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6話

 「これも駄目……一度に大量の命令式を組み込むことは不可能、ってわけか………」


 ガチャガチャとできたものを机の上に積んでいき、次の制作に取り掛かる。昨日は筋肉痛で丸々潰れちゃったし、今日はきちんと進めないと。護符の有用性と共に、危険性が認識できたことだけが救いかな。いきなり使って、筋肉痛で動けないとかだったら笑えないし。


 「うーん、どうしたもんか………」


 とりあえず護符は毎日の日課として、10枚ずつ書いていくことにした。ずっとやっていると、手が逝くことは昨日学んだし。異世界に行くときまでに、それなりの量があればいいんだからね。一気にやる必要はないか、と判断したからだ。

 次に作ろうと思ったのは、魔法陣を書くことによって作ることのできる魔道具の応用編。半永続的に使えるものを作ってみよう、という計画だった。とはいえ、魔法陣を壊されたらすぐに使えなくなる、上級者相手には使えないものだろうけど。護身用や日常生活用にはいいかな、レベルのものだった。


 「異世界に行くんだから、護身用の武器から作ろうとしたけど……失敗したかな………」


 魔法陣式の魔道具は簡単な割には、意外と奥が深い。組み合わせ次第では、より大きな効果を生み出すことだってできる。相乗効果で元々の効果が3倍にも、ひょっとすれば数百倍にもできるかもしれないのだ。

 でも、問題だってある。それが現在直面している難題だった。


 まず、魔法陣は繊細だ。ちょっとした歪みでさえ許さないのだから、作った後に魔法陣を刻もうとしても難易度が高い。加えて、刻んだ後に加工を施しても、形が歪むことによってやはり効果が発揮しない。これがまあ、一番のネックなのだ。魔法陣式の魔道具が普及していない理由は、ほとんどがここに起因していると言っても過言ではない。


 次に、繊細であることに関連しているのだが、魔法陣は複数個あると互いに干渉し合う。2~3個程度なら大丈夫なんだけど、5、6個まで増やすと途端に暴発する。これはこれで簡易手榴弾として使おうかと思ったけど、想像していたものと違う。ここで止められるはずもなかった。


 最後に、スペース的な問題。どこかに必ず刻まなきゃいけない上、上記二つのことがある。あまりに互いの位置が近いと干渉力が強過ぎてむしろ危険。かと言って、適当に配置すれば魔法陣が歪み、効果が発動しなくなる。これら3つに気を遣いながら、魔道具を組み立てていかなければならない。実に大変なことだ。


 「ま、楽しいからいいんだけどね」


 難しいとは言え、これができたときの達成感はそれだけ大きいものだと思う。簡単なことばっかりやってると、逃げ癖ができちゃうだろうし。それに、自分の命を預けるものなんだ。必要な困難は経験しておいた方がいい。それが後の自分にとって、大事な経験になるかもしれない。若いうちの苦労は買ってでもするものだ、ってどこかの誰かが言ってた気もするし。

 今はあれこれ考えながら、試行錯誤していくしかないかな。効果の発動しない道具を積み重ねながら、次を作ろうと設計図を書き始めた。そのときだった。


 「いっ………!」


 頭部に物凄い衝撃がやって来た。ペンを落として、思わず頭を押さえてしまったほどに。数秒経ってからも、まだジンジンするぐらいなのだから、威力の程はお察しというものだと思う。

 誰がやったんだろ、と振り返って……フリーズした。うん、いやね。仕方ないと思うんだよ。例えば山を登ってるとき、急にクマと遭遇したら思考停止するよね?嬉々として向かっていくのは戦闘狂ぐらいのものだよね?つまりはそういうこと。


 「あー……えっと、そのー………」

 「失敗しても、めげずに取り組むことはいいことです。あなたのその姿勢は私も高く評価しています」

 「え、あ、はい。ありがとう、ございます?」


 恐ろしいまでの威圧感だったゲイムロルさんが褒め出すものだから、僕は戸惑っていた。これはどういうことだろう。答えはすぐに知ることとなる。

 顔を掴まれた僕は、段々その拘束力が強くなっていくのがわかった。んー、これは間違いなくアイアンクローですねー。許す気ないですねー。今回ばかりは死ぬかもですねー。


 「私も努力をすべて否定する気はありません。ええ、ありません」

 「そ、そうですか………」

 「ですが。それは最低限のことをしてからです。護身術の訓練を怠ってまで、こちらに集中するということは許していませんが?」

 「お、おっしゃる通りです………」


 ゲイムロルさんの表情は無だ。瞳の中にも、何の感情も見出せない。いわゆる、ヤンデレの目っていうのかな?そんな感じだと思う。僕を掴む力もさらに強くなっていて、顔が変形するかと思うレベルだ。


 「何か、言うことはありますか?」

 「すみませんでした!」


 こうなった僕には、謝り倒すという選択肢以外残されていなかった。全面的に僕が悪いから、言い訳の類いもできないしねえ。また死ぬことにはならないかな、と不安になりながらも、謝ることは続けるのだった。

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