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【完結】エイプリルフールには太陽と青い海を  作者: 久茉莉himari


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【4】真っ赤なスニーカーが告げた、正義の宣言

次にアリスは、微笑みながら訊いてきた。


「レンに与える罰って何?」


僕の背筋に悪寒が走る。


すると突然、アリスがその場で立ち上がり、バレリーナのようにクルリと回った。


艶やかな長い髪が揺れる。


アリスは悪戯っ子のように笑い、


「レンが教えてくれるまで回り続けるよ!」


と言うと、本当に三回、四回と回り続けた。


携帯の中で、アリスと背景がクルクルと回転してゆく。


唖然と見ているうちに、僕はアリスが倒れてしまわないかと不安になった。


そして、思わず立ち上がり叫んでいた。


「混ぜるな危険!」


アリスがピタリと止まる。


息も乱さず、にっこり笑った。


「レンをギリギリ息の出来る水の張った浴槽に寝かせて、

『混ぜるな危険』の洗剤を混ぜる。


それから…そうだなあ…15分くらい放置する。

監視付きでね。


正解?」


「せ、正解…。

どうして分かったの?」


「アメリカなんかじゃ広く知られている幼児虐待の手口だから」


アッサリと言ってのけるアリスに、僕はヘタヘタと座り込んだ。


「レンは賢いから、逆にそこを利用されたんだ。


『混ぜるな危険』の意味を良く分かっていたから。


絶対に顔が水に浸らないように頑張ったんだね」


独特なやさしい声に包まれて、僕は嗚咽して何も答えられなかった。


不様に泣く僕に、アリスが、やさしい――本当にやさしい声で、ポツリ、ポツリと質問をしてくる。


僕は嗚咽が収まると、それでも泣きながら必死で答えていた。


なぜなら、それが――


僕の地獄を理解してくれるアリスだけが、僕の『正義』だと思ったから。





そして二日後、何とかアリスと会うことが出来た。


場所は、初めてアリスと出逢った川沿いにある遊歩道。


時間は15分くらいしか取れなかったけれど、アリスは「十分だ」と言ってくれたし、僕もアリスに会えるなら、それだけで十分だった。


アリスは初めて会った時のように、遊歩道から川を見ていた。


僕が「アリス!」と声を掛けると、アリスが振り返える。


その美しい姿に僕は見惚れた。


アリスの持つ凄まじい透明感のせいか、履いている真っ赤なスニーカーがやけに目についた。


アリスはニコニコと無邪気に笑うと、突っ立っている僕に一歩一歩近付いてくる。


そして、か細く白い人差し指で僕の頬をスッと撫でると、あの独特なやさしい声で言った。


「消してあげるよ」


僕は確か、「何を?」「何が?」と訊いたと思う。


だが覚えていない。


ただ、ただ、再び会えた喜びで胸が一杯だったから。


アリスがやさしく微笑む。


少し冷たい春の夕風が、僕たちを包む。


「レンの不幸を全部消してあげる」


「…どういうこと…?」


僕が何とか絞り出した声に、アリスは小首を傾げてフフッと笑うと、


「今夜も温室からビデオ通話しよう!」


とだけ言った。


そして、欄干に立て掛けてあった真っ赤な自転車に飛び乗った。


僕は突然のことに何が何だか分からなかった。


呆然としている間に、アリスは振り向きもせず、自転車で去って行った。


もっと直接話したかった。


けれど、今夜もまたビデオ通話出来る。


それが嬉しかった。


僕は「今度はアリスになぜ髪を伸ばしているのか聞こう」と、呑気に考えながら帰宅した。


――その夜だ。


母が一家心中を決行したのは。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

この作品は 毎日17時更新です。

最後まで完結させるつもりですので、どうぞお付き合いいただければ嬉しいです。


現在「小説家になろう 文芸コンテスト」に参加中です。

もし少しでも面白いと思っていただけましたら、感想や評価で応援していただけると、とても励みになります!

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