プロローグ
間隔が空いてしまい、申し訳ないです。今日から投稿を再開します。
「うーん、どうしたものか………」
誰にも聞こえないよう、静かにため息をつく。ため息をついてしまう理由は、現状頭を悩ませている問題のせいである。とはいえ、仕方ないことも十分に承知しているので……やっぱり最初に溢したように、どうしたものかということになってしまうのである。
「ヨロズ殿、どうかしたのだろうか?」
「んー……あ、団長さん?」
「よしてくれ。私は団長などという器ではないよ」
「そう?素質はあると思うけどね……まあ、端的に言えば時間が足りない」
そう、その一点に尽きる。そして、これが頭痛の種となっているので、困りものであるのだ。
「そうか……確かに、我々の機体のメンテナンスを一手に引き受けてもらっているのだ。申し訳ないとしか言えないな………」
「……?いや、そうじゃないけど」
「ん?」
どうやら、何か思い違いをしているらしい。別に騎士の人たちを責めているわけじゃない。ぶっちゃけた話、徹夜は元の世界でも結構経験してる。こっちでは魔法薬の力もあるのだし、気にするというほどでもないのだ。
困っているのは別のこと。要するに………
「……このままの攻略状況だと、絶対間に合わない………魔族大陸か多種族大陸辺りで寿命が尽きる…………」
「よ、ヨロズ殿?」
「でも、現状だと自分のところだけ助かれば人族は助けようとしないだろうし……そうなると、戦争がいつ起こってもおかしくないし………ああああ、人生が足りない………後200年ぐらい欲しい…………」
「お、落ち着いてくれ!」
団長さんに揺すられて、ようやく正気に戻れた。うん、あまりにも果てしなさ過ぎる道に、現実的じゃないことを言っちゃったよ。どう頑張っても、僕は100年生きられるかどうかだし。結局、地道に頑張るしかないか。
閑話休題。
「問題はそれだけとも言えないからねえ……他にも山積みだし」
「本当に申し訳ない………」
「いや、団長さんのせいじゃないからいいんだけどね」
問題行動を起こしているのは主にあの子とあの子とあの子と……あれ、考えるのが馬鹿らしくなるぐらいに多いな。本当にどうしようもないや。
とりあえず、一つずつ解決していかなければいけないかな。根が深い問題なだけに、すぐになんとかするのなんて不可能だし。いずれは解決しなくちゃいけないから、放ってわけにはいかないけども。
「団長さんやクリストフェルなんかは問題ないけど。まだまだたくさんの人が他の種族を見下すことを当然と思ってるし。意識を変えてかないと、同じことはまた起きるよ。まず間違いなくね」
「そうだろうな……ヨロズ殿をよく思っていない者以外でも、他種族を軽んじている者は多い。仮に魔物の脅威が消えても、戦争が起きることは間違いないだろう」
「第二、第三の『魔神』が現れてもおかしくないでしょ?そのとき、また僕みたいな人が現れるとも限らないからね。今度こそ全滅するかもしれないと思うと、放置はできない問題なんだよ」
「重ね重ね申し訳ない………」
団長さんは謝るけど、団長さんのせいじゃないしなあ。謝らなくてもいいのに。この人には助けられてるのだし、当たるのは筋違いというやつだ。それに、この人の頑張りはよく知っている。元々の団長さんがいないのに、十分に。いや、十二分に頑張っていると思うのだ。
騎士たちをまとめ、率先して動き、騎士団の乱れを正そうとしている。もし他の人だったら、恐ろしいことになっていた。そう思ってしまうほどには努力しているし、才能もあると思っている。
「話は変わるが、ティオブラウ殿との件はどうなのだろうか?」
「ティオのこと?んー……実はまだ待ってもらってる。どうも、その手の話は得意じゃないんだよね」
「……?だが、よく相談もされていると聞くが?」
「他人のはなんとなくわかるからいいんだけどね。自分のこととなるとまるでダメなのさ」
情けないと思われるかもしれないけど、これに関してはどうしようもない。自分がろくでなしだということはよくわかっている。簡単にはい、そうですか。と頷くことはできないのだ。特に、ティオ相手だと。
「そういうものなのか?」
「そういうものさ。前に大失敗してるから、何が正しいか自分でもよくわからないんだ」
「……自分のことを自分がよくわからないとは、なんというか、その………」
「奇妙、かな?でも、意外とそういうものだよ。自分ではよくわからないことだってあるものなのさ」
そして、自分ではよくわからないことに限って、他人はわかっていることがある。つまるところ、本当の意味で自分の全部を知ることなんてできないし、他人が自分のことを何も知らないということもあり得ない。ということなのである。だから、他人との交流を遮断してはいけないわけで。
「ティオブラウ殿は特に、と言ったが何か理由でも?」
「ん、そりゃね」
教えはしなかったものの、理由はきちんとある。それはティオが乙女である、というのが一番の理由である。思い出は綺麗なままの方がいいだろう、なんて思っていたりする。
「さてと、メンテナンスを再開しますか。団長さんはシミュレーターを使った訓練をさせて来て。今は人族も立派な戦力だしね」
「了解した。では、これにて失礼する」
身を翻した彼女に、やっぱりちょっと硬いかな?と思ったのはここだけの話だ。
大きく伸びをして、背後に並ぶ巨大な機械の群れに向き直る。今日中にこれを仕上げないとならない。今日は徹夜かな、と思いながら、道具を手に取る。
話に出て来たのだが、今では人族もまた前線に出て、戦えるようになった。しかし、それはまた新たなる火種も生むことになる。状況が変わったのはそう、話を過去に戻す必要がある。それはティオが話し掛けてくれるようになってから、時間がそこまで経たない頃の話だ………




