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14話

 「アクセ、アクセ、アクセ作り、っと」


 今日も今日とて図書館に入り浸っている。今日の用件は魔道具で作るようなアクセサリーとしては、どんなものが挙げられるのか。あれもこれも、と手にして、パラパラとページを捲っていく。探してるものと違うようなら戻して、参考になると思えば持っていって。ついでに、借りていた本も返しておいた。

 あ、司書は線の細いお兄さんだった。女の子であった方が嬉しかった、っていう気持ちもちょっとはあったけど、今では歓談を楽しめる間柄だし。これはこれでよかったのかもとも思う。なんでも、本を借りる人は少ないから話し相手になってくれて喜んでるそう。役に立ててるならよかったかな。


 「さてと、それは置いといて」


 ノートに書き写していった内容を読み返せば、やはり一番簡単で必要になりそうなのは防御力を強化する物かな。命を守ることに関して言えば、これが一番外れがない。人に売ってよし、自分で身につけてよし、仲間に渡してもよし。うん、最初はこれがスタートでいいと思う。

 アクセサリーで作りやすいものは、ペンダントが一般的。それもそうだよね。円形の鉄か何かに魔法陣を組み込んで、それに紐か鎖を付ければはい、完成。ばれないようにするためには、円系のものを二つ作って、挟み込む感じにすればいい。イメージとしては二枚貝に近いかな。難易度は少し上がるけど、それにしたって武器の類い程じゃあない。


 「まずはペンダントからスタート、それがどんな感じで出来上がったかを確認して、そこから次に何を作るか決めるのでいいかな」


 設計図をササッと書き終え、必要なものは準備していく。この頃、魔道具作成に入り浸っていたため、どこに何があるか程度なら目を瞑っていてもわかる。ひょいひょいと材料や道具を手に取って、加工に移っていく。

 最初に作るのは一般的な鉄のペンダントだ。この部屋には地球にはなかったような金属、例えばミスリルやオリハルコン、ヒヒイロカネといったものもある。当然、地球になかった金属の方が価値は高いし、強度があることが多い。特にオリハルコン、ヒヒイロカネは異常なまでの強度を誇っている。


 「トンチンカン、トンチンカーンと」


 変な歌を口ずさみながらも、手は動かす。何かしら喋っているのは昔からの癖だ。独り言が多いとも言うけども。何かこいつぶつくさ言ってやがんな……と思っても、気にしないでほしい。どうせ、その言葉に対した意味は込められていないから。

 話は戻して。最初からオリハルコンやヒヒイロカネを使わないのには理由がある。単純に取り扱いが難しいのだ。地球にないような金属は大体。中でも、性能がいい反面取り扱いが難しいものの代表格がミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネなのである。


 まずは軽くそれぞれの紹介をしておこうか。

 ミスリル。金属であるのに、非常に軽いこの不思議な金属。ミスリルには精霊が宿っているとも言われているらしい(真相はわからないけども)。大部分の金属を精霊が嫌う傾向にある中で、この金属のみは嫌わないと言われている。そのため、精霊魔法を使うもの。また、女性の冒険者なんかには人気のある素材らしい。魔力との相性も良く、魔道具に使われる素材として、まず挙がるのはこのミスリルだろう。

 問題点としては、まず見つかりにくいこと。あとに説明する二つよりは多くあるらしいものの、けして多いとは言えない流通量らしく。ミスリル製の武器や防具、魔道具は高い。加えて、加工の難易度。卓越した者の手でしか形を変えないこの金属は、一言で言い表すならじゃじゃ馬のようだ。加工しやすい角度が滅茶苦茶で、ちょっとしたミスですぐに砕け散ってしまう。弱い力で打っていたつもりでも、即座にひびが入ることもあるのだから、その難しさはお察しだろう。


 次に、オリハルコン。ミスリルと比べると重いものの、重さ的には鋼とそんなに変わらない。とんでもなく重いわけじゃないんだよね。だけど、とにかく硬い。物凄く硬い。オリハルコンの武器、魔道具はオリハルコン製の道具でなければ作れない、と言うぐらいなのだから、その強度はお墨付きだ。また、刃こぼれはしても折れることが稀であるという。オリハルコン製の武器=一生涯使える武器とも言えるらしい。

 そんなオリハルコンの問題点は、入手が極めて困難であること。なんでも、とある龍のフンがオリハルコンだそうな。オリハルコンを探すには龍探しから始めなきゃだし、龍を見つけられたとしてもフンを見つからないように採って来るのは至難の業。大変らしいんだよね。さらに言うなら、この金属を加工するには加工するときの温度を一定に保ち続けなければいけない。温度の範囲がとてもシビアで、0.01℃の誤差すらも許さない。そして、許されている範囲は1℃の範囲内だ。恐ろしいまでに難しいのである。


 最後に、ヒヒイロカネ。これは重くて、通常の人なら持ち上げることすらできない。その代わり、魔法への遮断性が凄く、盾にするだけで魔法を弾くことすらできる。ある意味、恐ろしいともいえる金属。ヒヒイロカネ製の武器か防具さえあれば、強力な魔法使いにすら勝てると言わせるもの。それこそがヒヒイロカネだった。

 こいつの問題点も、やはり入手が極めて困難なこと。こちらは火山で時間を掛け、ゆっくりと魔力が凝縮された末にできた金属がヒヒイロカネと言われているらしい。そのため、溶岩の中にあるらしいのだ。まさに命懸けの採取。やりたがる人物はなかなかいないらしい。また、加工の際に温度を調節するのが難しい。低すぎると効果が失われて、ただの重たい物になってしまう。かと言って、高すぎれば今度は爆発する。ヒヒイロカネの加工で命を落とす技師も少なくない。それほど危険な金属なのだ。


 と、こんなように一癖も二癖もある金属たちなんだよ。無茶して命を失うのも笑えないし、最初は手慣れた鉄で始めてみようかと思い立ったわけだ。

 ……勿論、加工できそうになったら、手を出すつもりだけど。やらないという選択肢?ないね。


※               ※               ※

 二柱の神が険しい面持ちで鏡を眺めている。険しくさせている要因は、その中に映っている映像にあった。


 「……まずいやもしれんな」

 「ああ。このままだと手遅れになるぞ」

 「じゃが、あの子はまだまだ育成段階じゃ。ここで行かせるわけにはいかん」

 「そうだろうな。こちらでもいくらか策を巡らせてみよう。押し留められればいいのだが」


 部屋を出ていった老人に、巧を召喚した神は頭を下げた。どうか頼むと。


 「………どうか気付いてくれ」


 お前たちの、本当の敵に。

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