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4話

昨日投稿できなかったので、2話連続で投稿します。

 「どうすんだ、これ?」


 フェルトが差しているのはこの集団を助けるか、ということ。この集団はなんとなくわかる。人族ではないということが。

 最後尾で集団を守る少女は傷ついている。きっと、この逃走劇を続けてきたからだろう。少しずつではあるが、確実に体力を消耗している。傷も多い。もし崩れてしまえば、すぐに致命傷を負ってしまうであろうことは想像だに易い。

 一方、集団の方へと目を向ける。そちらには背の低い筋肉質な男の人や、綺麗な顔立ちをした長耳の女性がいる。これまでの知識からすると、ドワーフとエルフで間違いないだろう。つまりは、だ。


 「この褐色の女の子さ。アマゾネス、って種族なの?」

 「ああ、そうだ。お前とは違う種族だな」


 予想通りの返事が戻ってくる。なるほど、やっぱりか。人族と他種族との仲が悪いのに、一緒に行動するわけないよね。だとすれば、見た目は人族に似ていたとしても、別の種族っていう方が納得がいく。

 さて、どうするか。という話だったね。


 「フェルト、一つ聞いていい?」

 「なんだ?」


 こちらに向ける瞳は僕を真っ直ぐに見ていた。恐らく僕の言葉一つで、この子はすべてを決める。これからもいてくれるか、ここで見限るか。


 「あの集団。君ならやれるかい?」

 「……ってーと?」

 「助けることは大前提さ。あとは、君がどう動くかだよ。あの魔物を地上に降りて殺すか、もしくは僕が引き寄せている間にあの集団を収容してもらうか、っていうね?」

 「……お前、馬鹿か?」


 素のトーンで罵倒された。ひどい。真面目な話してるのに。


 「やれるに決まってんだろ?あいつらはオレが倒す。お前は助けるなり何なりすればいいさ」

 「……わかった。それじゃあ、『ケツァルコアトル』を援護に回すよ。僕はあの子たちを助けて来る」

 「別に、構わなくはあるんだがな……まあいいさ。それより、こっちからも質問だ」

 「ん?」


 準備しようとして指令室を出かけたところを、呼び止められた。


 「なんですぐに決めた?」

 「ああ、そのこと?そんなの理由は簡単さ」


 スクリーンに映った少女の姿が目に入る。彼女は今も必死に戦っていた。


 「誰かを必死に守ろうとしてるじゃない。そんな子を助けるのに、理由は要らないさ」


※               ※               ※

 「てか、こんなもんまであったのか!?」

 「そりゃあ、何があるかわからないからね!非常時に備えて、緊急脱出のために作っておくさ!」


 小型の龍の形を模した機体。これは地上との連絡用、そして最悪の事態に備えて搭載した装備だった。内部はそこまで広くはないものの、何人かが乗れるスペースがある。

 『龍機兵(ドラグーン)』。『ケツァルコアトル』内に搭載された、小型戦闘機である。用途は多岐に渡り、今回のように移動するためだけであったり、哨戒のためであったり、はたまた戦力として使うためだったりする。


 「作戦としてはフェルトが足止め。僕がその間にあの子たちを『ケツァルコアトル』まで運ぶ、ってことになるかな」

 「作戦らしい作戦でもねーけどな」

 「うん、自分でも思ってた。準備は大丈夫?」

 「ああ、いつでも行けるぜ?」

 「それじゃ……行くよ!」


 扉が開く。それと同時に、一切の躊躇なくフェルトが跳んだ。飛び降りた先にはちょうど魔物がいたらしく、踏み潰される。いや、少し違うか。恐らく、魔物がいるところ目掛けて跳んだのだろう。不意を突いて、1匹仕留めることができるのだから。

 フェルトに相対する魔物は、狼のような魔物。ような、という冠がつくのは、その大きさが地球のものよりもずっと大きいため。4、5mはあるんじゃないだろうか。というか、こっちの魔物は主にでかいやつしかいないのかい?異世界に来てから、身体が大きくなったような魔物にしか遭っていないよ?


 「いや、今はそれどころじゃないか」


 褐色の少女が一番ひどいのだが、怪我をしているのは彼女だけじゃない。他の子たちだって、あちこちに擦り傷や痣を作っていた。更に言うなら、全体的に結構やせ細っている。ろくなものを食べられてもいないのだろう。

 『龍機兵』を止めて、すぐに降りる。フェルトが強いとはいえ、無理に戦いを続けさせるのも酷だ。早いところ、『ケツァルコアトル』まで連れて行かないと。


 「ちょっといい?いきなりのことで戸惑うとは思うけど、僕は敵じゃない。ここで話をするのも危ないし、僕らの拠点まで来てくれるかな?」


 笑顔を浮かべて対応したところ、一団が向ける表情は様々だった。敵意をむき出しにしてる人。怯えたような人。戸惑っている様子の人。それぞれではあったものの、好意的なものは一つとしてない。

 それもそうか。僕の見た目は人族。今まで散々自分たちを見下してきた相手を、急に信用しろと言われても無理があるのだ。


 「信用はできないかもしれない。勿論、何かあったら抵抗してくれても構わないよ。武器を外してくれとも言わない。だから、どうかついて来てくれないかな?」


 頭を下げる。僕に役目を任せて、今も戦ってくれている子がいるんだ。頭を下げるぐらいでついて来てくれるなら、安いものだった。


 「―――――――?」

 「……………………へ?」


 褐色の少女が発した言葉が理解できず、もう一度聞き返す。あれ、凄く嫌な予感がするな?気のせいかな?


 「ふぇ、フェルト!一つ聞いていい!?」

 「どうした!なんか問題でもあったのか!?」


 怒鳴るような声で返事があった。そこに必死な様子はないので、余裕ではあるようだ。


 「あのさ!鬼人族とアマゾネスって、使う言語違うの!?」

 「そりゃ当たり前だろ!つーか、種族違えば、使う言語は基本ちげえよ!」

 「嘘でしょ、それ!?」


 つまりは、今僕が使っている魔道具じゃ、翻訳できないってこと!?完全に予想外だったんだけど!?


 「ごめん、フェルト!作戦変更!魔物を殲滅した方が早そう!」

 「ハッ、了解だ!オレにはそっちの方が性に合うね!」

 「後ろは気にしないで、こっちでなんとかする!」

 「おうよ!」


 ……神様、本当に言語翻訳ぐらいは欲しかったよ。

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