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13話

 食事を終えた女の子は(かなりの数が合ったはずなのに、全部食べ切ったのだ)意気揚々と出掛けていった。どこに行くのかまでは言ってなかったけど、あの様子だと戻ってくるみたいだね。うーむ、食べ物の力って凄まじい。

 皿洗いを終えた僕は、早速次の作業に移る。言語の件もあるけど、散々悩んだのに何もいい案が出ない。こういうときはどれだけ考えたところで、いい案なんて出やしないのだ。それなら諦めて他のことをする方がいい。案外、他のことをしていると唐突に思いつくことだってあり得るのだし。


 「ということで、農場を作ることにしましょー」


 いくつか鍬と肥料を持って、準備は完了。本格的な畑の作り方はわからないので、簡単なものだけ作るとしよう。当面は野菜、それも根菜や芋類を作るのがいいだろうか?サツマイモなら小学生の頃に作った記憶がぼんやりとあるしね。

 一方、果実は大変だと思う。木になるまでどれだけ時間が掛かるかわからない。その上、農家の人たちが作るのに四苦八苦している、というニュースもよく聞くのだ。素人の中の素人である僕がいきなり手を出していい代物じゃなさそうだ。慣れてきたら作りたいんだけどね。


 「んー、サツマイモとジャガイモは育てたいかな?サツマイモはそこまで難しそうじゃないし、ジャガイモはあれば便利だし」


 特に、ジャガイモは欲しいと思うのだ。デンプンが多く含まれているので、主食の代わりとなる。料理のレパートリーも増えるだろう。普通にふかして塩を振ってもいいし、じゃがバターやフライドポテトにもなる。それ以外にもカレーやシチュー、肉じゃがと、あれば使う機会は多そうだ。

 サツマイモは……毎日食べるのは飽きそうだけど、元が甘いからデザート代わりにはいいと思う。焼き芋とかスイートポテトぐらいなら作れるしね。嗜好品としていくつか育てておくのはアリかな?


 「他には……人参と玉ねぎ?が欲しいかも。あとは大根なんかがあれば………」


 ただ、野菜の栽培については何も事前情報がないからねえ。失敗する確率が高い。それに、多少なりとはいえ、収穫するまでには期間がある。これをどうにかしなければいけないだろう。

 となると、やはり魔道具の出番だろうか。収穫する期間を縮める効果。土の中の栄養素を増やすだけでは意味がないので、植物の成長を早めることが必要。でも、ただ早めるだけだと栄養素を吸収できず、栄養価の低い野菜になってしまいそうだ。


 「植物の成長を助ける効果……それだけじゃなくて、周囲からの栄養素の供給を増やす効果………あれ、植物って光合成で栄養貯蓄するんだっけ?だとすると、そこも考えなきゃいけないか………」


 農場なら壊しに行くような使い方はまずしない。つまり、今回は魔法陣式が一番いいだろう。素材の節約になるし、簡易的だ。それだけ畑を作る時間に費やせるということでもある。早く野菜が欲しいので、魔法陣式を選択することは当然と言えるだろう。


 「とりあえず、作っていきますかー」


 ペンを片手に、魔道具製作に取り掛かる。異世界生活2日目のことだった。


※               ※               ※

 カチャカチャ。食器同士が当たる音が聞こえて来る。洗い物をしているのだから当たり前か。今日もまたよく食べるようで、あの女の子の胃袋は通常の人とはまるで違うってことを認識せざるを得なかった。今日だけでも厚切りステーキを30皿以上食べてるからね。凄まじいよ。

 けど、料理をしている甲斐はあった。あの女の子は意思疎通をしようとするようになってくれた。ジェスチャーを交えながらであれば、簡単なことぐらいならわかる。これを食べたいとか、どこに行くの?とか、これは食べられる?とか。少なくとも、出会ったときよりは前進できたと感じられる。


 「ただ、1週間と少し経った今でも、現状把握ができてないんだよねえ………」


 異世界に来てから、早8日。この世界の情報が得られない上に、ここがどこなのかもわからない。異なる言語をどう通じるようにするかも目処が立っていないので、頭が痛くなってきている今日この頃なのである。

 だからと言って、何も進歩していないかというとそういうわけでもなく。亀の歩行速度並みではあるが、進められるところは進めている。


 まず第一は先ほども言った通り、あの女の子との関係。険悪ムードだったあのときの雰囲気はもうどこにもなく、ご近所さん程度には信用されたのだと思う。僕の分の食材も取って来てくれていることから、それなりに気に入ってもいるのだろうともわかる。これは大きな進歩なのだろう。


 次に、この森の危険度。結論から言えば、かなりの危険地域だったらしい。森の中を徘徊するモンスター1体1体がかなりの強さなのに加えて、遭遇する確率が非常に高い。いちいち相手にしていれば、すぐに体力が尽きることは明白だった。異世界召喚の初日に、さっさと逃げていたのは間違いではなかったのだろう。


 そして、あの子の強さ。こんな森の中で生活しているというのに、物ともしないといった様子で帰って来るのだ。余裕たっぷりである。しかも、戦果はきっちり持って帰って来るのだから、どれだけ強いのかはわかるだろう。僕と戦ったときも、手加減をされていたのかもしれなかった。……正直、助かったと安堵している。


 最後に………


 「お、収穫できるっぽい。これで十分かな?」


 洗い物を終えた僕は外に出る。もう一つ新しく設置したテントの中へと入れば、緑が広がっている。そう、農場である。

 農場は言語の翻訳と比べて難易度が低かったため、すぐにどうにかすることができた。野菜もこの通り、1週間でできるようになっている。問題はあるが、概ね成功と言ってもいいだろう。


 「よーし、じゃあ収穫しちゃいましょうかねー」


 ハサミと籠を持って、農場の中を移動する。上手くできていればいいのだけど。

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