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1話

 巨大ロボットを造ろうと思ってから、1週間が過ぎた。ある程度までは形になってきたのだが、完成に至るまではいかない、というのが現状かな。なかなか難しいんだ、これが。

 巨大ロボットは人間と同じように造るつもり。要は人と同じように筋肉や骨、血といったものを再現して創り上げていくのだ。巨大ロボットに憧れていたことはあっても、まさか0から創っていくことになるとは思ってもみなかった。難航するのは当然と言えるだろう。なにせ、基盤となる設計図がない。

 まあ、楽しいからいいのだけども。物を作ることは好きだ。それも男子の夢であったメカを作るなんて、心が躍らないはずもない。徹夜続きではあるものの、開発を進めているというわけだ。


 さて、話を戻そう。人体に似せて造る理由は単純。楽であるからである。

 僕は物作りに従事しては来たものの、実際に機械を弄ることは少なかった。それもそうだろう、所詮は高校生。本格的なプログラミングや製造工場、あるいは開発の現場などにはいたことがない。機械の内部を見ることができたことなど、少ししかなかったのだ。

 その数回にしたところで、人型の機械ではない。どちらかと言うと、自動車などといった人からは大きく離れ、技術を流用しにくいものが多かった。


 では、どうするか?そこは高校でも習うような知識を利用することで、再現しようとした。そう、生物の分野から人体の構造を引っ張って来ようとしたわけだ。


 機械を動かすには筋肉を作る必要がある。


 筋肉を動かすための魔力は、血管に見立てた魔力を流すための管を巡らせる。


 魔力を貯蔵するために、人工の内臓。肝臓を作る。


 筋肉や内臓だけでは身体を支えられないはずだし、骨も作る。


 魔力が勝手に流れてくれるとも考えにくいので、心臓を作る。


 入力したコマンドを伝達させるために、神経も作る。


 そして、人が乗るであろう場所は……脳。人が操るものにするのだ、脳のスペースは空となる。頭部にコクピットを作る方が都合がいい。

 一方、アニメ(ガン〇ムみたいな?)のように胸部コクピットにしようとすると、筋肉や心臓なんかを小さくしなくちゃいけなくなる。小さくても高性能なものに仕上げることができればいいのだが……現状では難しいと言えるだろう。頭部にする方がよさそうだ。


 と、まあここまでが理論を組み立てた上で、一番実現しやすいのでは?と考えた巨大ロボット計画の第一段階。ここまではそこまで時間を掛けることなく進めることはできた。思いつけば後は早いのだし、当然と言えば当然でもあるが。


 「問題はここから先なんだよなあ………」


 手にした鉛筆をくるくると回しながら、唸る。そう、どういう理論で動かそうとするか。そこまでならば魔道具製作の経験も豊富であるため、至極あっさりと辿り着けたのだ。掛かった日数、僅か1日である。今までで一番勉強してきたことを感謝した日かもしれなかった。

 が、その次。どのような機体を作るか、という設計の段階で詰まってしまったのだ。理由は僕自身にある。


 「僕が戦えないから、どんなものが欲しいかわかったものじゃない………」


 ……戦えない。その一点に集約されてしまうのである。

 今まで魔物と遭遇することはあった。倒したことも曲がりなりとはいえ、一応あるにはある。

 しかし。だがしかし。戦闘経験があまりにもないためか、何を求められているのかが予測すらできないというのがあるのだ。


 「かと言って、素直に質問に答えてくれそうな人もいないし………」


 正直に言おう。僕は結構嫌われている。特に人族。何故かと聞かれれば、僕の態度と行動に反感を持っているから、と言うのが正しいだろう。


 まず、印象をはっきりと悪い方向へ変えたのは、ティオとナトゥラさんを庇ったときのことだ。ノアに来て最初の日に起こったあの事件。あの日、僕は自分こそがノアの支配者。人族も支配しているのだ、という印象を持たれてしまったらしい。

 そりゃあ、今まで王子であるクリストフェルを担ぎ上げてた人族からすれば、僕の存在が気に入らないはずである。何のこともないぽっと出の少年が権力を握っているようなものなのだから。胸のうちではよく思わないであろうことが容易に想像できる。


 次に、こちらの方が大きいと思うのだが……僕が異種族と仲がいいこと。現状では戦力となり得るのはフェルトとティオの一団ぐらい。人族は疲弊し切っているので、一旦休息と戦うための武器とが必要な時期だ。

 となると、道具を作る機会はフェルトやティオたちの方がよっぽど多い。道具を作る機会が多い=会話する回数も多い、ということになるので、人族よりも異種族を贔屓していると思われているのであろう。困ったものである。


 「それに、ティオと話すことが多いからなあ………」


 ティオの抱く淡い恋心は既に気付いている。チラチラと僕を追う視線が熱っぽかったり、特段用事もないのに僕の近くにいたりする時点で察しろというものである。かと言って、無視するようなことは性格上できず……彼女を甘えさせている、というわけである。今までひどいことをされてきたのだから、という負い目もあるのかもしれないが。

 勿論、人族からすれば穏やかではないだろう。ひょっとすると、僕がアマゾネスに取られるのでは?そう思ってしまうのであろう。取られてしまえば、何をされるかわからない。なにせ、散々嫌なことをしてきたのだ。報復を頼まれ、自分たちが攻撃されるとでも思っているのだろう。


 「そうなるぐらいなら、いっそのこと僕を排除しよう、ってことか………」


 決定的な証拠が出れば、即座に実行に移すだろう。それぐらいのことはやり得ると思ってるし、その兆しも見えている。ほんとに困ったものである。


 「……?はーい」


 チャイムが鳴ったので、扉を開ける。ティオが話に来たか、もしくは何か問題が起こったか。あるいは、暇だからとフェルトが来たのかもしれない。そんな僕の予想は裏切られることとなった。


 「あれ?あなたは確か………」

 「初めまして、ではありませんが……こうして話すのは初めてですね。少々お時間をよろしいでしょうか?」

 「それはいいけど………」


 扉の向こうに立っていたのは、よくクリストフェルの近くで見る女性。王家の騎士だった人かな、と推測を立てているけれど、それは正しかったようで。彼女は肩の辺りで切った金色の髪を揺らし、頭を下げた。


 「ヴェランディル王国騎士団副団長、ロメリア・リリオープと申します。騎士団の面々にあなたのことを紹介したいと思い、参上しました。予定さえ空いていれば、お供願えないでしょうか?」


 ……これはまた。予想を超えたことが起こったなあ。まだ手にしていた鉛筆を回しながら、僕は唖然とするのだった。

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