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10話

昨日投稿を忘れてしまったので、今日は2話更新します。

 「……何というか、無茶苦茶だよね………」

 「はっ、タフなのが取り柄でな。そっちもよくやるじゃねえか」


 しばらく攻防が続いた(とはいえ、僕が一方的にやられてるだけだけど)後に、距離を取った。むこうも離れるつもりだったらしく、すんなりと距離を取れた。

 その後もいくらか攻撃を仕掛けてはみたけど、どれもこれも上手くいかない。それもそのはず。むこうは僕のことを、油断できない相手として認めたらしかったのだ。さっきまでは一瞬の隙や癖を突くことで、なんとか食い下がることはできていた。でも、それを修正されるわ、傷は増えてく一方だわ、そのくせむこうの体力が切れる気配はないわで、状況はどんどん不利になっていく。今だって僕は辛うじて立っている状態なのに、相手はピンピンしてる。


 「鍛え初めて、そんなに経ってないのにこれだろ?安心しな、お前はもっと強くなれるぜ」

 「なんか、随分とよく喋るよね………」


 戦うときに会話なんてしていていいんだろうか。それとも、僕はそこまでの相手じゃないってことなのかな。それはそれで悔しいんだけど。でも、相手は予想に反してわりいなと謝ってきた。


 「気に入った相手にゃあ、肩入れしちまう性格でな。許してくれや」

 「え、気に入ったって………」


 ブルリと震えて、肩を抱く。一流の戦士は性別も関係ないのか……注意しないと。不用意に近付いたら、お尻を狙われるかもしれないし………あ、お尻隠した方がいいのか。


 「そういうことじゃねえよ!」

 「……試合中にそういうことを考えるのはどうかと思うのですが…………」

 「いや、違いますから!単に、戦士として認めただけですから!」


 必死に取り消そうとしてるけど、その慌てっぷりが逆に怪しい。ちゃんと気を付けておかないとなあ……心にそう刻むのだった。

 むこうはしばらく言い訳をしてたけど、白い目を向けられるのが止まらないと悟ったみたい。とにかく!と僕を指差してきた。


 「侮ってたのは確かだ。何ができるんだと思ってたのもな。その非礼は詫びる。だがな、こっちにも積み上げてきたもんがある。ここで負けるわけにゃあいかねえんだ」

 「そう。でも、理由なら僕にもあるからさ。そう簡単には負けられないかな」

 「いい返事だ。戦い甲斐があるってもんだぜ………」


 先ほどよりも圧力が増す。闘気を更に解放したのだろう、と気付いたのは、いくらか時間が経ってから。すぐには理解できなかったし、絶望のようなものも感じていた。さっきまでは本当に加減していたんだろう。僕は力を解放するに値しない相手だと。手を抜いていても、勝てるだろうと。


 「……まあ、そういうことならさ………」


 もう一度不格好な構えを取る。怖いか怖くないかで聞かれれば、もちろん怖い。怖くないはずがない。勝ち目はほとんどゼロ。命を落としても大丈夫な場所とはいえ、死ぬ可能性だってある。それに、死んでも生き返れるだけで、痛みを感じないわけでもない。怖いこと尽くめだ。


 「へえ、これでもまだやるのか」

 「そりゃね……ここで逃げたら、二人に失礼でしょ………」


 声が上擦る。でも、逃げない。目も離さない。ただただ真っ直ぐ、相手の姿だけを捕らえる。

 今ここで勝負を投げ出せば、頼んでくれたゲイムロルさんにも、真っ向から戦おうとしてくれたこの人にも失礼だ。それに……僕を信じてくれた人たちを裏切りたくない。だから、僕は背を向けない。地面に倒れるまで戦い続けたい。


 「上等だ……行くぜ!」


 相手の姿が消えた、と思ったときには衝撃を喰らい、吹っ飛ばされていた。壁に叩きつけられて、息をすべて吐き出してしまう。酸素を求めて呼吸しようとすると、その顔を殴りつけられた。地面をボールのように弾んで、地面に突っ伏す。

 防御がまるで間に合わない。仮にできたとしても、腕ごと持っていかれるのがオチだ。それほどまでに凄まじい衝撃だった。立てなくなってしまうほどに。


 「ま、だ………」

 「いい根性だ!」


 お腹を蹴り上げられて、天井まで飛んでいく。天井から地面に叩きつけられたことで、全身を貫くような痛みが駆け抜けた。骨もいくらか折れたかもしれない。


 「これで終わりだ………!」


 また姿が掻き消えた。次の攻撃を喰らえば、僕の意識も消えるだろう。それほどまでにあちこちに傷を作っていた。

 だから………


 「ぐあッ!目が………!」


 賭けはしたくない、といったはずなのに、また賭けのようなこと。それでも、何もしないよりかはマシだと思った。

 タイミングが合うかはわからなかったし、仮に間に合ったとしてもこの調子で上手くいくかはわからない。だけど、賭けには勝てたみたい。


 「土を投げつける、ですか。よく考えたものですね」


 感心したような声が聞こえる。あいにく、そちらを見れる気力までは残っていなかったけど。最後の力を振り絞って、頭突きをお見舞いする。相手はややふらついて、その場に膝をつく。

 けれど、それだけ。倒すまでには至らなかった。意識もあるようだし、まだまだ戦えるだろう。


 「駄目、だったか………」


 ドサリ。両膝が地面について、僕はゆっくりと前に倒れ込んでいった。直前に、誰かが支えてくれるような気持ちもしたけど……それが誰のものかまではわからなかった。

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