緑鷹騎士団』。狙撃、遠距離攻撃に特化した人が多いらしい。中には弓で1km先の的を射抜く人もいるのだから驚きだ。いくら特注の弓を使っているとはいえ。元々所属していたのは5000人程。一番被害が少ない部隊でもある。それでも、結構減ってはいるのだが。


 隊長はユーリ・アマラ。薄い緑色の髪に、水色の目をしている。初めて会ったときにはなんとも言えない目を向けられた。というのも、無感動過ぎたからだ。何の感情も映していなかったので、少し怖いと感じた。ただ、ロメリアさんに対しては普通だったので、交渉ができないわけでもなさそう。気を付ける程度に止めておくことにした。


 副隊長はソフィア・フォクスグローブ。こちらは栗色の髪に、緑の瞳を持っている。この部隊は二人とも隊長格が生きている稀な部隊だった。ソフィアさんは愛想がよく、こちらが礼儀を尽くせば話を聞いてくれるタイプだった。が、少し危険なものも感じる。付き合いを続けるうちに、何が地雷なのかわかればいいのだが。




 6番隊、通称『青馬騎士団』。物資の補給を担う部隊だそうな。戦場に素早く、かつ安全に物を運ぶことを目的として作られているので、意外にも戦闘力は高い人が多い。また、我慢強い人が多いのも特徴だろう。元々所属していたのは1万人程。


 隊長はジュリア・ウェストラリア。強く、愛嬌のいい皆から慕われていた女性だったようだ。しかし、魔物に襲われたことで命を落としている。隊員たちからは惜しむ声が少なくなかった。僕としても、そんな女性なら会ってみたいものだと思っていたのだけど。


 副隊長はグラント・リアダ。茶色の髪に、やや茶色っぽい目をしている。これといった特徴はないのだが、真面目に仕事をしている人だ。交渉もしやすそう、と感じた一人である。でも、少しだけ違和感も感じた。彼は何かを恐れているような、そんな気がしたのだ。




 7番隊、通称『白犬騎士団』。可愛らしい名前で、その役割も他の隊を補助する、という地味なもの。しかし、この隊に所属しているものもまた優秀であった。なにせ、不測の事態が起きたときにまったく別の隊と連携を取り、問題に対処しなければならない。よほど柔軟で、騎士たちが司令官の言うことを聞かなければできないようなものである。元々所属していたのは役割のこともあり、1万2000人程。けれど、魔物の襲来時に一番無理をした隊であるため、被害は大きかった。


 隊長はフェイ・リュッケンシルト、副隊長はベルタ・イェルペ。フェイさんは男で、ベルタさんは女の人だったそうだ。そうだ、と付くのは両名とも既に死亡しているため。騎士団の被害を抑えるため、縦横無尽の活躍を見せたのが7番隊であった。彼らが命を懸けていなければ、被害はさらに拡大していたと言われるほどに。……ただ、無理が祟ってしまったのか。疲労で思うように戦えなくなったところを、魔物に待ち伏せされて死んでしまったらしい。




 8番隊、通称『黒猫騎士団』。こちらもまた可愛らしい名前だが、やっていることは諜報活動やスパイなどという表には出せないようなことばかり。噂によれば、暗殺の任務も担っているらしい。おっかないというか何というか。よくよく考えれば、猫は元々狩りをする動物なので当たり前と言えば当たり前ではあるのだが。元々所属していたのは3000人程。少し多いな、と思ったのはここだけの話。


 隊長は既に会ったことがあるローラン・フリティラリア。話を聞いたときはなるほど、と納得してしまったものだ。あの人であれば、真っ昼間の人がいるところでも暗殺ができそうなところが怖い。普段は飄々としているものの、人族の中で油断ならない相手、というのが今の判断であった。それと、どこか暗い感情を持っているような気もする。


 副隊長はアンジェリカ・カーティル。優秀で可愛い部下だった、というのがローランさんの話。やはりこの人も死んでおり、魔物によって殺されたとのことだった。その殺され方は惨いと言っていい程で、とてもじゃないが軽々しく話はできないということらしい。そこまで踏み込むつもりもなかったので、事情はそこまでしか知らない。




 「……魔物に恨みがある人も多いんだろうな………」


 騎士団の人々は程度こそ違えど、魔物のことを許せないと思っているのは確かだった。そんな感情とは無縁だったのは4番隊のメンバー、それも一部の頭のアレな人たちぐらいだ。テオドールさんを含めた。

 ……僕のしていることは本当に正しいのだろうか。もしこのまま戦うための力を渡せば、騎士団は憎しみのままに戦い続けるのでは?僕は彼らを破滅の道へと引き摺り込もうとしているだけではないのか?そんな不安が襲う。正しい答えはわかるはずなどない。未来がどうなるかなど、人である僕には知るよしもないのだから。


 「……今は、信じるしかないか………」


 口の中で呟き、関節部の素材について考えるのだった。

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