【第9話】第一町人と冒険者協会
教会らしき建物・・・。
面倒なので「教会」でいいか。
教会から見下ろした際にざっとではあるが街の全容を見ることができた。
この街は教会側を北と仮定したとき、南へ長方形のような形状で広がっており、
街の中心には割と大き目な建物が立ち並んでいる。
中心地には大きな十字路があり、そこから四方に街路が伸びていき、それぞれ街の外に続いているようだ。
その十字路を町の中心とするならば、ここはそこから北西にあたる位置にあるということだな。
建物は基本的に石造りで、屋根は平らな陸屋根だ。
2階建て程度のものが多い。
町の外周を見渡すと、内外を隔てる壁が張り巡らされており、出入りを制限しているようだ。
・・・・
今日の社長プレゼン間に合うか?
ふと、現実に立ち返る。
このゲームを始めてから体感でも2~3時間は経っているように感じる。
体内時計と実際の時間経過のズレは分からないが、そこはかとなく焦燥感が湧いてくる。
・・・・まあ、まだ大丈夫か。
ストーリーやらクエストやら分からない状態でじたばたしても仕方がない。
そもそも落ち方も分からないんだからな。
・・・・とりあえず町の中心に向かうか。
現実とゲーム双方に意識が飛び飛びになりながら、朝靄が漂う街中を進んでいく。
現在はメインの街路から外れた路地、恐らく住居エリアにいると思われるが、まだ早朝前ということもあり、人気はない。
・・・・いや、前方に人が座り込んでいる。
近づいてみると、薄汚れた身なりの中年の男が鼾をかいて眠っている。
アルコールの匂いが漂っていることからして、酔いつぶれたか。
まさかの第一町人が泥酔者とはな。
しかし、やはり現実への再限度が高い。
アルコールの匂いと、それに対する嫌悪感も感じる。
酒は好かん。
これは、ほぼ現実を再現していると思った方がいいな。
その上で、魔法とか奇跡とか現実に無いものを付け加えていく認識の方が、しっくりきそうだ。
あとは意外にも治安はそんなに悪く無いのか?
これは場所的な問題なのか、ともあれ路地で泥酔者がいても襲われないのは、まあ少し安心はするな。
酔っぱらいを観察するも、何も視覚には情報表示はない。
プレイヤーかNPCかも不明か。
碌なコミュニケーションも取れなそうだし、とりあえず接触は無しだな。
酔っぱらいを放置し、町の中心へ向かうことにした。
中心に向かうにつれ、農作物を台車に載せて牽く者、出店の準備を始めている者など、ちらほらと人影が増えてきた。
白人・黒人・黄色人種など、人種は多種多様で、男女も確認。
今の所、人外はいないな。
とりあえず人間中心の町ってところか。
暫しの間、忙しない人々を眺めていると、青果店の準備をしているであろう中年の女性と目が合う。
「なんだい?開店待ちって訳でもないだろうに。」
作業の手を止めるでもなく、声を掛けてきた。
まあ、ちょうどいいか。
「すみませんが、町に着いたばかりで、どこへ行こうかと思っていたところでした。町のことが分かる場所ってどこかにありますかね?」
とりあえず丁寧な対応で入る。
すると、中年の女性は俺の帯剣や盾を見つつ、
「なるほどね。・・・・あんた、見たところ冒険者が生業かね?だったら、「冒険者協会」がいいんじゃないかい?冒険者協会だったら中心の交差点にあるよ。あそこは年中無休でやってるから行ってみるといい。」
ほう、この世界ではギルドではなく協会ね。
「実はこれから冒険者になろうと思ってまして。ありがとうございます、早速向かって見ますよ。」
「今度は何か買って行っておくれよ。」
親切に教えてくれた青果店のおばちゃんに礼を言い、その場を離れる。
今度何か買うかな。
この世界で初めての会話。
恐らくNPCだとは思うが、至極自然だ。
特に意思の疎通にも感性にも乖離はなく、言語的にも問題なしと。
この分なら、通常のコミュニケーションは取れそうだ。
職業選択で、選択したのは「冒険者」。
ならば冒険者になるのが、筋ってもんだろう。
筋道どおり、冒険者協会に向かって見るとしようか。




