11話
「フェルトー?」
「どうした?」
「いや、着いたから呼びに来たんだ。どうせなら一緒に行動した方がよさそうだし」
「そうかあ?邪魔なだけだと思うがな」
フェルトを探す……とは言っても、いる場所は限定されてる。探すというほどでもなかった。むしろ、探さなきゃいけないのは僕の方かもしれない。あちこち移動してるし。
差し出したタオルで汗を軽く拭いて、僕の隣を歩く。その顔は懐疑的だった。
「そう?荷物持たなきゃいけないのに?」
「うっ……そ、それは………」
「僕がいれば、アイテムボックスがあるけど?攻撃するならともかく、自分の身も守れるし」
「うぐぐ………」
「さらに言うなら、何か不測の事態が起きたとき対処できるけど?それでも邪魔なんですかね?」
しばらく唸っていたが、渋々といった様子で頷く。流石に、何往復もするのは手間と感じたらしい。
「まあ、それなりに用意しなきゃだからな……仕方ねえか………」
「そうだねえ。一応多めにアイテムボックスも作っといたから、空きがなくなるなんてことはないと思うけど」
「……それ、オレがアイテムボックスを持ってけばいいんじゃねえか?」
「アイテムボックス気にしながら戦うの?」
「いや、やっぱお前がついてきた方がいいわ」
何という手のひらの返しっぷり。楽でいいんだけども。
「で、どうする?」
「どうするって、何がだよ?」
「いや、今12人も増えたわけだし、食料はそれなりに必要でしょ?降りて一泊する必要あるのかな、と」
それなら色々と別の準備も必要だし、アマゾネスの少女。マーヒトさんにも説明が必要だ。なにせ、ここで食事を作っているのは主に僕。食料がどこにあるのかもわからないに違いないだろう。
「別にいいんじゃねえか?足りないようなら、一回戻ってまた降りりゃあいいだろ」
「面倒じゃない?」
「空のがまだ安全だしな。安全性を確保してえなら、多少手間が掛かっても戻る方がいいさ」
「わかった、じゃあ準備ができ次第出ようか」
階段のところで一度別れ、自室へと戻る。荷物はすべてそこに置いてあった。フェルトのことだから、僕がついて行った方がいいだろうな。予想は見事に当たり、準備は無駄にならずに済んだ。
「はーい?」
個室にはインターホンが取り付けられている。個室内の人物に用があるときは、これを使うことで呼び出すことができるのだ。と言っても、僕の部屋に訪ねて来るような物好きはなかなかいないはずだけど。フェルトの用意ができたにしても、早すぎる。
誰だろうと廊下に顔を出す。僕の部屋の前に立っていたのは、意外な人物であった。
「マーヒトさん?どうしたの?」
「食料を取りに行くんだってな」
「うん、そうだけど………」
なんで知っているの、とはならない。特段隠そうとしていたことでもないし、食堂で話していたことも何度かあった。その場ではマーヒトさんもいたのだ。人間より身体能力の高い彼女のことだ、僕らの会話を聞くことぐらい、なんてこともないはずである。
「あたしらも何人か手伝ってやる」
「……え、それほんと?」
それはありがたいけど……裏があるのでは?と思ってしまう。この子たちの人族嫌いはやばいと感じるほどだし。
「意外か?」
「そりゃ当たり前でしょうよ」
「まあ、そうだろうな」
いや、失礼ではあることはわかるのだけど。いきなり態度が変わったら、誰だって違和感の一つや二つ感じるでしょうよ。
「単に、自分たちの食い扶持ぐらい自分らで稼ぎたいだけだ。慣れ合うつもりはねえ」
「ああ、そういうこと。納得だよ」
そりゃそうか。現状は彼女たちからすれば、人族に養ってもらっているというのが正しい。いつまでもこのまま甘んじている、というのはプライドが許さないのだろう。
「そか。だったら、僕たちと一緒に行動するのはやめときたい?」
「できりゃあな。我が儘言うつもりはねえがよ」
「ううん、手伝ってくれるだけでも嬉しいさ。行き帰りは同じ乗り物に乗ってもらうことになるけど、現地では別々に動こうか」
「……助かる」
なんだか意外だな。お礼なんて言わないかと思ってたのに。少しは距離を縮められたのかな?少なくとも、この女の子とは。
「それじゃ、一応これ渡しとくね。アイテムボックス」
「………は?」
「容量はそこまでないから注意してね?もう入らない、ってなったら、ここのランプが赤くなるから。わかりやすいとは思うよ。で、使い方は使うときに魔力を流すこと。流す部分はわかりやすいように、印があるからね。ここに流してもらえばいいよ」
「いやいやいや、ちょい待て」
僕の口を手で塞ぎ、顔を近付けられる。ありゃ、少し弾丸トーク気味だったかな?ちょっと反省。
「ごめんごめん、ちょっと一方的に話し過ぎたね」
「いや、そうでもねえよ……お前の渡したものにツッコミどころがあるんだよ」
「え、アイテムボックスに?」
そんなにおかしなものでもないと思うけど。
「いや、だってアイテムボックスってやつは神器だろ!?そうポンポン渡していいのかよ!?」
「そう?数はあるから、別に2、3個持ってっても平気だけど?」
なくなればまた作ればいいし。何より、これはそこまで大容量のものは入らないのだ。せいぜい入って10t前後である。
「………こっから消えるとき、お前攫った方がいいかもな」
「あはは……そしたら、フェルトがついて来ることになりそうだね」
本気かどうかわからない言葉に、僕は苦笑するのだった。




