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3話

 「シャワールームがさっきのところ。でも、フェルトにとってはこっちの方が大事かな?」

 「は?どーゆーことだ?」


 先ほどのシャワールームが胴体の中央部に位置しているとすれば、こちらは頭部の近くに位置している。中に入れば、たくさんの机と椅子が置いてあった。部屋の奥へと目を向ければ、いくつかの調理器具が置いてある。


 「ああ、食堂ってことか!そうだな、こりゃ大事だぜ」


 否定しない辺り、もう完全に胃袋を掴まれてるなあ。いや、美味しいって言ってくれるのは嬉しいよ?けど、それでいいのかとも思っちゃうよねえ。

 早速今日の献立を聞いてくる彼女をいなしながら、また説明に戻る。食事は案内が終わってからだね。とは言っても、紹介するところはあと2つ程度なのだけど。いや、正確にはまだいくつかあるのだけど、興味があるだろうな、というところは2つぐらいなのだ。


 「このフロアにもう二つぐらい、君が使いそうなところがあってね。あとは必要になったり、興味が湧いたりしたら紹介するよ」

 「他のやつって何があるんだ?」

 「えーと、図書室でしょ?音楽室、錬成室、工房に保管室に………」

 「あ、いいわ。必要になったら言うさ」

 「はいはい」


 ま、こうなるだろうと思ってた。フェルトの頭にあるのなんて、食べ物のことと戦いのこと、加えてお婿さんになれる条件の人ぐらいだろうし。勉強とか嫌いそうだったもの。


 「ところで、よく使うだろうってとこはどこなんだ?さっきみたいなもんではねえんだろ?」

 「そうだよ?見てもらった方が早いけど……と、着いたよ」


 やって来たのは、胴体中央部の更に後ろ。中央部と最後部のちょうど中間辺りに位置する部屋だ。

 中に入ると、人工物内には普通存在しないようなものが多量に存在していた。フェルトにとってもこれは流石に予想外だったのか、声を失った様子である。


 「休憩室というか、憩いの場というか。正式な名前はないんだよね。見ての通り、寛ぐための部屋さ」


 その部屋には緑が広がっていた。壁の色が緑、というわけではない。木々や植物がきちんと生い茂っているのだ。自然と同じように。

 とはいえ、元いた森のように先が見えなくなるほどではない。例えるなら、公園のような感じ。遊具の代わりに木々が植えられ、ベンチやテーブルが置いてある。


 「……どうなってんだ、これ?」

 「なんだか、君がいう台詞のほとんどがそれのような気がするねえ。まあ、ここだけ容量を変化させてるからね。土を入れられて、植物を植える余裕もしっかりあるってことさ」

 「……無茶苦茶だ」

 「よく言われる」


 笑いながら、そう答えた。そう、僕はいつも無茶をする。だから、無茶苦茶だとよく言われるのだ。


 「ここならいくらか飲み物もあるし、涼しいから休むのにもいいと思う。好きに使ってくれて大丈夫だよ。常識的な範疇で、って冠はつくけどさ」

 「お前はオレを何だと思ってるんだ………?」

 「念押しってやつだよ。一応ね?」

 「……まあ、いいさ。飲み物って言ってたな?あれはどこから取ってくるんだ?」


 ため息をついて、話を終わらせてくれた。やっぱりサバサバしてるところあるよねえ。女の子にモテそうなタイプだよ。


 「あそこに箱みたいなものがあるでしょ?」


 僕が指差すのは馴染みの深い。されど、この世界からすれば異物でしかないものだった。


 「あるな。あれは?」

 「自動販売機。あそこで魔力を流せば、好きな飲み物が貰えるよ。やってみる方が早いかな?」


 異世界に存在するはずのないそれに近付いて、手のマークがあるところへと手を当てる。欲しいもののボタンを押せば、魔力が抜かれるような感覚が襲った。

 ゴトン、という音で取り出し口に手を入れる。選んだのは緑茶と紅茶。紅茶の方は甘いやつだ。


 「ま、こんな感じだよ。好きな方取って」


 フェルトは説明を受けて、紅茶の方を選んだ。甘いものも好きなようだ。


 「ここはこんなものかな。あとは説明が必要そうなのは最後部。たぶん、フェルトが一番使うんじゃないかな?」

 「そうか?」

 「そうだよ、たぶん。断言はできないけど」


 飲み物を口に含みながらの移動。慣れてきたからか、先程よりは早く辿り着くことができた。


 「ここは……おお!確かに使うかもな!」


 興奮したような声。今度の部屋はかなり気に入ったよう。シンプルだけど、充実しているからね。

 中に並べられたのは、ダンベルやベンチプレス等々。果てはシミュレータールームまである。


 「トレーニングルーム。体を動かしたいときだったり、普段の訓練だったりはここでやってね。この部屋なら頑丈だし、ちょっとやそっとじゃ壊れないからさ」

 「なるほどな、了解だ。とりあえず、聞きたいことがあるんだが………」

 「わかってる。使い方でしょ?一つ一つ教えてくから、興味のあるやつを指していって?」


 その日は彼女に振り回されたのだが、案外悪くはないと思える1日なのだった。


※               ※               ※

 そんな感じで、旅を順調に続けていた次の日のことだった。島を出てから半日、人族大陸の上空へと着くことができた。そこまでは予定通りだったと言えよう。予想よりも早くは着いたが、それはある程度予想できていたことだったのだし。

 だが。その後のことが予想外だったのだ。


 「警報!?」


 ビーッ!ビーッ!騒々しい音が鳴り響き、異常があったことを知らせている。それまでやっていたことを一時中断し、僕は指令室まで急いだ。


 「『ケツァルコアトル』、何があったの?報告を」


 部屋が近かったこともあり、指令室にはすぐに到着した。僕の声ですぐに捉えた映像を出してくれる。


 「これは………!」

 「わりい、遅れた!何があった?」


 少し遅れてだが、フェルトが入って来る。すぐに目の前に映された映像に目が行ったようだったが。


 『生命反応を感知。魔物に追われているものだと思われます』


 そこには、傷を負った褐色の少女たちがいた。

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