4話
ブックマークをしていただいた方がいたようで、ようやく総合評価が2桁に届きました。本当にありがとうございます。
昨日は更新をど忘れしていたので、今日は2話連続投稿します。
ブンッ!普通、金棒を振ったときにはそんな感じの音が鳴るんじゃないかと思う。少なくともバットを振るとそんな感じだし、イメージとしてはそんなものなのだから。
けど、今追いかけて来る子の音は違う。ミサイルか何かが通り過ぎて行ったような音が聞こえて来る。一拍遅れて、着弾したかのようにドゴッ!とか音が出る辺り、ほんと何なんだろうね。
まあ、あの子の意識を落とすか、拘束するかをすればいいのだけど……なんで怒っているのかわからないのに、そういうことをしたらさらに怒りを手助けすることにならないかな。現状、頼れそうな人がこの子しかいない今では、あんまり心証を悪くしたくないのだけど。
「とはいえ、そうも言ってられないか、と!」
右に大きく跳ぶ。衝撃波が僕の真横を通り過ぎて行った。進んでいく衝撃波は木に当たり、メキメキという音を立てて、またも数本倒れていった。
追いかけられてから逃亡を続けること10回以上。その衝撃を回避し続けているけど、いつまで続けられるかわからない。大体、むこうは棍棒を振るうだけでいいのに、こっちは全力で避けなければいけないのである。下手に体力を温蔵しようとすれば、すぐに打ち込まれる。あれだけの質量を持った武器だ。当たるどころか掠っただけでも大ダメージになる。そして、体力はこちらが多く使っているんだから、先に力尽きるのは僕の方だろう。
「むう、なんでヒヒイロカネ製かなあ。あれがオリハルコンかミスリルなら魔道具で防げるのに」
ヒヒイロカネが魔法に強いというのは話したと思う。が、あれは魔力の流れを断ち切るからなのであって、魔力が流れていれば正直何に対しても強いのだ。生物なら自己修復力でなんとかなる場合が多いが、物体にはそんな機能がついていることはほとんどない。つまり、魔道具に対しても有効なわけである。
神器で試験をしたことはないから、今胸にあるこれで防げるかどうかまではわからない。そもそも、神器というものは数が少ないし、ヒヒイロカネ製の武器も同様に少ない。二つがぶつかることなんて滅多にないのだ。
「でもま、わざわざ自分の身体を危険に晒してまではやりたくないのだけど………」
防げなかったら、自分の身に迫って来るのはダンプカーがぶつかったときのような衝撃。しかも、ブレーキが踏まれてない状態。そんな衝撃が当たって、無事でいられる保証はない。……というか、そんな自信は僕にはない。あくまで、僕はある程度鍛えただけの人間に過ぎないのだから。
「あのー、聞いてます?何かやらかしちゃったみたいなんですが、僕は戦う気がないですし。とりあえず、話し合いません?」
返って来たのは言葉ではなく、攻撃。駄目だ、まるで聞いてくれない。思考だけは冷静になれたけども、体はもう悲鳴を上げている。このままじゃジリ貧だ。
うーん、気が乗らないけど仕方ない。ここはむこうが冷静になるまで、時間を置くのがよさそうだ。早めに状況を知りたいところではあるけど、こうして殺されかけているわけだし。いずれにせよ、時間が無駄になっているのは間違いない。それなら、後日に改めて来る方がまだ話を聞いてくれそうだ。
「いきなり失敗か……師匠に怒られないかな………?」
勉強不足とは何事です!とか言われそう。今さら女の子を攻撃しないから悪い!とは言われないとは思うけども。
アイテムボックスから一枚の紙を引き抜いて、魔力を流す。すると、僕の脚力が突然強化された。脚力強化の護符だ。ストックしたものを使ったのである。
振り上げられた棍棒を回避する際に、思いっ切り跳んだ。すると、開けた場所から木々が生い茂った森の中へと下り立てた。僕の姿を見失った彼女は、少しだけ体勢を崩す。次の一撃を放とうとして、その目標を失ったのだ。戸惑ったのかもしれない。
「また改めて来るよ!次は攻撃しないでくれると嬉しい!」
彼女が何かをする前に、木の上へと移る。あれだけの重量を持った武器だ。振り上げるのは大変だろう。結構ぶん回していたし、体力的に持ち上げられなくなってもおかしくはない。
それに、振り下ろすよりも振り上げる方が力がいる。地上を移動するより、樹上を移動した方が攻撃は弱いものになると思う。だから、逃亡するなら木の上を移動した方がいい。
「それにしても、逃げてばっかりだな、僕………」
あんまり逃げてばっかりだと、呆れられちゃうのではないだろうか。そりゃ安全策を選んだ方がいいのはわかるけど、どこかで必ず問題とはぶつかるものだしなあ。これでよかったのかと思えてくる。
それでも、あの子を傷つけずに無力化する方法なんて、今の僕じゃ思い浮かばないし。一旦引いて、どうしたらいいのか考えることが大事だと思うのだ。大体、何が原因で怒ったのかもわかってないし。下手に長居して、また地雷を踏み抜く方が愚策だ。
「とりあえず、まずはなんで怒ったのかを考えることからかなあ………」
最後に、ここに戻ってくるために『アリアドネの糸』を引っ掛けようとする。後ろを振り返って気付いたのは……あの女の子の後ろの地面が、やや盛り上がっていることだった。
それを確認したと同時に、僕は駆け出していた。




