【第11話】セイクリッド王国
資料室には人影もなく、様々な大きさの本が棚に並べられていた。
書棚は部屋を囲むように配置され、中央には大きめの机が置かれていた。
机には大きく、「資料の持ち出し厳禁!」と張り紙がされている。
あんまり時間も食ってられないし、ささっと調べるか。
ざっと見渡すと、国のこと、町のこと、ギルドのこと、討伐対象のことが中心のようだ。
ゲームシステム的な情報はゼロか。
とりあえず、自キャラの育成をメインに考えて立ち回るしかないな。
……
……
……
1時間ほどかけて斜め読みをした結果、以下のようなことが分かった。
この町、ミザリータウンはセイクリッド王国の南方、サウザンディア地方に位置する中規模の町であること。
王政は町の自治を認めており、ファンタジー世界にしては、なかなか現代的な仕組みになっているらしい。
王国の国教はクリスタル教。
教義は「人はクリスタルから生まれ、クリスタルに還る」というもの。
そして、「人を殺すなかれ」。
平和主義の国かと一瞬思ったが、実はそうではない。
セイクリッド王国の歴史は、魔物の襲来とその防衛の歴史でもあった。
人間同士で争っている余裕などない、ということらしい。
モンスターは不定期に一つ、あるいは複数の町を襲撃し、蹂躙していく。
過去にはいくつもの町が灰燼と化し、王都も幾度か陥落しかけたことがあるという。
王国は魔物討伐軍を組織して対処しているが、襲撃の察知が遅れることもある。
そこで存在感を放つのが、冒険者協会というわけだ。
協会は緊急時には国の一機関としての役割も担うが、通常は町や個人からの依頼を仲介するのが主な役割らしい。
要約すると……
「魔物が町を襲ってくるから、落ちないようにどうにかして守れよ」ってこと。
じゃあ、「冒険者となった」俺の立ち位置は?
王道でいうと、依頼をこなしながらLvやスキルを向上させ、いずれ来る緊急ミッションに備えて活躍する、ってところか。
それはさておき、記録を見る限り、守り一辺倒の印象だ。
それだけ攻め込む余裕がないってことかもしれない。
町の様子からは、そんな切羽詰まった緊張感は感じられなかったがな。
魔物図鑑もざっと見たが、細かい記録はなく、あまり参考にならなかった。
定番のゴブリン、スライムから、動物系、精霊系、アンデッド系、聖獣系、竜系まで一通りいるようだが、能力や特性までは分からなかった。
ただ、王都を壊滅しかけたのは、魔神「アスラ」という存在らしい。
魔剣の一振りで王都の一角が吹き飛ぶほどの力だったという。
まあ、歴史は大げさに書く傾向があるが、そんなもんがいきなり出たら逃げ一択だな。
よし、こんなもんか。
プレイヤーの成長システムをどうにかして解明することが急務だが、とりあえず依頼を受けて試してみるしかないな。
2階の資料室をあとにして、再び1階の受付カウンターへ向かうのだった。




