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16話

気が付けば100話を越えていました。こんなに投稿してたっけ?と感じている作者です。これからも付き合っていただけると幸いです。

 フェルトとティオがほとんど殺し合いのような戦いをしてから、一夜明けて。僕はいつも通りに仕事を始めていた。昨日はあっちこっちと奔走し、人型兵器の開発に手をつけられなかったのだ。今日は昨日取って来てもらったスライムの皮膜を使って、クッションを作らなければいけない。クッションを仕上げ、機体に組み込めばまた試運転だ。粗方形になってきているので、これで完成すればいいのだけど。

 そうそう、機体の武器に関してはルクレースさんの協力もあり、出した案のほとんどが形になっている。ほとんど、となってしまうのは理由があり、まだ機体が完成していないことが大きい。ロボットの試運転は動かすことばかりで、戦闘訓練など以ての外。武器の試し斬りや試し撃ちなどもできていない。そのため、動作が問題ないか。まだ確認ができていないのである。


 「んー……最近、あんまり寝てないな………」

 『ここ一週間の睡眠時間は5時間ほどです。もう少し寝た方がいいかと進言します』

 「あ、おはよ、ノア……そういうわけにもいかないさ。完成は間近だからね。彼らもそろそろ戦わないといけない頃さ」


 欠伸を噛み殺しながら、ノアに返事をする。昨日……というより、日付は変わっていたし今日か。今日も1時間弱しか寝ていない。頭がボーっとしているものの、眠気覚ましに栄養剤を飲み干すことで対処する。舌の上に広がるなんとも言えない苦味で目が冴えた。

 時刻は地球で言う3時ぐらいか。まだまだ外は暗いし、起きている人もたぶんいないと思う。僕は慣れているからこの時間に起きているだけ。作品を完成させるときは徹夜だったり、仮眠1時間のみなんてことはよくあった。だから、1週間ぐらいなら眠気で倒れることもない。……それが身体にいいのかと言われれば、首を傾げはするのだが。


 『別に戦わなくてもいいのでは?あの鬼人族の女性とアマゾネスの女性、その仲間たちでも戦力は十分だと思われますが』

 「否定はしないけどね。それじゃダメなのさ」


 苦笑しながら歩いていく。向かうのは機体の開発に使っているフロア1だ。

 問題、というのはこの特殊な状況に関係している。これがどこかの物語のようにただ冒険して、ただ好きに生きるだけなら、ここまで無理をする必要はなかったのだが。そういうわけにもいかない理由があった。


 「まず、第一に人族の他種族差別は常軌を逸してる。ここでフェルトやティオばかりを戦わせると、必然的に物を与えるのはあの子たちばかりになっちゃうでしょ?プライドが大きい人族だ、絶対批判をする。批判の渦はやがて暴力に形を変えて、集団が真っ二つに割れる。ノアの中が戦場に変わってしまうのさ」


 僕はそんなことのために、ノアを造ったわけじゃない。それに、今までなら2つだったかもしれないのだが、今となっては3つ以上に分裂する可能性もある。クリストフェルを中心とする集団と、フェルトとだ。

 クリストフェルは戦いを嫌っている。だが、人族同士で戦いたくないと願うだろう。戦闘を止めようとするはずだ。そもそも、現状人族と他種族で戦うことは無益の一言に尽きる。

 しかし、人族はそれで納得しないだろうし、ティオたちだって自分の身を守るのに必死になるはずだ。クリストフェルの手は払い除けられる可能性は大いにある。


 更に言うなら、今フェルトとティオたちとの関係は非常に悪い。フェルトが孤立してしまうことは十分あり得るどころか、ほとんど確定と言ってもいい。

 そうなれば後は泥沼だ。互いに争い続け、相手が全滅するか降伏するかまで止まることはないだろう。それは最悪の結果だ。回避したいと思っている。


 『……傍迷惑ですね。すべての者がマスターのように高尚な人間へとならないものでしょうか』

 「僕は高尚でもないんだけどねえ……それはともかく、他にも理由はあるよ」


 人族のしてきたことがしてきたことだ。他種族も自分たちが活躍すれば、態度が大きくなるとも限らない。特に、あの獣人の子。ラウルさんだったか。あの子は喧嘩っ早いところがあるから、危険性で言えば十分大きい。人の心とは怖いもので、一旦やってしまって味を占めてしまえば、悲劇は続く。そして、いつかは周囲の者とて巻き込み、新しい『常識』へと変貌してしまう。……それが起こる下地は用意されているのだから。


 また、このまま人族を燻らせていては将来を見据えたときが危険だ。師匠も言っていたが、戦場から離れればどんどん戦闘の勘は鈍っていく。どれだけ時間が掛かるかわからない旅だ。人族と別れたとき、戦う力を失っていました、では魔物に支配された今に逆戻りしかねない。戦闘能力を持った人は奪わない方がいい。


 更に言うなら、個人的な感情もある。人族に限らないが、大切なものを失くした人は仇を取ろうとするだろう。思うように戦えない現状は憎しみの炎を胸に宿すだけなのだ。……それはとても危険だろう。何が起こるかわかったものじゃない。


 「まあ、僕も色々と考えてるのさ。ティオたちに渡す武器はもう完成してる、後は人型兵器を造り上げるだけだよ。これが終わったら、しばらく寝かせてもらうとするかな?」

 『そうしてください』


 ノアからの小言を受けて、苦笑いする。この子はなかなか親離れができないな、と思いながら。


 『マスター?』

 「……いや、なんでもない。行こうか」


 一度足を止めた僕に声を掛けるが、僕は首を振った。時間が時間だ、こんな夜明け前に女の子の部屋を訪れるのも失礼だろう。通り掛かった部屋の前で足を止め掛けるが、すぐにまた歩き始める。

 考えたのは別れてから顔を見せない、あの女の子のことだった。

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