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21話

ブックマーク登録数がまた一つ増えていました。登録していただいた方、ありがとうございます。当面の目標は登録数2桁を目指して頑張っていきたいと思います。

 「……お疲れさん」

 「……あー、ヴォルフかい?ほんとにお疲れだよ………」


 いつものように笑っては見せるものの、やはり弱々しくなってしまう。ゲイムロルさんもモネも僕を直接攻撃してくることは少ないんだけど(というか、モネは攻撃すらしてこないけども)、言葉による応酬が凄まじい。

 チクチクと嫌味ばっかり言うモネに対して、正論で返すゲイムロルさん。勿論のこと、ゲイムロルさんに嫌味なんか通じるはずがないし、モネはモネで謎理論が構築されてるのでこっちも通じるわけない。結果として、止めに入る僕の胃がキリキリと痛む羽目になる。……それでも、顔には出さないようにはしてるけどね。原因僕なわけだし。

 けど、疲れるのはどうやっても隠せないらしく、ヴォルフからは心配の声を掛けられた。


 「にしても、懲りねえなあ、あいつら。顔合わせりゃ即座に始めてんじゃねえか?」

 「顔合わせてなくてもやってるよ……この前なんて、部屋に爆弾仕掛けられたとか言ってたし」

 「……で?」

 「……解除しに行きましたよ。はい」


 ガックリと肩を落とすと、ポンと手を置かれた。友達から憐れまれる程度にはひどい目に合ってるんだなあ。


 「ま、急ぎの用事もねえんだろ?折角だし飲みに行こうじゃねえか」

 「……君らは何がなくても飲むよね?」

 「違いねえ!」


 ケラケラと笑いながら、酒場へと移動。酒場の扉を潜れば、今日もあっちこっちで笑い声や罵声が響いててうるさい。その喧騒が嫌でない辺り、僕も場の空気に当てられてるのかもね。

 適当な席に着こうとしたけど、どこも一杯だ。仕方がないので、相席をすることにした。


 「わりいな、ここいいか?」

 「おお、ヴォルフに……タクミか!いいぞ、飲み比べをするのも楽しそうだからな!」

 「言ったな?戦闘の腕だけじゃなく、酒にもつええってところを見せてやろうじゃねえか!」

 「ハッ、上等だ!酒でならお前には負けん!」


 マッチョな男たちが睨み合い、酒を注文する。というか、肌色成分多いね。主に男のなのだけど。

 ヴォルフと知り合いの一人が互いに挑発していると、周りの人の反応はそれぞれだ。交ざろうとする人、賭けを始める人、酒のつまみにする人。同じところは面白がっているということぐらい。

 そんな中、僕は何をしているかというと………


 「お酒の種類は最初軽いものから。段々と上がっていって、先にダウンした方が負けね?全員いいですかー?」


 オー!と野太い声が上がる。で、僕はポケットからメモ帳を取り出して、他の人たちの間を回る。聞くのは勿論。


 「はいはーい、他に賭ける人はー?ヴォルフが倍率高いけど、大穴もあるかもよー?」

 「そんなこと言って、お前が全部かっさらう気じゃねえだろうなー?」


 ゲラゲラと下品な声が上がるけど、気にしない。これがデフォだし、いちいち気にするのも阿呆らしいし。そもそも、声色に悪意はないのだ。友人と単に冗談を言い合ってるようなものである。

 その声に負けじと、こちらも声を張り上げた。


 「どうかなー?イカサマはバレなきゃセーフだしなー?」

 「おい、審判!?公平って言葉は知らんのか!」

 「あいにく、模擬戦のショックで辞書から一時的に消えてしまいまして」

 「おいい!?」


 笑い声が一層大きくなる。野次も飛んでくるけど、概ね好意的なもの。なんだかんだ言いつつ、冗談だってことはわかってるんだろう。

 つまみだの、物だと賭けられたものを回収して、早速運ばれてきたビールをヴォルフたちの前に置く。量も同じだし、問題はないだろう。


 「それじゃ……始め!」


 一斉にぐびぐびと飲み始め、追加の酒を求める。流石に一杯目からダウンするような人はいない。それなりにお酒には強いからね、ここの人たちは。アルコール度数の低い酒なんて、水と同じだ!と言い放つしねえ。

 あ、一気飲みしてるけど、良い子……というか、大人は真似しないように。ここは死んでも生き返れるからセーフなだけで、こんなことやってたらアル中で死にかねないからね?それと、お酒は二十歳になってから。


 「いいぞー!ガンガン行けー!」

 「負けんじゃねえぞー!お前に賭けてるんだからなー!」


 観戦者たちも酒を飲んでるだけあって、酒場は大熱狂だ。騒ぎに騒いで、日中の訓練でのストレスを発散してる。

 僕は厨房の方へ回り、中にいる人たちに対して頭を下げた。


 「すみません、いつもいつも」

 「いやいや、構わねえさ。元気があって、平和なのはいいことだ。それに、兄ちゃんからこれ貰ってるからなあ?」


 ひょいと掲げられたのは、ここに寄付した調理器具。油汚れが残りにくく、水で洗っただけでも綺麗になる優れものたちだ。勿論、神器である。


 「あはは、役立ってるなら良かったです。次のお酒を用意してもらえますか?」

 「おうよ!いつもので大丈夫だな?」

 「はい、お願いします」


 元の場所に戻れば、どこ行ってたんだ?と声を掛けられる。前までからは想像もできないなあ。ちょっとね、と笑って誤魔化しておいた。


 「次ー!スピリタス行こうか!」

 「「「「「待て待て待て待てぇ!!」」」」」


 これには堪らず、ヴォルフたちが抗議の声を上げた。えー、と首を傾げてみたら、どっと周りは笑いに包まれた。


 「スピリタスは割るんだよな?なあ?」

 「え、何言ってるのさ。(ストレート)だよ。男なら割らずに行くんだよ」

 「無茶言うな!アルコール度数96%ォ!?」


 代表して叫ぶヴォルフは頭を抱えてる。その情けない姿を見て、笑い声はさらに大きくなる。勿論、僕も笑っていた。

 ちなみに、スピリタスは世界で一番アルコール度数が高いお酒と言われている。カクテルや医療用に使うので、直で飲むことはほとんどない。良い大人は真似しないでね!


 「わかったよ……そこまで言うなら他のにするさ」

 「そうだな、そうしてくれ………」

 「それじゃあ、バルカン176、プリーズ!」

 「うおおおおい!度数88%ォ!?」


 ヴォルフが叫んだとおり、バルカン176も滅茶苦茶度数の高いお酒だ。スピリタスに続く2位である。あと、良い大人は(以下略)。

 仕方ないなあ。僕は首を振って、やれやれと肩を竦めた。


 「いや、仕方なくねえから!普通別の来るだろ!ワインとか日本酒とかよ!」

 「まったく、ヴォルフ。君にはがっかりだよ」

 「俺おかしくねえだろ!?つか、周りも同調してんじゃねえよ!」


 うんうんと頷く周りを見て、さらにツッコミを入れるヴォルフ。うむ、今日も弄るの楽しいな。そんな彼に、あるものを差し出した。


 「わかった、今のはやめよう。代わりにこれを」

 「……これは?」


 渡された黒みがかった茶色い液体を覗き込む。それはなみなみと注がれていて、動かしてみればどろりとゆっくり動く。額に冷や汗を流す彼に、僕は爽やかな笑顔を向けた。


 「ウスターソースさ!さあ、一気をお願いします!」

 「鬼か、てめえ!?」


 こんなもの飲めるかと、つまみにかけた。美味しいのかな?あれ唐揚げなんだけど。ま、食べるんならいいんだけどね。


 「まったく、何をおかしなことをしているのです」

 「あ、ゲイムロルさん」


 後ろから呆れた様子でやって来たのは、僕に技術を教えてくれているあの戦乙女だった。どうかしたのかな、と思っていると、僕の手を掴む。


 「外で待っておられる御方がいます。会って来てください」

 「あー、なるほど。わかりました」


 ちょっと中断ねー、と言って、酒場の外へと出る。そこにいるのは予想通り神様。ただ、実際に会ったことはない。会うこと自体は初めてだ。


 「えっと、こんばんは?」

 「こんばんはだ、新しき技術者よ。早速なのだが………」


 話を切り出そうとするおじいさんに、僕はその先を遮った。そこから先は言いたいことはわかってるし。たぶんだけど。


 「あの、スカウトならいつも言ってるんですが、どこにも付く気はないです。なので、味方になってくれというものなら………」

 「そうか……それは残念だ。何もしないのかね?」

 「いえ、そうではなく。困っている場所があれば、その都度助けようかと。それこそ、どこであろうと関係なく」


 神様は呆気に取られていたけど、途中で笑い出した。回答はお気に召したんだろうか。そうかそうかと言って、世間話をしてから帰っていった。


 「やれやれ、面倒なことになったなあ」


 酒場の中から、僕のことを呼ぶ声があったので、また戻る。ここに呼ばれてから、そろそろ10年が経とうという頃の話だ。

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