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14話

 「採れた採れた、これだけあればしばらくは困らずに済むよね」


 籠の中に入れられたのは、たくさんのジャガイモと玉ねぎ、それなりの量の人参、サツマイモだった。結局、自分一人ではどうにもできないという判断を下し、早々に師匠を頼ることにしたのだ。師匠もすぐに頼るのはどうなのですか、と言いつつもきちんと調べてくれる辺り、弟子には甘いのかもしれない。

 あ、そういえば種の話をしてなかったね。種に関しては、餞別ということでミーミルさんから貰っていた。なんでも『万能の種』というものらしく、どういう植物が生えてほしいかということをイメージしながら植えると、その植物を生やすことができるというチートアイテムであった。これで栽培自体のハードルはある程度下がったのだ。

 ただし、あくまで初回にしか使えない、イメージできない植物、実在しない植物は生やせないというデメリットもある。ま、これに関しては仕方ないとしか言えないね。そこまで便利なものではないし。


 「それはさておき、これだけあるならいろんな料理ができるよね」


 お米がないからカレーは厳しいかもしれないけど、シチューや肉じゃがぐらいならできそう。調味料だけはたくさんあるし、調理器具もちゃんとあるし、レシピも持って来てるし。ようやく料理らしい料理が出せるってものだね。

 次は何を栽培してみようか。大根はまだ育ててないし、よく使うから候補に挙がるよね。でも、大豆も用途はたくさんあるし、これも栽培したいなあ。あ、あとやっぱり食べたくなるから、お米も作りたい。大変ではあるだろうけど、お試しに作った野菜は上手くいったから育ててみたい。


 「うーん、夢が広がる……と、その前に」


 土に肥料を振りまいて、しばらく放置。この作業を怠ると、次の作物は作れないからね。魔道具の影響で。

 この魔道具にはまだ名前はない。そのうち付けようとは思っているけど、今は放置かな。効果はこのテント内で栽培する植物の成長を早めること、そして栄養の吸収、合成の力を強くすること。この二つがあるので、栄養価の低い野菜にはならない。むしろ、地球で採れるものより高いんじゃないかな?たっぷりと栄養を蓄えているわけだし。

 問題点は植物の成長が止まった後には、土が死んでしまうこと。栄養を吸収され過ぎて、栄養がまったく残っていない死の土地となってしまうのだ。この状態では次の作物を植えようとしても、育たないのだから意味はない。


 「そのために、この肥料を撒くわけなのです」


 今僕が撒いたのは特製の肥料。回復薬を応用して作った肥料で、土地に栄養を与えてもう一度復活させる。これでまた作れるようになるわけだ。

 勿論、撒いてから1日置かないと回復はしない。けど、土が生き返るだけでも十分だと思う。そこいらに捨てれば、生態系に影響を与えそうだし。主に悪い方を。


 「……んー、今はまだ焦らなくてもいいかな?」


 どうせ土を回復させるのに1日は掛かるのだ。その間に次育てたいものを考えるのがいいだろう。今日はまだ時間があることだし。

 野菜を専用の袋(魔道具)に入れて、テントの中に戻る。あの女の子はまだ帰っていない様子だった。今日は少し遅いね。いつもなら帰ってるはずなんだけど。


 「……余計かもしれないけど、何かあったら大変だし」


 僕は装備を整えて、テントから出た。さてと、何もなければいいのだけど。


※               ※               ※

 「悪い予感なら当たらなくてもよかったんだけどねえ………」


 ため息をつきつつ、テントまでの道を急ぐ。その理由は後ろに背負っている女の子。……彼女の大きな胸がダイレクトに感じるし、体温やら柔らかさやらとにかく色々とわかっちゃうのだけど無視。無視しないと、怒られそう。

 勘違いしないように言っておくと、女の子には意識がある。今も叫んで引き返そうとしている。よっぽど悔しかったんだろうか。でも、疲れもあったのだし仕方がないと思うけどね。


 「わかったから。今は戻ることに集中しよう?」


 無意味だとはわかっていても、呼び掛けることはやめない。なにせ性分なものでね。これもまた仕方ないと割り切ってもらおう。

 もう恒例となりつつあるけど、魔道具で彼女の居場所を割り出し、すぐに向かったのだ。動いていない様子だったので、何かあったのだろうか?と考えたんだ。

 結果は御覧の通り。深入りし過ぎた女の子は、怪我を負ってしまったらしい。まだまだ戦えそうではあったものの、怪我人を放っておくにもいかない。それが女の子であるなら、尚更だ。敵の数が多かったし、目くらましをした後にとっとと逃げた。彼女はそれが気に入らず、さっきから叫んでいるというわけである。


 「もー、ほんとに頑固だなあ……もしかして負けず嫌い?いや、こんだけ叫んでるんだし、そうに決まってるか………」


 思わずため息が漏れてしまう。悔しいのはわかるけど、それで死んじゃったら目も当てられない。そもそも状況を見るに、実力不足で負けたんじゃないみたいだし………


 「血が出てるんだし、あんまり無茶しなくても、ねえ………」


 足からだらだらと血が流れ落ちている。僕としては早めに治したいところなんだけど、今も追っ手がついて来ているし、あの場所に着くまでは放置するしかなさそうだ。早く止めないと、それで追って来ちゃうってことも考えられるんだけども。


 「……待てよ?血?」


 ふと脳裏を過ったのは師匠の言葉。勉強をするときに、彼女は何と言っていただろう。確か………


 「……そうか!それだ!こうしちゃいられない、早く戻らないと!」

 「――――!?――――――――――!?」


 後ろで驚きの声を上げる彼女を無視して、護符を更に使用。凄まじい速度でテントへと駆けていくのだった。

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