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14話

 その後もフェルトのイライラは募っていく一方だった。なにせ、態度が悪い。

 人族が褒め称え、賛美するのは僕だけなのだ。フェルトはまるでいないかのよう。食事も運ばないまでの始末である。ここまでひどいと、一周回って感心してしまうほどであった。


 「……ったくよ、人族のやつらと来たらあれだぜ?だから嫌いなんだっつの」

 「あはは……どうしよっか、全然擁護できないのだけど」

 「あいつら助ける気か?やめとけやめとけ、お前まで汚れる必要はねえよ」


 ケッと吐き捨て、僕が手渡した食事に手をつける。僕はそこまで食べたいとも思えないし、ぶっちゃけた話薬を飲めば全部解決だし。……かなり不味いのは仕方ないかな。

 まあ、女の子には何も食べさせないで、自分だけ美味しいものを食べる。そこまで最低な男に落ちぶれたつもりはないし。


 「……あれ、そういえばさ。フェルトって僕のこと認めてはくれてるの?」


 吐き捨てた言葉に違和感を感じ、問い返していた。人族のことを異種族は意地でも認めない、という風潮があると思ったのだけど。先ほどの言葉だと、僕は認めてるみたいじゃない。


 「は?今さら?」

 「今さらって………」

 「お前はまだまともな方だろ。力を貸せとは言ったが、常識的な範囲内だ。むしろ普段のこと考えりゃ、オレのが得してるだろ。それをくどくど言わねえから、オレはお前と一緒にいるんだっての」


 まとも。常識的。まさかこの子からこんな言葉が聞けるなんて。ちょっとだけ感動を覚えちゃったよ。


 「ま、一番は暮らしが楽になったからだが」

 「あはは、だと思った」


 いつも通りで、平常運転なフェルトに笑ってしまうのだった。


※               ※               ※

 「なんと、それは真ですか!?」


 唯一話すことができる青年が驚きの声を上げる。周囲の人族も戸惑ってはいたものの、青年の口から僕が話した内容を知ると共に同じ表情を浮かべている。到底信じられるものじゃないんだろう。今までの生活が生活だっただけに。

 歓待という名目で出された食事を見てもわかる。人族たちはどうしようもないまでに追い詰められている。これ以上、後がないまでに。どことなく暗い雰囲気でわかってしまうのだ。ああ、この人たちは救いを求めているのだ、と。

 それを知ってしまったとき、僕に見捨てるという選択肢はなかった。例え、それが女の子ではなかったとしても。それが例え、大きく歪んでしまっていたとしても。だって、きっとそれが僕であるということなのだろうから。


 「ええ。あなたたちに話した通り、ここよりもずっと安全な場所があります。そこでなら食料もある。物品もある。何より……反抗するための牙がある。ここでいつ死ぬかもわからない生活を送るよりも、ずっといいと思いますよ」


 ざわざわ。どよめきは大きくなる。確認した上で大丈夫、と頷いたのだ。期待を寄せるのもわからないでもない。

 けれど、それが面白くないのはフェルトだ。当然だろう、わざわざ人族を迎え入れようとしているのだから。自分ではいけないのかと不満を持っているとも、気に入らない種族を迎え入れる嫌悪とも言えるだろう。


 「………フェルト」

 「……んだよ?」

 「君は確かに強いよ。それは認めてるし、事実だ。でも………」


 理由はない。けれど、ある。いつものように、矛盾している。

 それでも。その在り方すら失くしてしまっては、僕が僕でなくなってしまうと思うのだ。それが……僕には恐ろしいものに感じる。そんなのは嫌なのだ。


 「でも?」

 「……今から僕がしようとしていることは、とてもじゃないけど君一人じゃ無理だ。敵の汎用ユニットに対して、いきなり切り札(エース)で戦おうとしているようなものだ。いくら君の力が強いと言っても、その力には限りがある。それならば、こちらも頭数を揃えなければいけないというわけさ」


 勿論、凡百の敵を前にしたところで、相手にならないほどの力を持っているのなら話は別なのだが。そう、言うなれば英雄。または勇者と呼ばれるような人種。そういった者たちならば、なんとかなるのかもしれないが……いや、無しだ。やはり、こんな絶望的な戦いを一人に背負わせるわけにはいかない。

 とりわけ、強い力を持つ者には。


 「………つまり?」

 「雑魚たちを潰してもらう役をやらせよう、ってことさ」

 「なるほどな。そんなら別にいいさ。雑魚には元から興味ねえし」


 あっさりと頷き、後はよろしくとばかりに投げられた。うん、この子は相変わらず扱いやすくていい。変な勘繰りが不要な分、今の僕が持ち得る、最大限の協力者だ。大事にしたいのだ。

 とはいえ、だ。元々こちらは特に問題ないと思っていた。フェルトは言っては何だが、脳筋が入っているところがある。なので、ある程度融通を利かせれば納得してくれる。頷いてくれるだろう、と。

 問題なのは、もう一人の協力者の方。いや、まだまだ協力者とは呼べないのだが。協力者になってくれるかもしれないであろう人物のことだ。あの子は集団を率いている。見たところ、人族よりもよほど優れた能力を持つ集団を。あの子たちをみすみす逃したいとは思えない。


 「………ベストな状態はあの集団と、この人族の人たちを丸ごと仲間に貰うことだけど」


 それはなかなか難しい。そもそも、あの子たちは人族を蛇蝎の如く嫌っているのだから。


 「……これは大変な仕事になりそうだ」

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