第一話 説明って大事ですよね
ちょっとずつ改変してあります。
頑張って姉視点で、できればテンポよく進めたい……。無理ぽだけど!!
あの後、混乱と羞恥に半パニックになっていた私に「失礼します」と言って、銀髪美形は私の腕から全裸の妹(まだ寝こけてる。我が妹(仮)ながら図太い)を抱き上げ、私自身は一言も喋っていないけど目は口ほどに物を言うを体現している(つまりは恍惚そうな眼)の赤と金の混じった短髪美形に抱き上げられ、あれよあれよという間に連れて行かれたのだ。
ちなみに、私が勝手に妹(仮)としていた子は、本当に妹でした。
『何かね、重くて痛い衝撃を受けたなって思ったら意識が途切れて、目が覚めたらお姉ちゃんが居たの! よかったー』
『そうかい、よかったね。いや、ホント、良くないけど良かったよ………』
つまりは二人とも、たぶんトラックに跳ねられて死んだというわけで。
自分だけなら「そんなこともあるか」と思うだけだけど、妹まで死んでいたとなると、何とも言えない心境だった。
たとえ意識を失ったと思ったら、異世界で魔族として生まれ変わっていても。
しかも前世の記憶持ち。姉妹そろって。本当これ何てファンタジーだろうね?
(まあ、この子が魔王ってのは何となく理解できるけど、なんで私が王妃よ?)
妹のユキハは姉の私から見ても色々万能型な出来る美女だった。
幼い頃から勉強も運動も人並み以上によく出来て、性格は聖人君子とは言わずとも人に嫌われない良い性格だったと思う。
対して姉の私は平々凡々を地で行く感じで、勉強はまあまあ、運動はできればしたくない、性格は内向的。
周りには何かと比較されていたけど、私自身はそれを気にしたことはほとんどなかった。
どうしてかと言われても、外の評価は私にとってそれほど重要ではなかったからとしか言いようがない。
私が何より気にしていたのは、妹のことだったからね。
私と比べて愛想も良く笑顔も可愛い妹は、誰からも愛されるから誰からも引っ張りだこなのに、いつも必ず「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と言って私の後をついてくる。
可愛くないわけがない。年が五つ離れているのも相まって、そりゃあもう可愛がった。
私の宝物といっても過言ではない。友人には「このシスコンが!」と呆れられるほどにだ。
話が逸れた。
詰まる所、妹が「最初からチートの最強魔王」でも全然不思議はないんだけど、私が《魔王妃》というのが解せぬ。
ちなみに《魔王妃》とは、人間界での「王妃」とは違うらしい。
人間界の「王妃」といえば、王さまのお妃さま、つまりは奥さんということなんだけど、ここ魔界では、「王妃」とは魔王の次に強い魔力を持つ者がその座に就くらしい。
基本的に《魔王妃》は魔王が生まれる前後に無から《妃石》という魔石の一種が生じ、そこから生まれる。(ちなみに魔王は《魔王石》という特別な魔石から生まれるらしい。)
そして《魔王妃》の使命とは、何事にも魔王を優先し、魔王至上主義の代表格にして、有事の際には魔王の命令すら無視してひたすら魔王を守るためだけに存在する。…………らしい。
うん。取りあえず、魔王クラスタなのかな。と、私は勝手に納得した。
日本人やってた時でも散々「シスコン」だと言われた身で、自覚している私は別にそれには反感も何も浮かばず、むしろ「それ当り前じゃね?」と思ったくらいだ。
妹なんかは、「お姉ちゃん王妃さま? 私の奥さん!? 何それ楽しい!」とかなりの上機嫌で、自分が魔王だと言われたときは「私魔王さまなの? じゃあなんか失敗しても怒られないのかな!?」とかなり真剣に聞いてきた。仕事で上司になんか言われたのかね。
まぁ、兎にも角にも、もしも魔王が妹以外だったら「なんで私が」と思ったかもしれないけど、幼い頃から大事に大事に可愛がっている妹が相手なら然もありなん。
妹を守るのはお姉ちゃんの役目です。たとえ年食っても。
というか、二人とも若返ってましたが。
何ていう、しょうもない回想にふけっている間に、私は妹に手を引かれて魔王城(とっても立派で巨大な西洋城です)の一角にある果樹園へと向かっていた。
(にしても、見た目だけなら年齢逆転してるんだよね……)
妹は現在十二歳くらいの黒目黒髪美少女になっており、対する私は姉なのに十歳ほどの少女の姿なのだ。
これにも一応わけがあり、歴代最高の魔力を持つといわれる妹は、十二歳くらいの今の姿が、膨大すぎる魔力を危なげなく使用できる最小サイズ(年齢?)らしい。
対して私は、魔王ほどの魔力はないので、十歳程度の体で適応可能と。まあ、それでも歴代魔王妃の中でトップクラスらしいけど。
ちなみにちゃんと成長するらしいんだけど、何せ魔族は持っている魔力量によって寿命と成長速度が変わる生き物らしく、私も妹もかなりゆっくりな成長と気が遠くなるほどの長寿を得ているらしい。
「まあ、あんたがいるなら退屈はしなさそうだけど……」
「え、なぁに、お姉ちゃん?」
「なんでもー」
だだっ広い廊下を手をつないで歩いていると、向かいからだいぶ見慣れた赤と金の混じった短髪美青年がやってきた。
「魔王さま、魔王妃さま。どちらへ?」
「あ、ラズ! ササラの果樹園だよ! ピクニックするのー」
「お供しても?」
「いいよー!」
にこにこと妹が返事を返すと、あまり表情筋が仕事しない系の美青年はふっと嬉し気に炎のような真紅の瞳を和らげた。
そのまま右腕に妹を、左腕に私を抱き上げ、歩き出す。
視界の高くなった妹は楽し気に笑っている。すっかり外見年齢にあった振る舞いが板についてきた。
私たちを事も無げに両腕に抱き上げて平然としているこの男は、私たちが目覚めた(生まれた?)ばかりの時にやってきた二人のうちの一人だ。
名前をラズフェアリフォス・ウルズ・フェクト・ユリナエール・フォノス・フェニスというらしく、鳥族の長であり、魔王不在の際は代理で魔界をある程度統治する四大公の内の一人らしい。
ちなみに名前が長すぎるので、私たちは「ラズ」と呼んでいる。
最初は見たこともない美形にたじろぎまくっていた私(妹は早々に順応していた)なんだけど、三週間もしないうちに慣れた。今ではこんな風に片腕に抱き上げてもらってもドキドキもしないくらいには。
ラズはあまり雄弁な方ではないらしく、おまけに表情筋がしょっちゅう仕事をさぼる。この辺は私、ひそかにとっても共感を覚えている。
何せ、私自身もあまり表情筋を動かしたくない派なので。だって疲れる……。
「ラルルさんがフルーツサンドイッチを作ってくれるって言ってたよ!」
「でかした」
「ふふふー。もっと褒めてもいいのよ、お姉ちゃん! あ、ラズも食べる? フルーツサンドイッチ好き?」
「食べたことがないので、わかりません。仰せとあれば、なんでも食べて見せますが」
生真面目に返すラズに、妹は「嫌いなものを無理に食べさせたりなんてしないよー」と笑っていた。
ラルルさんとはこの魔王城で唯一の料理人で、日々私と妹のためにいろいろな食事を作ってくれている人間だ。
魔界に人間がいるなんて普通ならおかしな話だけど、そこはそれ。色々交渉しておいで願ったわけだ。
主に私と妹の食事事情のために。
歴代最高の魔王と魔王妃である私たちは、内包する魔力も底知れないため、人のような食事は必要ない体になっていた。
けど如何せん、人間やってた記憶が鮮明にある分、食事は一種の楽しみになっているのだ。
食事という楽しみを知っている上、食べることもできると知ってからは「じゃあいいじゃん。嗜好品だ、嗜好品」ということで、毎日何かしら作ってもらっている。
主にデザート系を。
ちなみにラルルさん、人間界では腕のいい料理人さんでお店も持っていたんだけど、大手の飲食店の嫌がらせが過ぎて店を潰され、独身の上天涯孤独だったため頼れる人もなく路頭に迷っていたところを妹が見つけた。
衣食住の絶対保障と、身の安全の保障と引き換えに魔界で料理人をしてもらうことに、ラルルさんは大して悩まず承諾してくれた。
いわく、「私の料理を食べたいと言ってくれる人のために何か作れるなら、そこが魔界でも構いません」ということだ。
何とも奇特な人だな。おかげで助かってるけど。
「あ、ほら! お姉ちゃん見て!」
「おぉー。綺麗に咲いたなぁ」
ラズの腕に抱えられたままついた先には、白い幹に桃色の葉とそれよりも濃い紅色の小さな六花をたくさん咲かせた果樹並木が見えた。
《ササラ》という樹で、六花が散った後には桃のような甘い果実が生るのだ。
「おや、魔王さま、魔王妃さま。ご機嫌麗しゅう」
「オン爺元気ー? お花見ついでにピクニックしに来たよー」
果樹並木の中で、一人黙々と手入れをしていた初老の男性は、私たちに気づくと手を止めて笑いかけてくれた。
彼はこの魔界で唯一の庭師であり、魔王城の植物の世話を一手に引き受けているお方だ。
ちなみに魔族である。
人型の魔族を総じて「魔人族」と呼び、オン爺ことオリオン爺さんはその魔人族の一人で、長い間人間界で人間の振りをしつつ植物いじりをして楽しく暮らしていたらしい。
ちなみにオリオンという人間臭い名前(ほかの魔族はやたら長い上に舌を噛みそうになる)は、一度は恋仲になって夫婦にまでなった人間の娘につけてもらった名前らしい。
その彼女を寿命で亡くして割とすぐ、これも都合よく妹が見つけてきた。
理由は簡単、私たちが甘いもの好きで、尚且つ私自身が果物好きだったからだ。
悲しいことに、魔界には人間界のような甘い実の生る果樹はないらしく、あってもお菓子などに加工して食べるようなものではなくむしろ微毒を含んでたり猛毒の果樹だったり、進んで食べたいと思うものではなかったのだ。
おまけに、人間界の植物を魔界で育てるのは少々不向きということで、これは本格的に植物の世話をできるエキスパートが欲しいと思っていた所で、妹の千里眼にオン爺が捕まったのだ。
人間界の植物を魔界で育てるための環境造りは、妹と私の規格外な魔力で万事解決(魔力ってすごい)、あとはオン爺に上手に世話をしてもらえているので、どの植物も順調に育っている。
ちなみに彼の外見が初老なのはわざとやっているらしく、その気になれば若々しい姿にもなれると言っていた。
お爺ちゃん姿でも紳士っぽいので、若い姿だと相当イケメンなのではとひそかに思っている。
まあ魔族の人型って基本美男美女しかいねぇけど。(私除く。あくまで私は平凡派だ。前と外見あんま変わらないし、たぶん。)
「ラズフェアリフォス様も、お変わりないようで」
穏やかに笑うオン爺に無言でうなずくラズは、別に彼を嫌っているわけではなく、私たちと四大公以外にはあまりしゃべらないだけだ。本当、無口な側近だな。
「そうそう。先ほどラルルがこれを届けに来ましたよ」
オン爺がササラの樹の木陰に準備されていた白いテーブルとセットのお洒落な椅子を指す。テーブルの上には一抱えほどあるバスケットが置かれていてる。
「ありがとー、オン爺」
にこりとお礼を言い、妹はラズの腕から下ろしてもらうと、パタパタと小さな足でテーブルセットに向かう。
ついでに私も下ろしてもらい、のんびりと妹の後を追った。ラズは無言でその後ろを付いて来る。
せっかくテーブルと椅子をセットしてもらったけど、妹の要望でそれらは使わずに、直接草茂る地面に座ることになった。うん、ピクニックらしい。
もちろん、オン爺がどこからともなく出した立派な敷布の上からだけど。
バスケットの中には、宣言通りのフルールサンドと、ティーセット。
ポットは魔力で保温を維持されていて、揃いになっているティーカップに注ぐだけというお手軽さだ。
サンドイッチを取り出している妹の代わりに、私はティーセットをバスケットから取り出し、まず先に妹の分を入れる。
それからラズとオン爺にも要るかと聞いてみたけど、二人とも遠慮しているのか要らないと言ったので、素直に自分の分だけを入れてポットはしまう。
それからは、のほほんと姉妹仲良く日光浴しつつ、樹の幹にそっと寄り添って無言でこっちを眺めているラズと、時々私たちを見て微笑ましそうに笑いつつ果樹の手入れをしているオン爺とで平和な時間が流れた。
本当、平和だ。
ここは魔界で、隣で美味しそうにフルーツサンドを頬張っているのは魔王な妹なのに。
(世の中よくわかんねぇな)
取りあえず私も、ラルル作フルーツサンドを頬張る。
イチゴに似た果実と柑橘系のフルーツに程よい甘さのクリームがふわふわの薄パンに挟まれていて、彩もきれいだし、何より美味しい。
ラルルさんは毎回いい仕事をしてくれます。
「おいしいねー、お姉ちゃん」
「うん。そうだね」
だがしかし、そんな平和は唐突に終わりを告げる。
本当もう、これ何てファンタジー? みたいな筋書だけど。
「魔王さま、魔王妃さま、こちらにおいででしたか!」
「あれ、どうしたの、カルナ?」
やって来たのは、銀色の綺麗な長髪と緑の濃い碧玉の瞳を持った、天使と見紛うばかりの長身痩躯の美形。
優しそうな面立ちながら、初対面で感極まって私たちに突撃かまそうとして滔々と私たちについて話してくれたのが彼だ。
カルナエル・イーク・ファフス・ヴォーヴァンクル・ニクス。夢魔族の長であり、四大公の一人で魔王の側近。
ちなみに、魔王や魔王妃には到底及ばないまでも、現在魔族の中でかなりの高い魔力を持つようだ。
優しそうなたれ目でのほほんとした印象を受けるけど、四大公の中では上から二番目の年長さんらしく、結構策略家だ。一度年齢を聞いてみたけど、三百を超えたあたりで数えるのを止めたらしい。
そんな彼が、全然慌てた様子も見せないくせに、言葉だけは急を要するみたいに話すという器用なことをやってのけた。
「魔族領に人間の勇者が侵入した模様です」
うわ。こんな王道展開いらない。
思わず顔をしかめた私は悪くないと思います。




