13話
「で、落ち着きました?」
「あ、ああ………」
「申し訳ありません………」
とりあえず、服を着るだけ着てから二人の後を追いかけた。取っ捕まえたのは僕が戦った男の人の方が3時間ほど後、ゲイムロルさんに至っては日を跨いでから。二人とも、驚異の身体能力だったよ。ほんと、変なところで活かすんだから。
とりあえず、素っ裸の男の方には服を着せて、ゲイムロルさんには席を勧めておいた。顔を赤くしながらも、礼を言って座ってくれた。
「そもそもなんですけど、女の子を攻撃しないって言ったところで、気付いてもいいと思うんです」
「あ、あれはそういう趣味かと思ってまして………」
「えー………」
こっちは愕然ですよ。まさか僕が女の子と思われてて、更にはそっち系だと思われてたなんて。人の性癖を否定する気はないけど、僕はノーマルな趣味なんですよ。女の子とキャッキャウフフする方が嬉しいんですよ。思わず半眼になってしまった。
「し、しかし、仕方ないでしょう!あなたが誤解を生むような仕草をするからです!」
……逆ギレされた。ひどい。というか、誤解を生むようなことしたっけ?首を傾げてしまう。
「それです!」
「はい?」
「首を傾げる動作が僅か過ぎて、女性の仕草に見えるんですよ!欠伸をするときに服の袖が長くて、口元に持っていくところなど完全に女子です!」
そうかなあ?僕は普通に過ごしてるだけなのに。そうなの、と男の人の方を向けば、大きく頷かれた。なんてこったい。
「さらに言うなら声も高いですし、喉仏も目立たないですし!女の子と勘違いしても仕方ないでしょう!」
「……そう思ってたのに、よくまあボコボコにしてましたね………」
いや、女の子を殴らない、っていうのは僕の中でのことであって、人に押し付けるつもりはないのだけども……そんなに何遍も殴ってたら、嫌になって逃げだしたりしないんだろうか。そう思ってしまう。その疑問に答えたのは男の人の方だ。
「いや、女でも戦闘好きが集まるからな。そんなことは滅多にねえよ」
「それなんて戦闘民族だい……?ここは狂ってるんじゃないかと真面目に考えちゃうよ………」
怖いよ。なんでみんな嬉々として戦いに行くんだい。そういう人しか集めないからかい?戦闘に行った人が全滅したらとか、隣人関係は大丈夫とか考えちゃうのだけど……心配いらないのかなあ?先行きが不安になってしまう。
「とりあえず、僕は男ですから。それだけわかってほしかった、ってことです」
「ええ………あれがついていたら、認めないわけにもいきませんし………」
「………?」
小声でぼそぼそ何かを言っているゲイムロルさん。放っておいてもいいのかな?下手に刺激して、また思い出させちゃっても悪いだろうし。
「そういや、自己紹介がまだだったな。俺はヴォルフ、戦士訓練生だ。近々戦士になれるかもしれんがな。これから付き合いがあるかもしれん。よろしく頼むぜ」
「うん、よろしく。僕は万巧。巧が名前だから、そっちでいいよ」
刺激しないようにしていると、気を遣ってくれたらしい。試合をしていた相手、ヴォルフさんが手を差し出してくる。僕はその手を握って、自己紹介をした。なんだか、長い付き合いになりそうだったしね。
「……ところでだけど、君そういう趣味じゃないよね?男に興奮するとか」
「違うっての!なんでそうなんだよ!?」
「いや、生娘みたいな声上げて逃げるからさ?女の子が苦手なのかと」
「苦手ではあるけど、別にだからって同性愛に目覚めてはねえよ!」
そう、と一安心。まさか、本当にお尻を狙われたら困るからねえ。本気出されたら、この人相手だとやばいし。下手したら、気付いたときには手遅れってこともあり得るからね。心配が杞憂でよかったよ。ふう、と息を吐き出した。
「それじゃあ、そろそろ失礼させてもらおうかな。この後も色々あるし」
「ん?何があるんだ?」
「魔道具の開発と筋トレと、立ち直ったら護身術の訓練とかな。結構スケジュールは詰まってるのさ」
あはは、と笑う。時間は貴重だしね。やれるところまでは進めておきたいと思う。……ただでさえ、時間は押してるし。どこぞの二人に割いたから。誰とは言わないけど。言うつもりもないし。
「ほー、何作ってんだ?」
「護身用の武器をね。ほら、素手だとどうしても限界があるでしょ?」
今日の、というよりは昨日のことなのではあるけれど。改めてわかったのだ。武器がないと、限界がある。ヴォルフさんも速いだろう。でも、これから行く世界にはもっと速い相手がいるかもしれない。もっとタフな相手がいるかもしれない。もっとパワーがある相手がいるかもしれない。そんな相手に、僕の拳は通用するのだろうか。そう考えたときに、このままでは無理ではないかと思ったのだ。
そんなことを話してみると、ヴォルフさんにしても同意見だったらしい。いいんじゃねえかと頷いてくれた。
「拳の強度にも限界はある。せめて籠手のようなもんや剣なんかを持ってれば、十分に安全度は変わるだろう。作って正解だとは思うわな」
「でしょ?ただ、まだまだ完成には程遠いんだよねえ………」
たぶん、単純な経験値不足が起因してるんだろうけど……だとすれば、他に何から作ればいいのかわからないんだよね。何しろ、こっちは始めたばっかなわけだし。作る方にも師匠がいればいいのだけど。
うーん、と声を上げていると、ようやく復活したらしいゲイムロルさんが話に加わってきた。どうしたのですか、と近付いてきた。
「なるほど、そういうことでしたか。それならば、アクセサリーを作ってはいかがですか?」
「アクセサリー、ですか?」
「ええ。役に立つようなものもあるはずでしょう。思いつく限りでは矢除けの効果を持つ物や、装備者の死を肩代わりする物もあったはずです」
得意げに話すところを見ると、ゲイムロルさんは教えるのが好きなのかな?……そんなに生徒が欲しいなら、少し厳しさを控えればいいのになあ。教えてる様を見ながら、心の中ではそんなことを考えた。
「へー、そういうものなら作れそうですね。でも、詳しくないって言ってませんでした?」
「そ、それは……まあ、頑張っているようですので、少しぐらいは調べてあげようと思っただけです」
「……そうですか」
照れたように頬を赤くして、そっぽを向く。……こういう顔を見せれば、もうちょっと生徒も集まるのでは?今後も集まらないようなら、アドバイスでも入れてみようかなと思う、今日この頃だった。




