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プロローグ

第2章スタートです。これからもお付き合いいただけると幸いです。

 「と、いうことでそろそろ出発したいと思ってるんだ」

 「ふうん?まあ、いいんじゃね?それよりおかわり」


 僕の宣言は適当に流された。ひどい。差し出されたお皿にご飯とルーを盛りながら、もう一度目の前に座る女の子を観察する。

 僕よりも一回り……否、子供と大人程の身長差がある彼女は、こちらに来て初めて出会った異世界人。とはいえ、人という言葉はある意味正しく、ある意味では間違っている。それは彼女の肌の色や体格、加えて額についているモノが証明している。


 「んだよ?なんかついてんのか?」

 「いや、そうじゃないけどさ。ほんとに種族が違うんだな、って」


 ?といった様子でこちらを見るこの子は、種族的に言うと人間ではない。身長は余裕で2mに届くかどうか、というほどにある。女性アスリートのように引き締まった肉体からは、外見から予想できない強力な一撃を放つことができる。そして肌の色はほんのり赤く、額からは小さく角が覗いている。

 彼女、フェルト・リエンアイは鬼人族という種族。特徴として、肌がうっすらと色づいていること。人間よりも遥かに力が強いこと。成人すると、身長が180cmを上回ること。加えて、額に角が生えていることがある。彼女もそのどれもを併せ持っていて、外見上の違いは見て取れる。


 「今さらかよ。お前のいたとこはほんとにど田舎だったんだな」

 「んー……うん、まあそうとも言えるかな?」


 嘘は言っていない。僕の住んでたところは田舎っぽくはあったし。車を使えば、そう遠くない距離に都会が広がってたとはいえ。苦笑いをしていると、再びお皿を差し出された。はいはいと手に取って、ご飯を盛っていく。


 「……で?改めて見た感想は?」

 「え、何が?」

 「おい、なんか思ったから見てたんじゃねえのかよ」


 呆れ顔のフェルト。ああ、それかと納得して笑う。


 「いや。あんまり変わんないな、ってね。ああ、でも一つあるか」

 「変なヤローだな……その一つって何だよ?」

 「滅茶苦茶食べるよね、君……そろそろ止めとかない?腹八分目で止めといた方が健康にはいいんだよ?」


 今夜の晩御飯であるカレーを手渡すと、すぐに食べ始める。うん、これで30皿越えたんだけど。しかも、大盛りで渡しているからね?どう見ても食べ過ぎだよね?


 「はあ?まだ全然食えるっての。あと20は余裕だな」

 「……君の胃袋に僕は脱帽だよ………」


 何言ってるんだ、こいつ?と言わんばかりの目で見られたので、深々とため息をついた。

 いや、量はあるよ?十分あるし、足りないこともない。僕も自分の分は食べたし、僕の分がなくなるから憂鬱というわけでもない。栄養面のことを考えて、野菜も食べさせているし、そこでもない。そう、問題なのは………


 「……ねえ、今日でカレー何日目?」

 「いいじゃねえかよ、美味いし」

 「飽きるじゃん……たまに食べるからいいんだと思うんだけど」


 カレーの日が続き過ぎていることだ。覚えているだけで何種類のカレーを作ったことやら。オーソドックスなポークカレーに始まり、チキン、ビーフ、ベジタブル、チキンバター、キーマ、ドライ、シーフードなどなど。覚えているものは出尽くしたし、アドリブを利かせるのももう限界。これ以上はレパートリーがないのだ。最初に戻れって?やだよ、もう材料ないんだし。

 対して、カレーに嵌まったらしいフェルトは何の不満もなく食べている。注文しているのはフェルトだしね。不満なんてあるはずがないだろうね。


 「味が違うから別にいいだろ?」

 「違うんじゃなくて、変えてるの。スパイスとか食材とか若干組み合わせ変えて、同じ味にならないようにしてるの。せめてカレー以外にすれば、こうならなくても済むのに………」


 頭が痛くなってくる。同じものを出すのは流石に気が咎めるし、かといってこのままだとネタが尽きるのも明白。頭を抱える事態なのだ。


 「わかった、んじゃ明日はこないだのスープカレーでいいさ」

 「またカレーだね。カレー以外にしようって話聞いていなかった?」

 「カレーが好きなんだからいいだろよ」


 悪びれる様子がないのだから、もうどうしようもない。仕方ないや、明日は勝手にメニュー変えよ……カレー好きっぽいし、辛い料理がいいのかな。麻婆豆腐とかチリドックぐらいなら作れるけど、あんまりよくは知らないんだよね。口に合えばいいんだけど。男の料理だから大雑把になりがちだし。

 頬杖をついて、食事を続けるフェルトを見る。がっつくように食べる様は、美味しいといった言葉を真実だと証明しているようなものだろう。最初はあんなに警戒してたのにね。


 「なんだ?」

 「ううん。明日の献立考えてただけ」


 視線に気付いたのか、むこうも僕を見た。……お皿も一緒に渡したので、おかわりが欲しかっただけっていうのもあり得そうだけども。


 「ほー、ちなみに?」

 「なんだかお肉好きっぽいし、チリドックにしようかな」

 「えー、カレーじゃねえのかよ?」

 「だから、飽きるって何度も……わかったよ、何回かに1回はカレーにするからさ………」


 あらかさまに残念な顔をするので、僕が折れた。言葉を引き出せたフェルトは子供のようにはしゃぐ。そういうところを見ると、やっぱり自分たちとはそう変わらないのだなと思う。





 さて、今はこうしていい関係が築けている僕たちだけど、出会ったときはそれはもうひどいものだった。話は異世界にやって来たときまで遡る………

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