17話
総合評価がまた増えていました。巧がようやく主人公らしいところを見せたからかな?ブックマーク登録してくれた方、評価点をつけてくれた方、本当にありがとうございます。これからも見守っていただけると幸いです。
「世界のこと、って……どういう意味だよ?」
「そのままの意味さ。世界の情勢どころか、外の世界について知る機会がなかった。ううん、それはちょっと違うか。知ろうとしなかったんだ。だから、知りたいと思う。今聞けるのは君だけなんだ。話してくれると嬉しい」
真っ直ぐに目を見て、願う。この世界に来て、最も欲しかったもの。自分のすべきことを知るということ。話ができるようになった今だからこそ、聞きたいと思った。
「………何も知らねえのか?」
「うん。だから、お願い」
フェルトは呆れた様子だった。それだけ大きなことがあったのだろう。そりゃあ、神様たちが急いで送り込むぐらいだ。なんら不思議ではない。知ったかぶりでボロを出しても困るし、それ以前にすべきことすらわからないんじゃ身動きもできない。ここは不自然に思われることを承知で聞くしかなかった。
「………はあ。まあ、いい。さっき助けられたのも、昨日助けられたのも事実だ。話してやんよ」
「ありがとう、フェルト」
「礼はいいっての。なんだか変な気分になるんだよ」
彼女は嫌そうな目を向けるけど、いいことをしてくれたのだから、礼を言うのは当然ではないんだろうか。疑問が湧き出る。
「で、何から聞きてえんだよ?答えられる範囲でなら答えてやる」
「それじゃあ、世界のことからで。どんな感じになってるの?地図にしてみてほしいのだけど」
「ああ、そこからかよ。ま、そんなら知ってるからいいか」
フェルトは深々とため息をついて、話し始めた。
「まず、世界にゃ5つの大陸がある。正式名称は他にあるが、面倒だ。俗称でいいな?」
「うん、それでも平気だよ」
「そうかい。その5つが人族大陸、魔族大陸、多種族大陸、獣人大陸、暗黒大陸だ。名称通り、大陸についてる種族が対応した大陸に住んでいる。基本的にはな」
「基本的には?」
不自然に感じたので聞き返す。彼女は頷いて、説明を続けた。
「おかしなのが一つあったろ?」
「あー、そういえば。暗黒大陸のことだよね?」
「そうだ。あそこは魔物……さっき戦った、どの種族にも属さない化け物共だ。その形は多岐に渡るが、特徴としては殺せば魔石が出てくる。それが目印だな」
「そうなの?見た目でわかったりはしないんだ?」
「そりゃな。見た目が完全に人外なやつらもいるが、ほぼオレらと変わらねえやつもいる。魔力に違和感を感じるぐらいでしかわからんのさ……にしてもうめえな、これ」
フェルトが齧っているのは、昨日採れたジャガイモで作ったじゃがバター……モドキ。バターが用意できなかったので、マーガリンで代用しちゃったんだ。バターは神界でも見つけられなかったし。むう、無念です。まあ、気に入ってくれたならよかったけど。
まだあるから、食べながらでいいよ、と差し出す。彼女は美味しいものを食べられてご満悦の様子。食べ物の力は偉大です。
「で、暗黒大陸が危険ゾーンなわけだ?」
「そだな。あそこには文明を滅ぼすような魔物がうじゃうじゃいる。入ったら最後、命はないだろうな」
「そっか」
「だが、それも1年前までだ。今はどこにいたって危険だ。せいぜいが島に逃げ込むぐらいだろうな」
しばし、静寂が訪れる。僕は驚きで、フェルトは食事で。声を出せなかったのだ。
「それまたどうして?」
「んー、まあ1から説明するのはめんどくせえが……理由も知っときたいか?」
「そりゃ知りたいよ」
「あっそ」
手にしたジャガイモを食べ切って、次のものに手を伸ばす。……よく食べるね。
「種族間はぶっちゃけ言って、仲が悪い。特に、どの種族も人族との相性は最悪だ。やつらは他種族を平然と見下して、殺す、遊ぶ、奴隷にする、犯すだのしてくるからな」
「そうなんだ………」
「その他も、別にいいわけじゃねえ。多種族大陸に住んでるやつらだって、表面上には出さねえだけで不干渉を貫いてるしな」
となると、種族間での仲がいいわけじゃないと。人族がひどいことをしてて、他の種族同士も表立って戦っていないだけで、冷戦状態になってると。……何この恐ろしい世界。
「人族との仲は特に魔族がひどくてな。暇さえありゃあドンパチやってるわけだ。そんなわけだから、国力は一定の時期に大きく疲弊する。それが災厄の始まりだった」
「災厄?」
物騒な言葉が聞こえたので、話に横槍を入れてしまう。むこうも気にはしていないのか、説明してくれる。
「……人族と魔族での大きな戦争中の話だ。つっても、1年前の話だから最近なんだがな。疲弊していたところを突如として魔物が強襲。両大陸は壊滅的な被害を受けた。その勢いは止まらず、多種族大陸、獣人大陸にまで侵攻は進んだ」
「それって、まさか………?」
「ああ。人族大陸はもう駄目だ。人族は殺されるか、奴隷になるか。あとは、多少逃げ延びてるやつらもいるだろうが……数は少なそうだな。魔族の方も人族よりはマシだが、似たような状況さ。人族、魔族の国家は滅んだと言っていいだろうな」
「そう………」
まさか、ここまでひどかったとは。ということは、僕のやるべきことは人族と魔族を助けること、なのだろうか。危機に瀕している種族はその二つだろうし……いや、待てよ?
「今はどこにいても危険、って言ったよね?」
「ああ、それがどうかしたか?」
「それってまさか、その多種族大陸と獣人大陸も………?」
「……へえ、鋭いじゃねえか。そのまさかだよ」
ドキリ。心臓が跳ね上がる音が聞こえた気がする。
「今、この世界じゃどこにいたって危険だ。なにせ、もう魔物に支配されているからな」




