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エピローグ

 で、話は現在へと戻ってくる。目の前で食事を続けるフェルトを見つつ、今後のことを考えているという状態なわけだ。

 海竜はクリスタル製の棺桶に埋葬し、海へと沈めた。黙祷をして、安らかであることを願った。それで終わるはず、だったのだが……そこでは終わらなかった。何故か、僕のところへとあるものが現れた。というか、飛んで来た。それは今も僕の胸のところに下げられている。


 「……これはあの子なりの感謝、なのかな?」


 海の色をした綺麗な宝石。フェルトに聞くと、これは竜珠と呼ばれる代物なのだとか。魔石よりも貴重なもので、竜の心臓とも言えるものなのだそう。莫大な魔力を溜め込んでおり、魔道具にすれば一級品のものが作れるようだ。

 確かに、これを使えばいいものが作れる。それだけの自負はあるし、その凄さもわかる。

 けれど、まだどうにかしよう。手を加えようとは思えない。これはあの海竜の気持ちなのだ。下手なものにはできないという思いがある。だから、本当に必要となったとき。作りたい物のために、力を貸してもらおうと思う。


 「そういや、そろそろ出るっつー話だよな?飯のことはオレが食料を取るとして、水をどうするかだ。あとは移動手段だな。船も必要だろ」

 「あ、そのことなんだけど。大陸まで船でどれぐらい掛かりそう?」

 「ここからなら2、3日だな。それぐらいの水と食料は必要ってわけ。まあ、食料の方はどうにかできるみたいだがな」

 「まあね」


 海竜を倒してから、丸2週間。畑野菜の方は順調に収穫ができるようになり、それなりに貯蓄ができている。大豆もいくらかあるので、肉類が底を尽いてもタンパク質不足になることはないと思う。

 肉類にしたって、フェルトが取って来てくれたものを保存している。2、3日程度なら余裕で保つはずだし。


 「移動手段については大丈夫。もう用意してるよ」

 「へええ、それはいいもんなんだろうな?下手なもんなら、あのテントの方がマシだぜ?」


 彼女が言っているのは、現在ベースとしているテントのことだろう。これも正式名称はないのだが、内部拡張をしているのでホテル並みの快適さなのだ。作っておいて正解だった、と思う魔道具の一つである。


 「それも大丈夫。きっと気に入ってくれるさ。ひょっとしたら、あのテントよりもね」

 「そうかい。それなら期待して待ってるとするさ」


 僕の笑みに、フェルトはいたずらっ子のような笑みで答えた。それを見て、不思議な感覚に陥ったのはここだけの話。


※               ※               ※

 海竜が倒れた砂浜に、二人で立つ。天気は良好、雲一つない快晴だ。絶好の旅日和。門出にはとてもいい天候だね、と一人思った。


 「で、その移動手段とやらは?どこにもねえみたいだが」

 「ん?ここにしまってあるのさ」

 「……前々から思ってたが、お前のその鞄はどうなってるんだ………?」

 「そこは禁則事項ということで。魔道具化してあるとだけ言わせてもらうよ」


 うんうん、言いたい台詞を言えて満足ですよ。面白いよね、ハ〇ヒ。読み始めてからはやめられない、止まらないでしたよ。あとはいくらかあるけど、死ぬまでに全部言えたらいいかなあ。

 アイテムボックスから取り出すのは、前回と似たような代物。ただし、今回は鍛冶場ではない。今回は『携帯型格納庫』だ。


 「……ねえ、君は空を見上げたことはあるかい?空を飛んでみたいと思ったことは?」


 語り掛けたのは胸の前で揺れる竜珠。色は少しだけ点滅したように思える。それは僕に答えようとしているように思えた。

 魔道具に魔力を流し、準備は完了。いつでも呼ぶことはできる。


 「フェルト、こっちに来て。そこは危ないからね」

 「あん?なんか来るのか?」

 「そう。でも、敵じゃないから安心してよ。これが僕たちの移動手段さ」


 手にした小さな箱を空へと掲げ、その名を叫ぶ。今こそ、力を貸してもらうために。


 「さあ、出番だよ!おいで、No2!『ケツァルコアトル』!」


 数秒ほどの静寂。その後、凄まじい轟音が鳴り響く。砂も降りかかってくるけど、それは『穢れを祓う聖盾よ(アイギス)』で防げた。そう設定しておいたし。勿論フェルトも効果範囲内にいたから、無事だったよ。

 砂煙の中から姿を現したのは………


 「な、なんだこりゃ!?」

 「これが移動手段だよ。船よりもずっと安全で、ずっと快適な、ね?」


 細長い姿はまるで蛇のよう。背中から翼が生えていなければ、ただの蛇と言われても仕方のないようなシルエット。胴体は青みを帯びた緑色に塗装してあり、背中より生えた翼は薄く水色に染まっていた。腹を見れば、そこだけは色が白く抜け落ちていた。

 隣に目を向けると、呆けた様子のフェルトがいた。ここまで驚いてくれれば、頑張った甲斐はあったかな?いや、元々移動手段として使うつもりだったのだから、僕が満足できればそれだけでいいのだけども。


 「………え、これで移動すんのか?」

 「そうだよ?空を飛んでね」

 「飛ぶ?これが?」

 「うん」

 「冗談だろ?」

 「冗談じゃないよ?」


 本当に、この『ケツァルコアトル』は空を飛ぶ。というか、この子は対空戦特化をコンセプトとしているので、むしろ空こそが真価を発揮する場所だ。武装も空を飛ぶ相手、もしくは上空からの制圧戦を主としているので、それに関係した物しか積んでいない。

 ん?それじゃあ、陸戦や水中戦はどうするの、って?そこはこれからのお楽しみというやつさ。だって、初めからすべてを教えちゃつまらないでしょ?つまりはそういうこと。


 「さ、乗って。中には個室があるから、戦闘になるまではゆっくりできるよ」

 「そ、そうか……まあ、いいや。安全ではあるんだろ?」

 「そりゃあ勿論。なんたって、戦士の魔法や物理攻撃喰らっても傷一つつかないからね」

 「戦士?」

 「ああ、気にしないで。耐久性は保証されてる、って考えてくれればいいよ」


 実際はとんでもない代物ということなのだが、それは知らなくてもいいことだと思う。戦士のことや師匠のことを知らないんだし。

 ちなみに、師匠の全力なら傷がつく。というか、切断される。どうしても傷つけたいなら、師匠クラスを連れて来いということさ。


 「ふう。じゃあ、行こうか!」


 最初の島を後にして、僕たちは旅だった。向かうのは人族大陸。ここから世界を救うための戦いが始まった。

 この戦いの結末を知るものはまだ誰一人として存在しない………

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