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魔王と王妃ですが姉妹です。  作者: 大福うさぎ
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序章 これ何てファンタジー?

ちょいと色々改変しました。


これはファンタジーです。

作中の名称など、実際の人物・団体とは一切関係ありません。

また、同性愛表現ととれる表現もあるかと思いますが、閲覧の際は自己責任でお願いします。




抜けるような青い空。

まばらに浮かぶ白い綿アメみたいな雲がいっそ作り物めいたシーンで現実感を遠のかせていた。

何かの映画の冒頭や物語の序盤などで映し出されそうな青空だけど、あいにくとその美しさに感動する暇は私にはなかった。


「無事の誕生、心よりお喜び申し上げます。魔王さま、魔王妃さま―――!」

「…………は?」



真波柚羽(マナミ ユズハ)、二十七歳、独身。

久しぶりに五つ下の妹との買い物を楽しんでいたらトラック事故に巻き込まれ、死亡。

かと思いきや、異世界にて人外として転生していました。


……………やだこれ何てファンタジー?






「ねーねー! お姉ちゃん、ピクニック行こうよー!」

「えー、何しに?」

「ピクニックだよ! ほら、ちょっと前に植木したササラの樹。綺麗に開花したっていうから、見に行こうよー」

「あの樹かぁ・・・・・」


白い幹に桃色の葉が茂る果樹をぼんやりと思い出して、私は開いていた本にしおりを挟んだ。

すぐそばでは私の周りを催促するようにぐるぐる回ったり服の袖を引っ張ったりしている、可愛い妹・雪羽(ユキハ)


(こういうところは、全然変わってないんだよねー)


妹の可愛い催促を見やりながら、ふと思い出す。

基本出不精な姉を、何とか外に連れ出して一緒に遊ぼうと必死に誘う妹。あの頃から全然変わらない。

――――たとえ、一回事故で死亡して目覚めたらどこぞの異世界で人外になっていたとしても。





ことの起こりは私が二十七歳、妹・ユキハが2二十三歳、ともに独身で毎日せっせと仕事をしつつもたまに息抜きを楽しんでいた現代日本。

ユキハが新社会人になって初めてのボーナスをもらえたと言って喜び、休日を合わせて久しぶりに二人でショッピングを楽しんでいた時だった。

正午を過ぎたそれなりに交通量のある交差点で、何やら様子のおかしい運送トラックが結構なスピードで突っ込んできた。ちらっと見えた運転席では運転手がぐったりとハンドルにうつぶせていたので、居眠りか急性心不全とかかもしれない。

周りにもちらほら人がいたのに、狙ったようにトラックの正面から跳ね飛ばされたのは、私たち姉妹だった。

なんだかものすごい鈍くて重くて痛い衝撃を感じたと思ったら、私の視界はぐるぐると回り、そのまま何を認識する前にブツッと途切れた。

意識が途切れる最後の瞬間に思ったことは、妹は大丈夫だろうか、ということだった気がする。



そしてこれまた唐突にふっと意識が戻って、視界いっぱいに広がる広い青空。


「あれ?」


事故に遭った記憶は確かにあるのに、それからどうしたのだろう?

首を傾げそうになるも、ふと感じた肌寒さ。やわらかい風が肌を直接撫でていく感覚に、反射的に身震いをして両腕で体を抱きしめた。


「——―——―なんで服着てない!?」


びっくりした。思わず声に出して突っ込むほどびっくりした。

しかもそれなりに大人の女性として発育していた身体が、縮んでいた。というか、なんか若返ってる。

大体十歳前後だろうか。ちんまい手に、つるぺたな胸部。短い脚。そしてなぜか全裸。

そしてすぐ隣に、見覚えのあるこれまた小さな少女が同じく全裸で倒れている。

その脇には、バスケットボールより少し小さいくらいの、黒曜石みたいな珠が真ん中から割れて砕けたような残骸があった。残骸から見て、たぶん二つ分だろうけど、何だろうこれ?

いやそれよりも。この隣の少女はもしかしなくても………。


「ユキ、起きてユキ! 雪羽(ユキハ)ちゃーん! ゆっきー起きて!!」


私は全力で、意識のない黒髪の少女の、細くて白い肩を揺すった。

なんか見た感じが、小学六年生になりたての十二歳くらいの少女なんだけど、顔立ちに見覚えがありまくる。

特に確認したわけではないけど、私はこれを生まれてから二十二年間姉妹として過ごした妹だと勝手に判断した。


しかし、我が妹(仮?)はいくら揺すっても起きない。

混乱しつつも何かないかとようやく周囲を認識するために視線をめぐらすと、そこは、いつか何かの小説で読んだ神殿のような白亜の柱が並ぶ場所だった。

私たちがいる場所を中心として、6つの白い柱が周囲を囲み、しかし天井に屋根はなく屋外に白亜の土台とその上に立つ柱。

一方には同じく白亜の建物がつながって見えているし、ひゅお―――と吹いた風の音で、ここがどこか高いところにせり出している神殿(仮)なのではと思っていると、ふっと空気の密度が変わった気がした。


視線を巡らせると、白亜の建物とつながっている入口に、見知らぬ二人の男がいた。


「…………」


反応に代わり映えがなくて申し訳ないけど、私はびっくりした。というかもう唖然とした。

見知らぬ男たちは、生まれて二十七年間日本で暮らしていた純日本人の私が今まで見たこともない美形だった。


方やファンタジーでおなじみの虹色の光沢を放つ銀の長髪と男か女かわからない天使張りのたれ目美形。

方や炎を思わせる紅と金の混じった髪に猛禽類を連想させる切れ長の釣り目をした美丈夫。浅黒い肌が健康そうです。

美形二人は何やら涙ぐんだ恍惚とした顔でこちらを凝視。

ちょ、こっち見んな。


「無事の誕生、心よりお喜び申し上げます。魔王さま、魔王妃さま―――!」

「…………は?」


小さくなったとはいえ女の子を凝視するなと反射的な羞恥と混乱で叫びそうになった瞬間、銀髪美形がそうのたまった。

しかもそのまま勢いでこちらに駆け寄ってくる。

思わず私は「ひっ」と短い悲鳴を上げて、反射的にまだ寝こけている妹(仮?)を抱き寄せた。


「見てんじゃねーよこのヘンタイ!!」


言葉が汚いのは許してほしい。

だって怖い。平々凡々な日本人を二十七年間続けていた私には、この人外魔境と言わざるを得ない美形には恐怖しか感じなかった。

そして何より、体を隠すものがほしかった。


しかし、銀髪美形は私の叫びなんぞ聞いていないのか、二メートルほど手前で止まるとザッとかっこよく跪いた。それはもうカッコよく。

もう一人の短髪美形も同じように跪いて、もう何がないやらわからない私。


「大変ご無礼致しました。歴代最高ともいえる魔王さまのお姿を目にし、我を失いましたことをお許しください、魔王妃さま」


滔々(とうとう)としゃべり出す銀髪美形。

彼の話を要約すると、こうだ。


―――私たちが今いるのは魔界で、今私の腕の中で寝こけている十二歳に若返った我が妹は魔王(しかも歴代最高の魔力を有するそうだ。それってつまり最強ってこと?)。

そして、十歳くらいに若返った私自身は、魔王妃という、魔王の次に魔力の高い存在だという。


何がそんなに嬉しいのかキラキラとかそんな優しい表現が生易しいくらいの熱視線で語る銀髪美形に、一言も喋らないくせにこっちを穴が開くほど熱い視線で凝視する短髪美形。

そろそろ私の中で何かが切れそうだ。


「これは僥倖(ぎょうこう)です。魔王さまと魔王妃さまが同時に誕生するなど、我ら魔族の歴史の中でも珍しい。更にはお二人とも、こんなに素晴らしい魔力をお持ちで………!」

「ひっ―――こっち見んな!!」


感極まるを全身で体現したような銀髪美形が再びこちらに近寄ろうとしたのを、取りあえず全力で叫んで拒否した私は悪くないと思います。




拙いお話にお付き合いしてくださり、ありがとうございます。


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