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3話

 きょとんと。集まった人たちの表情を言い表すのであれば、そんな表現が一番いいだろう。みんな、とまではいかないまでも、多くの人は何を言っているのか理解できないといった様子だ。まあ、いきなりこんなこと言われたらそうなるか。あるいは、ロボットのことがわかってないか。どちらにせよ、説明が必要みたいだ。


 「こっちが一方的に言っているものだから、最終的に乗るかどうかは君たちが決めてくれればいい。強制するつもりはないし、乗りたい人だけが乗ればいいよ。いずれにしても、まだ時間はあるからゆっくり考えてほしい」

 「おい、一ついいか」


 手を挙げたのは威圧感のある人族だった。ローランさんとはまた違った恐ろしさを感じる。油断をしちゃいけないタイプだろう。


 背丈は高い。ローランさんよりも高いが、フェルトには届かないといったところか。190か、それよりも低いか。僕と並べば、大人と子供ほどには違うレベルだろうな。鍛え上げた筋肉を隠そうともせず、薄着の服装であった。また、精悍な顔つきで威厳のようなものがある。団長さんなのかもしれない。

 髪の色は茶色、ではあるが……純粋な茶色とは少し違う。くすんだような感じがして、やや色が薄まっていると感じる。瞳の色は鳶色で、僕の中を覗き込もうとするような意思を感じた。……後、普通に強いってことがわかる。


 「あなたは?」

 「ヴェランディル騎士団4番隊隊長のテオドール・ニンファーだ。堅っ苦しい言葉は嫌いでな、許せ」

 「テオドール!なんて口の利き方を………!」

 「いやいや、構わないさ。それで、テオドールさん。僕に何か?」


 厳しい口調で窘めようとしたロメリアさんを止め、テオドールさんに目を合わす。目を逸らせば、興味を失う。そうなった場合、どうなるかがわからないという予感がある。何というか、この人は危険だなと感じるのだ。

 だからこそ、引くわけにはいかない。彼の視線を真っ向から受け止める。それが愉快と感じたのか、ほんの少しだけ口の端を上げた。


 「あんたは戦いってのをどう考える?」

 「戦い?戦いか………」


 うーん、ひょっとしてこの人……いや、関わり合いになればわかっていくことか。今は推測だけで動くことはやめておこう。


 「……さあ?」

 「さあ、だと?」


 興味を示したかのように片眉を上げる。僕は頷き、言葉を続ける。


 「正直、戦いは避けたいかな。どんなに頑張っても、被害は出る。多くなればなる分それは大きくなっていくし、とてもじゃないけど好ましいものとは思えない」

 「………………」

 「けど、同時に戦わなければいけないときがあるのも理解してる。戦い方は自由にしても、誰にだって受け入れられないものもあるだろうし。戦うときに戦わなきゃ、失ってしまうものもあると思ってる」

 「……ほう、続けてくれ」


 彼の目は相変わらず僕を見ている。だから、こちらも彼を見る。


 「だから、さあ?なんだよ。すべきときにはする、すべきときではないときは避ける。それが僕の答えさ。平凡な答えで悪いね」

 「今はどうだ?戦うべきだと考えているか?」

 「……今は力を蓄えるべきかな。ただ、いずれは戦うべきだと思ってる」


 しばらく睨み合うかのように視線をぶつけていたが、テオドールさんが微笑したことで緊張の時間は終わりを告げた。どうやら、お眼鏡には適ったらしい。


 「邪魔をして悪かったな。話を続けてくれ」

 「うん、わかった」


 彼はまた腕を組んで、目を閉じた。寝ているのかどうかはわからないけど、満足してくれたならいい。危険人物リストに、テオドールさんを追加することにしよう。


 「さてと、とはいえよくわかっていないようだから、何がわからないのかから聞いていこうか。質問ある人からどうぞ」


 互いに顔を見合わせていたけど、なかなか手は上がらない。遠慮しているのか、自分だけ上げるのが恥ずかしいのか、はたまた僕に質問するのが嫌なのか。理由が何にせよ、このままじゃ困るな。話が進まないし。


 「それじゃ、俺からいいかい?」

 「あ、ローランさん。いいよ、何かな?」

 「んじゃ、遠慮なく。そもそも、ロボットってどういうモンかね?魔道具か何かかい?」


 いつものように、軽い口調で聞いてくる。なるほど、そこからしてわからなかったのか。もしかすると、誰か知っている人がいるのか、という期待もあったのかもしれないね。


 「ん、わかったよ。ロボット、っていうのは簡単に言えば、人の動きをベースに動く機械や装置のこと。わかりにくかったら、機械でできた人のような感じ、ってイメージしてくれればいいよ。今から造ろうとしているのは人型のロボットだね」


 場が再びざわめく。到底信じられないものなのかな。声が鎮まるまで待って、また話し始める。


 「とはいえ、基本的には騎士団のみんなに操作してもらうことになる。僕ができるのはみんなに『剣』と『鎧』を与えることだけだよ。上手く扱えるかは騎士団の人たちに掛かっているかな」

 「……いまいち話がわからんが、武器を与えてくれる、って認識でいいのか?」


 誰かが上げた声に頷く。きちんと使うことができれば、この上ない強力な武器になるだろう。それは間違いない。……だって、たぶんまた神器(アーティファクト)になるだろうし。


 「私からもよろしいですか?」


 今度は女性の声。そちらへ目を向けると、金……ではなく。黄色い髪を腰まで伸ばし、目つきの鋭い女の人が僕を見ていた。

 騎士というには珍しく、細い手足。どこか儚げな印象も受けるが、同時に意志の強さも感じられるような女性だ。腰にはレイピアのようなものを下げている。


 「ヴェランディル騎士団3番隊隊長、ルクレース・ハマメリスと申します。あなたが我々を支援しようとしているのはわかりました。しかし、何故人型なのですか?あのヘビのような形、とまでは言わなくても、他の案もあったのでは?」

 「ルクレースさん、でいいのかな?その質問も尤もだね。確かに、人型兵器よりも別の形にした方が楽だし、みんなも操作に苦戦する必要はなくなるだろうね」

 「……では、何故?」


 一層眼光が鋭くなった彼女に、僕は本心を告げた。これが嘘偽らざる理由だったから。


 「だって、人型兵器の方がロマンがあるでしょ?」

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