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1話

 「……すっげえな、これお前のもんなのか?」

 「うん?うーん、そうとも言えるし、そうとは言えないかな?」

 「どういう意味だよ?」

 「ま、見限られたら終わりってことさ」


 肩を竦め、案内を再開する。『ケツァルコアトル』の出入り口は頭部の脇。人間でいう、首の部分にスライド式の扉がついている。口から入れるようにしてもよかったのだけど、そうすると抵抗を覚える人もいるかな、と思ってやめておいた。今思えば、その判断は正解だったのだろう。魔物に襲われる世の中では、口から入る=飲み込まれる。つまり、死んでしまうのでは?という思いをしてしまう人も出てしまうだろうから。

 中に入ると、機械仕掛けであることを認識させられる。金属でできた通路が伸びており、頭部へと向かう方は階段に。尾に向かう方は長い通路となっていた。


 「扉がついてっけど、これは?」

 「個室だよ。ベッドと物置、タンスに椅子と机、トイレがついてる。快適に暮らせるぐらいの物品は揃ってるから安心してよ」

 「ん?シャワーとかはねえのか?」

 「あ、シャワールームは別にあるんだ。とりあえず荷物が邪魔だろうから、好きな個室に荷物を置いてくるといいよ」


 適当に返事をして、フェルトは個室の一つに入って行った。動きが早いなあ。こういうものを見ると、興奮するのだろうか?気に入ってくれたなら何よりだ。

 『ケツァルコアトル』は移動用要塞(・・)である。軍を相手にしても戦えるという、とんでも兵器なのだ。ちなみに、フェルトに会った森で考えた手段というのがこれ。森ごと焼き尽くせば、なんとかなるんじゃね?と一瞬考えたのだった。結局はやらなくてよかった、ということだったのだけど。被害も馬鹿にならないし、自然破壊してるし、何よりフェルトも一緒に殺してただろうし。


 「僕は……ここでいいか」


 一番扉に近い部屋。そこに荷物を置くことにした。なにせ、役目もあるし。その役目を果たすときに、頭部に近い方が都合がいいんだよね。

 さて、話は戻って。『ケツァルコアトル』の大きさは要塞と言うだけあって、全長が600mを越えている。幅も200mほどあって、かなりの大きさを誇っている。更には内部が3層構造であるので、かなりの人員を保護することもできる。知っている人ならガ〇ダムに登場する、〇ゴス・ギアぐらいの大きさと思ってくれれば想像しやすいと思うよ。


 「置いてきたぞー。で、どうするんだ?」

 「あ、置いてきた?それなら、まずは発進させようか」


 ついて来て、と階段を上る。頭部のみは1層構造なので、階段を上るとそのフロアしかない。まあ、居住区画は胴体部なので、これで十分なんだよね。ここを使うのは、とある条件下のときだけなんだから。

 階段を上った先にあったのは、広い空間。一つだけ椅子が置かれていて、この広い一室を見渡せるようになっている。あるのはその椅子ぐらいで、ひどく殺風景だった。


 「ここは?」

 「指令室。オペレータールーム、って言ってもいいかな。ここで『ケツァルコアトル』に指示を出すんだ。使うのは移動先を設定するときと、戦闘時ぐらいだね」

 「ふーん?それにしちゃあ、何もなくねえか?」

 「そりゃあこの要塞、基本自動運転だもの。戦闘もオートだよ?命令を出したら、その通りに動いてくれるぐらい」


 ちなみに、こうしたのは人に会えなかったとき、一人でも動かせるようにするため。一応マニュアルでも動くようにはしてあるけど、それは例外的な使い方だろう。あくまで自動操縦メインなのだから。

 フェルトは納得していなさそうではあったが、見てもらった方が早そうかな。椅子の肘掛けに手を当てて、魔力を送る。すると、重々しい起動音と共に、周囲の風景が映った。


 「おわっ!」

 「『ケツァルコアトル』起動。目的地は人族大陸。地図をダウンロードさせるから、それに従って移動してくれ」

 『了解』


 驚きの声を上げるフェルト。その反応を少し嬉しく思いながら、移動のために必要な手順を踏んでいく。その時間は大体3分程度で終わった。


 『目的地を人族大陸に設定しました。これより離陸します』

 「え、マジで勝手に動くのか?」

 「そう言ってるじゃない。あ、そろそろ飛ぶみたいよ?」


 高まっていく音と共に、指令室から見える風景がだんだんと変わっていく。離陸するために、先ほどの場所から走っているのだろう。助走をつけてから飛ぶ、というところは一部の鳥や飛行機と変わらないところかもね。


 「おいおいおいおい、これが飛ぶわけねえだろ!海に突っ込むぞ!」

 「あ、そっちを考えてたのか。大丈夫だよ、ちゃんと飛ぶし」

 「つっても、こんな金属の塊がどう浮くってんだ!」

 「そこはほら、魔法だよ?」

 「なんで疑問形なんだあああああああ!」


 フェルトの絶叫を皮切りに、軽い衝撃。地面を蹴った。グングンと地面は離れていき、遂には一定の高度まで到達した。

 横でへたり込む彼女を見て、初めて飛行機に乗る人はこうなるのかな?とか考えていた。確かに、重いものは浮かない、のが普通だしね。


 「これでもう大丈夫。あとは勝手に動いてくれるよ。それじゃあ、ここの設備を教えてくよ」


 フェルトに手を貸して、起き上がるのを手伝う。……まあ、怒って一発殴られたのは仕方なかったのかな?

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