20話
投稿が遅れてしまい、申し訳ないです。今週から本格的に仕事が始まったので、今まで通りの更新とはいかなくなるかもしれません。気長にお付き合いいただけると幸いです。
各部隊の活躍、ノア殿や機械龍たちの援護、そして何より大将が討ち取られたことにより、魔物たちの軍勢は徐々に崩壊していった。弱い魔物たちは逃げ出し、強い魔物も逃げたり殺されたりした。騎士団もHWに再度搭乗できるようになってからは掃討の速度も上がる。王都奪還作戦が始まってからわずか半日。決着は人族と混成種族による勝利で幕を閉じた。
夜間は一度休みを取るため、ノアへと帰還した。無理をして被害が広げる必要もない。実際、この作戦で死んでいった者もいた。負傷した者も多い。お世辞にも最良の結果であったとは言い切れない。
「ラウラ」
「はい」
「……戻って、来たんだな」
「はい!」
けれど。被害は決して小さいとは言えないけれど。それでも、王都を……私たちの国を取り戻すことができた。私たちの暮らして来た、守るべきものを取り戻すことができた。それだけでも、彼らの死は無駄でなかったと言い切れる。
そうだ、悲しむべきことと喜ぶべきことがあった。悲しむべきことは国王とレオナルド元団長の死。可能性が高くはなかったとはいえ、やはり陛下と元団長の死は辛い。騎士団は一時的に暗いムードとなっていた。勿論、殿下もだ。一方で、喜ぶべきこと。それは姫殿下方がまだ存命であったこと。全員とまではいかなかったものの、あの状況下で3人も命を繋いでいたのだ。元団長は魔物となり果ててしまったが、彼が英雄であることには変わりなかった。
「それに、生存者は思っていたよりも多かったのは不幸中の幸いでしたね」
「ああ。本当ならば、もっと助けたかったがな………」
王城の牢に入れられていた者は数千人程。正直数十人かもしれないと覚悟していただけに、驚きでもある。だが、ここの支配者はヴァンパイアである。血を吸うためにも多めに生かしておいたのかもしれなかった。そう考えると、幸運とは口が裂けても言えないが最悪でもなかったと言えるかもしれない。
殿下はこれから国を立て直さなければいけないということで、本格的に忙しくなったようだ。こういうとき私たちは何もできない。殿下や生き残っていた家臣が政治を行うところを見守るのみである。まあ、実際に立て直す作業や日々の警護ぐらいならできるが。
「さて、そろそろ訓練にでも行くか。まだ魔物も多い、王都を守るだけの力は維持しなければな」
「そうですね」
街中の見回りを切り上げ、王城の庭へと引き返す。恐らく他の部隊も戻りつつあるだろう。そこで一度死んでいった者たちへ黙祷を捧げ、合同訓練を始める。これからも戦いは続くのだ。気を引き締めなければならない。ただ、今だけは束の間の平和を喜んでもいいだろう。そう思っていた。
この後に起こることなど、まるで想像もせずに。
※ ※ ※
「うわあああああああああっ!」
悲鳴が上がる。私たちは絶句していた。それもそのはずだ。先ほどまで何もなかったはずだ。部外者もいなかったはずだ。それなのに、何故か知らない人物が宙に浮いている。そして、何体かの魔物が存在をこれでもかというように主張していた。
どいつもこいつも一体でさえ騎士団が壊滅しそうな恐ろしいオーラを纏っている。それでも攻めてきたというのであれば戦わないわけにはいかない。私は剣に手を掛けた。
「これはこれは皆さま、御機嫌よう」
突然、一人の男が声を上げる。そいつもまた急に魔物たちの中に現れた。しかし、こいつにはそこまで威圧感を感じない。実力者ではないのだろうか。
「私はジョゼフ・ヴァイスと申します。どうかお見知りおきを」
「なっ……!貴様がジョゼフだと!?」
ヨロズ殿から聞いたもう一人の神器作成者。あの戦いで死んだわけではなかったのか。見てくれはいいのだが、雰囲気でわかる。あいつは危ない。
「おや、何人かは知っているようですね。ええ、タクミ・ヨロズさんと同じ神器作成者です」
「……何の用だ」
ジョゼフに問いかける。もし戦うのであれば、あいつだけは殺さなければ。ローランに目配せを行い、いざという際にすぐ動けるよう指示した。アイコンタクトだけでわかったのか、いつものように戦闘態勢に入る。それでいい。やつを暗殺した後に、殿下たちを非難してくれれば離脱してもらう。あいつはそれでいいのだ。
「単に自己紹介を、と。これから長い付き合いになるでしょうしね」
「長い付き合いだと………?」
「ええ。まず言わせていただきます。人族の皆様、おめでとうございます。ようやく反撃ができたのですね」
パチパチと拍手する。どういうことだ?戸惑っていると、言葉を続ける。
「ですが、世界を取り戻すにはあちこちの魔物を倒さなければいけません。どこの大陸も魔物に支配されているのですから」
「それを聞く理由が見つからないが?」
「いいえ、理由ならございますとも。それも三つも」
騎士たちがどよめく。私たちの様子を面白がっているのか、ジョゼフはにやにやと笑う。
「一つ目として、魔物たちは人族を狙います。エサとして最適ですし、その他にもいろいろと使い道がありますからね。国を作ってもすぐに攻め込むでしょう」
否定はできない。特に、今は建て直しの時期だ。攻め込む魔物も多いはずである。
「二つ目、私はこれからも魔物たちの側で研究を続けます。いずれすべての大陸を滅ぼす兵器を作ってしまうかもしれませんねえ」
騎士団がジョゼフを睨む。中には吐き捨てるような言葉も聞き受けられる。そう、こいつはまったく反省していない。恐ろしいことをしたとわかっていない。やはり危険過ぎる。
「そして最後。これはあなた方に問題があります」
ジョゼフが隣の人影を差す。いったいあれは誰なのか。
「この方が『魔神』です」
「『魔神』だと!?」
驚きが強いが、同時に納得もする。そうであるならば、なぜこんなに強力な魔物を束ねているのかもわかるからだ。
「その『魔神』が何故関わって来る?」
「答えは簡単ですよ。『魔神』は元々勇者だからです」
今度こそ絶句した。言葉が出て来ない。『魔神』が元々勇者だった?そんな馬鹿な。
「いたでしょう?勇者の中に力を使えなかった者が。あなた方が追放した者が。その勇者こそ『魔神』なのですよ」
ということは。だとするならば。私たちは………
「いやあ、素晴らしい。自分で自分たちの未来を閉ざす決断をしていただいたのですから。素晴らしい種族ですねえ」
ドサリ、と膝をつく騎士が現れる。無理もない。こんな事実を知って衝撃を受けない方がおかしい。
「さてはて、そんな種族を他の種族はどう思うでしょうか?知られれば恐ろしいことになると思いませんか?」
「……だから、戦えと?」
今の言葉が事実かどうかはわからない。だが、人族がやってきた過去を思い出す。あっさりと信じるだろう、どの種族も。そして、憎しみから我々を滅ぼそうとする。国を作っても、また戦火に呑まれるだけだ。
ジョゼフの言った戦いを受けるしかない。そうでなければ、今度こそ人族は滅ぶ。
「……それと、私もこちらにつきます。あなた方は魔物と神器。両方を相手にしてくださいね?」
絶望的な状況だ。すべての勇者を殺した『魔神』に、最高峰の魔道具である神器を作る神器作成者。私たちに勝ち目があるとは思えない。それでもやるしかない。拳を握り、何かを言おうとしたときであった。
「……やっぱそうだったか。悪い予感ってよく当たるよなあ」
呆れた声が発せられる。振り向けば、そこにはヨロズ殿が立っていた。不服そうな顔を向けながら。




