5話
「「終わったあ………」」
フェルトと二人、地面に座り込む。フェルトは血や土で汚れている。こっちは外傷がなくても、魔力を結構使ったので疲労感がひどい。ちょっと休憩したいと思ってもいいはずだと思う。
「フェルトー、怪我してるー?」
「いや、全部返り血だ。上のやつがほとんど倒してたからな」
「そっかー、それはよかったー………」
どうやら空中を制すると、かなり有利になることはこの世界でも同じようだ。ひとまず、大きな被害が出なかったことを良しとしようか。
魔物との戦いはこちらの勝利で幕を終えた。フェルトが迫ってくる魔物を倒し、すり抜けてきた魔物は僕が『穢れを祓う聖盾よ』で防ぎ、腕時計で攻撃をしていた。だが、僕たち二人よりもずっと活躍していたのは、上空に滞在する『ケツァルコアトル』だろう。魔物の集団後方で、ひたすら絨毯爆撃。単純ではあるが、効果は大きい。結果として、魔物の群れに呑まれることなく切り抜けることができた。
「さっきの魔物、なんだけどさ」
「ああ」
「死んだら、仲間を呼ぶとかしないよね………?」
ふと疑問に感じたのはそこ。流石に、この状態で続けて戦うなんてことはしたくない。精神的に辛いものがあるし。
「……………」
「……フェルトさん?」
「……基本、群れで行動するからさ。遅くなったら来るかも………」
「さっさと撤収!」
『ケツァルコアトル』を地上へと降ろし、急いでその場を離脱するのだった。
※ ※ ※
「なんとかなったね………」
「そうだな………」
食堂まで移動し、二人で椅子にもたれ掛かっていた。弛んでるとか言わないでほしい。今回、僕ら結構頑張ったし。僕は魔力が枯渇寸前、フェルトは疲労困憊。予想していたより魔物の数が多かったのが誤算だった。あれで後ろを気にしなくちゃいけなかったり、まともに戦う羽目になっていたら負けてたよ。
それにしても、腕時計の方はまだまだ改良の余地がありそうだなあ。一回使うぐらいならなんとかなるけど、繰り返し使おうとすると魔力を馬鹿みたいに使う。これじゃあ、魔力が高い人にしか使えない装備になりそうだし。効率が上がるように、研究でもしないとな。
「あー、そういえばまだ放置してたんだっけ。好きに座ってくれていいよー。伝わってないかもだけど」
「100パー伝わってねえな」
「それなら君が伝えておくれよ……同じ大陸に住んでたんでしょ?」
「無茶言うな。さして仲がいいわけじゃねえんだぞ……?鬼人族は他の種族との関係なんざほとんど断ってるし、まず喋れねえな」
それは自慢げに言うことじゃない。
「そもそも、旅とかどうして来てたのさ?大陸にいたこともあったんでしょ?」
「そこは適当にやってた。ぼったくられたら、奪い返したまでさ」
「それは男らし過ぎる意見だよ………」
何でもかんでも、力で解決しようとしないでよ。他にやりようはあったでしょうに………
「仕方ない、翻訳機一つ作るよ。意思疎通ができるようになれば、多少は進展があるかもだし」
「飯はー?」
「まだ時間あるだろうし、大丈夫じゃない?作り方は覚えてるし、そこまで時間は掛からないと思うけど」
「わあった、そんじゃしばらく休んでるわ」
そう言ってから、すぐに寝息を立て始めた。いや、ここで寝るのはやめようよ。風邪ひくよ?
まあ、疲れているのはわかる。さっきまで激闘を繰り広げていたのだ。無理に起こすのも悪いだろう。アイテムボックスから毛布を取り出して、フェルトに掛けることにした。
「こっちはこれでいいとして……問題はむこうか」
目を向けたそちらには、こっちを見ている集団がいる。アマゾネスの少女を始めとした、10人ほどの集団。ドワーフが数名、エルフが1人、あとはよくわからない種族。これはフェルトに聞く必要ができただろう。
で、僕を見る目は不審に満ちている。最初のときのように、敵意Max!ってわけではない。でも、話をするのはまだ無理そうかな、といったところ。
「ちょっとごめんよ?」
とはいえ、そんな目を気にしていたら何も始められない。少々強引ではあるが、褐色の少女に近付く。彼女は攻撃されると思ったのか、構えを取る。それを無視して、流れている血を取らせてもらった。今から傷を作るなんて、残酷だと思ったしね。
血を取り終えたら、今度は治療。飲み薬だと何が入っているかわからない、というのはフェルトの話。なので、いきなり飲み薬を渡すのは最悪だろう。
「――――!――――――!?」
怒ったような声も無視。噴射型の回復薬を吹き付け、傷を閉じていく。あまり深い傷はなかったようで、それほど時間を掛ける必要はなかった。
傷を治し終えると、回復薬をアマゾネスの少女に手渡す。僕がやるのは抵抗があるだろうし、自分たちでやらせた方がいいと思ったのだ。
「それは勝手に使ってもらっていいから。何かあったら、あの子に聞いて?たぶん、なんとかなると思うよ?」
疑問符がついてしまうのは、フェルトの適当さを知っているため。正直早く翻訳機を作って、僕が話した方が早そうという考えまでも頭に過るぐらいだし。
「それじゃあ、しばらく寛いでて。僕は作業室にいるから」
さっさと食堂を出て、作業室へと急行。早めに作らないとね。




