【第5話】ジョブ選択
とりあえずのログアウトできない問題は置いておいて、行動を開始するとしようか。
アイテムボックス?から取り出した銀貨袋を収納してみる。
アイコンをタッチし、収納空間が出ていることを確認した後に銀貨袋を持って意識を集中してみる。
・・・反応なし。
今度は銀貨袋を収納空間に近づけて、改めて収納の意識を向ける。
手から銀貨袋が消失し、イメージに反映された。
なるほど、取り出しは表示した後に意識するだけで顕現、収納は実際に空間に納める動作が必要と。
ルールさえ分かれば問題なく使えそうだな。
取り出しのしやすさが、戦闘の局面で活かせる予感がする。
さて、お次は如何にも何かあります的な、目前の水晶のような石柱。
うっすらと燐光を放つ石柱は、暗いこの空間においては一層幻想的な雰囲気を醸し出している。
定番なところだと、セーブポイント、転送装置、能力付け機能・・・・ってところか。
さて、そんな重要装置だったりするのか?
とりあえず近づいてみよう。
30cm程まで近づいたところで、石柱の光が強くなる。と共に俺の体にも変化が現れていた。
胸の辺りが温かい。
見下ろすと服の下、左胸の辺りが発光している。
・・・よく見ると光源はダイアモンド型の結晶のようだ。
服をまくると、左胸に長辺が5cm程度の結晶が半ば埋め込まれた形になっている。
石柱と同じような素材に見える。
なるほど、この石柱とコレが反応してるって訳か。
人外要素・・・・絶対に何かあるな。
更に石柱に近づき、右手で石柱に触れてみる。
視界に半透過な形で画像が表示される。
こういう非現実な現象を目の当たりにすることで、改めてVRの中にいることを再認識させられるな。
ごちゃごちゃと視界内に情報が表示されているが、まとめるとジョブ選択ができるらしい。
多言語が同時に表示されていて全て確認できないが、恐らく日本語の他言語版ということだろう。
そういうことにしておこう。
英語もそれっぽい表現だしな。
ー 選択可能ジョブ ー
1 冒険者
オールラウンダー、ほぼ全てのクラススキルを習得可能で適性武器が多いが、スキルLv上限が専門職に比べ低い。
2 戦士
物理攻撃の専門職。近接攻撃系スキル、遠距離スキル、あらゆる物理系武器への適性が高い。魔法・奇跡習得不可
3 盾持ち
物理攻撃・魔法攻撃・状態異常への耐性が高く、防御系スキルを数多く習得可能。戦士には劣るが攻撃系スキルの取得も可能。防御系の魔法のみ取得可能。奇跡習得不可。
4 魔法使い
主に攻撃系の魔法を得意とする。耐久度は低いが遠近共に攻撃の面において活躍する。奇跡習得不可。
5 僧侶
奇跡により、傷の修復や浄化が可能。物理武器は鈍器に限り適性を持つ。魔法習
得不可。
6 盗掘人
偵察能力、危機察知能力に優れ、罠解除スキルを習得可能。スカウト系の魔法のみ習得可能。奇跡習得不可。
おもむろに手を石柱から離してみると、視界から選択可能ジョブが消失し、再び手を石柱に当てると同じ内容が表示された。
・・・・妙な気持ち悪さを感じる。
再び石柱から手を放し、考え込む。
大抵のVR系RPGだと、まずはキャラメイク後にジョブ選択やステ振りなどを行うことが多いが、このサンクチュアリは何のヒントもなくフィールドへプレイヤーを放り出してきた。
もしこの石柱に触れなかったら、ジョブ選択すらなく進行することになるし、普通逆じゃねえかって感じがする。
まあ光る石柱は思いっきり怪しいしな、大方のユーザーは気づくとは思が・・・・。
どうやら気づけない方が悪い的なノリで作られているような気がするな、このゲーム。
または、あえてジョブを選択せず、縛りプレイ的に無職プレイも可能にしているとかか。
こんなノリだと、初見殺しとかも平気で搭載してそうだな。
今の所ステータス表示もないからHP管理すらできないが大丈夫か?
ログアウト画面すらないゲームで、初っ端から不信感溢れる状況だ。
さっさと死んで強制終了にでもするかという悪魔の囁きと、慎重に選べという頭の片隅から不安感を煽る天使の囁き。
・・・・
ふむ、折角のゲームだ。
適当にやっても詰まらんし、ここはどっしり腰を据えてやってやろうじゃないか。
・・・・
改めてジョブ選択画面を注視する。
まず、表示されているのはジョブとその説明のみ。
キャラメイクやステータスを選択出来るボタン等は無し。
予想通り、世界観は剣と魔法だな。
このリアルなテイストで魔法がどう表現されるか楽しみではある。
この時点で確率的に高いと言えるのは、キャラメイクがないということだ。
魔法みたいな演出がない限り、今の見た目から変わることはないだろうからな。
・・・・まあ無くはないだろうが。
キャラメイクができないということは、顔はともかく、身長はこれで固定の可能性が高い。
周りを歩いて、無造作に置かれている長椅子に座ったり、司教用?の机から自分の身長を割り出す。
概ね現実と同じだ、というかそのままの可能性が高い。
とりあえず175cmくらいあるということだ。
次に体つき、腕・足のの太さ、全体の筋量、これも現実と変わらないか。
完全に不審者だが、薄闇の家屋内で全力の反復横跳びをしてみる。
・・・・
50回くらいで息が上がり、太もも、ふくらはぎに負荷がかかっているのが分かる。
ほぼ現実の体力だな。
返す返すもリアルすぎるだろ。
ということは恐らく現実の身体的情報をそのままVRに取り込んでるってことか。
やばいなこの次世代機。
パーソナルデータの取得許可とかそんなことはお構いなしってか、こりゃユーザーに訴えられるぞ。
更なる制作者への不信感が育ちつつも、ここまでで分かったことがまた増えた。
現実のデータを元としているため、現在は身体的に決して優れているとは言えないこと。
今後ジョブやスキル、ステータス、アイテムなどの要素で、素のステータスをどの程度補えるかという点が非常に重要だということ。
新たに分かったことはこんなものだが、まずもってゲームの目的も不明だし、戦うべき相手も不明な状態。
ただとにかくゲーム側としては、ジョブを選べと。
まあ無職も許容されてはいるが。
結論から言うと、俺が選択すべききジョブは一つしかないな。
正確に言えば、取らざるを得ないと言ったところか。
冒険者。
これ一択だ。
少なくともステータスや初期スキルがよっぽど他と比べ不利でない限りはな。
理由?
そんなのは決まってる、ソロプレイヤーだからだ。
ゲーム内でも人に合わせて遊ぶなんて真っ平御免こうむる。
コミュニケーション?共闘?
そんなもの面倒でしかない、仕事だけで腹一杯だ。
・・・・ただのコミュ障だと自認はしている。
まあともかく面倒なのは事実だし、積極的に人の感情になど触れたくもない。
そんなものから隔絶された世界、それが許容され、貫ける場所、それがゲームだと俺は思っている。
実際には制作者の思惑で、否が応でもマルチプレイを強要される場面もあるが、流石にそれくらいは受け入れるさ。
ただこの場で選択し得ることは、多人数でプレイを進行することを前提としたジョブ選択は俺には取れない、ということだ。
まずスキルという存在が明示されている。
これは一定の能力にバフを掛けたり、特殊な行動をとれたりすることができることを示している。
冒険者は、ほぼすべてのスキルが習得可能ではあるが、他のジョブに比べスキルの上限Lvが低いと明示されている。
オールラウンダーとは聞こえは良いが、要は器用貧乏ってことだろうな。
実際の所、専門職で固めたパーティの方が絶対的に効率は良いだろう。
・・・・パーティ内で良好な関係が継続できるならな。
特化できる部分がない、それが冒険者というジョブ。
後先考えないプレイでは、特化型を選択しぶっ放すのも良いのだが、ここは慎重に選べという天使側の囁きに乗ろう。
まあ器用貧乏が地雷となるゲームは多数あるが、俺が決め手としたポイントはこうだ。
1 奇跡で傷の修復が可能なこと。
2 状況に応じて武器を選択できること。
3 罠の存在があること。ダンジョンなどに設置されているんだろう。王道の宝箱にも仕掛けられているかもな。
4 スカウト能力全般を習得できること。
これらをまとめると、「生存能力」が高いってことだ。
まあそれぞれの場面で適切な選択ができればってことだがな。
他の専門職でも、プレイスタイルによってはソロでも行動することは可能だろう。
しかし継続戦闘能力、継続探索能力、これらを念頭に入れると、俺は冒険者を選ぶ。
・・・・そう結論づけるも、結局は好みだ。
さて、ジョブ選択の理由付けも終わったことだし、実際に選択して、恐らくその後に続くであろうステータスやスキルの選定へ進むとしよう。
流石に初期設定だし、ステータスやスキルを見てから再選択はできるだろう。
まずは冒険者の内容から確認していこうか。
指で空間に浮かぶ冒険者を選択、念押しの同意ボタンが出たので再度選択。
ー 坂田ゴンゾウ、冒険者Iとして登録完了 ー
頭の中に、どこかで聞いたことがあるような中性的な声が響き渡る。
ん、登録完了だと。
空間にはスキルらしき一覧の表示に切り替わっている。
・・・・
戻るボタンねえや。
・・・・
・・・
・・
・
・・・・クソゲーじゃね?




