表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/261

24話

 「荷物を整理しなさい、か……魔道具は持ちこんじゃダメみたいだったし、誰かにあげられないかな………?」


 ゲイムロルさんとの最後の鍛錬を終え、部屋へと戻る。その前に、入り浸っていた加工室、というか魔道具を作っていた部屋を訪れていた。机や床にはいくつもの魔道具が散乱していて、設計図や道具も放りっぱなしだ。改めてみると汚い部屋だね、と苦笑してしまう。

 神様が言うには、ここで作ったものは持ち込んじゃいけないみたい。あくまで現地調達。これのみ認められてるらしい。でも、出来が良かったり、思い入れがあったりする魔道具だってたくさんある。素直に捨てられるわけがなかった。

 例え、他の人が失敗作と断じようとも、捨てられないものもあるし。というか、作ったものを基本的に捨てることはできないのだ。作った者なのだから、そこだけは越えちゃいけないラインだと思ってるし。


 「んー……でも、基本神様たちって宝具持ってるんだよねえ。大体のことはそれで済むし、自分の仕事以外のことしたら怒られるみたいだし………」


 困ったな、と思いながら、魔道具を何の気なしに整理していく。せめて、何があったのか、どんな形だったのか、そこから何を感じられるのか。それをきちんと覚えておくために。それをどうするのかまではまだ決められてない。でも、整理しないことにはなんともできないし、分けていくのが無難だろう。


 「む、間に合ったか。それならば良い」

 「あ、神様」


 作業を続けていると、唐突に神様が現れた。今回はミーミルさんだ。こんにちは、と頭を下げる。本当は平伏なり何なりしなくちゃいけないんだろうけど、そんな余裕が今はないし。まあ、むこうも気にしてないし、よかったんだけどね。


 「えっと、今日はどうしてここに?何かやらかしましたか?」

 「……そうだな。こちらがやらかしたので、少し詫びを、と思ってな。君には迷惑を掛けることになる。すまない」


 神様が頭を下げる。僕は目を瞬かせて、首を傾げてしまった。


 「つまり?」

 「詳しくは言えんが、君には世界を救ってもらわなければならない。しかも、難易度は先に送られた者たちよりも飛躍的に上がっている。困難が多く……いや、誤魔化しても仕方ないな。困難しかない、と言えるだろう」

 「ええ………?」


 渋い顔どころか、苦々しい顔を隠せない。いや、だってそうでしょ。僕、普通の人間だし。なのに、いきなり困難ばっかりのとこ行ってきてね、とか言われても何も嬉しくないよ。そんなに苦難上等!な人じゃないし、Mでもないし、バトルジャンキーでもないし。

 それに、チート持ってる人よりも大変、なんて言われれば、やる気は駄々下がりだよ。はふう、とため息をつく。


 「まあ、拒否権はなさそうなんで、ちゃんとやりますよ……ゲイムロルさんにもそう約束しましたし」


 あはは、と渇いた笑みを浮かべ、なんとかそうとだけ返した。ああ、大変だね。すぐに死ななきゃいいけど、と考えを巡らせる。

 でも、ミーミルさんも悪い人……と言うか、神様じゃないんだよね。僕のことも考えてくれてたみたい。僕の作った作品を指して、とんでもないことを宣った。


 「すまないな。私の方からも話を通しておいた。ここにある、君が作った魔道具たちはすべて持っていって構わない」

 「ほへ?」


 目が点になってしまう。全部?全部って言ったの、今?


 「全部、って……あれも?」


 僕が指で示したのは、僕が作った中でも超大作……いや、どれもこれも大作なのだけど。物理的に、超大作なものがデン!と鎮座しているのだ。この部屋に仕舞い切れないので、格納庫を作ってそこで管理してるほどのやつが。

 ミーミルさんはあっさりと頷いた。心の中では思わず、軽ッ!?って叫んじゃった。


 「ああ。むしろ、あれがないと不便だろう。遠慮はせずに持っていくといい。護符や武器、アイテムボックスも自由にするといい」

 「……ほんとに?あとでやっぱなし、とか言われても困るよ?」

 「それはないから安心せよ。……むこうに送りさえすれば、口出しはできんからな」


 ……バッチリ聞こえたんですが。ミーミルさん、意外と悪ですね。

 にゃはは、と苦笑いをしつつも、荷物をまとめる作業を再開するのだった。でも、それは予定していたよりもずっと早く終わりそうだ。


 「すまんな。本当に」

 「今さら謝らなくても……もう確定事項なんですよね?それなら文句言ったところで、何も変わりやしませんよ」


 それに、ミーミルさんだってギリギリのことをしているのだろう。恐らく、ここにある魔道具を全部持っていってもいい、と言うのも実際はミーミルさんの立場をかなり厳しくするものだろう。だって、持っていくなと言っていたのは最高神たち……ここで言うならオーディンなのだから。わかりやすく言えば、会社で部長が社長の意向に歯向かっているようなものだ。不都合なことが起こらないとは、とてもじゃないけど言えない。


 「………恨むなとは言わぬ。だが、これはあくまで我らの判断だ。ゲイムロルは関わっていない。あやつのことは…………」

 「……?恨む気なんてないですけど?」


 思わず首を傾げてしまう。なんで恨まなきゃいけないんだろ、と。そんな僕の様子に戸惑ったのは神様の方だ。


 「ま、待て。我らがしたことが許せないなどとならないのか?勝手にお前の行く先を決め、苦難の道に放り込もうとしているのだぞ?」

 「いや、元々呼ばれたのはたまたまなわけですし。そもそも、決定したのは最高神たちですよね?ヘイムダルさんやミーミルさんに当たるのはお門違いじゃないですか。さらに言うなら、ゲイムロルさんは僕を育ててくれたわけですし。感謝はあれど、疎む気持ちなんてさらさらないですよ」


 そう。悪くもない人たちに当たるのはお門違いだろうし。いやまあ、人ではないけども。ゲイムロルさんだけじゃなく、ミーミルさんにもヘイムダルさんにも十分よくしてもらったのだ。それを仇で返すような真似はしたくない。それをしたら、正直自己嫌悪に陥りそうだし。


 「……強いのだな、君は」

 「そうですかね?普通だと思いますけど?」


 その後、少し話をして別れた。今が忙しいことも承知しているのか、邪魔をしたくないかららしい。また、むこうへと向かう日も教えられた。残された時間は1週間だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ