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妙なウイルスバットについて行く道中、思わず俺達は足を止めた。
そこから先は帰らずの森の最深部。
今までとはまるで違う世界。冒険者にとって足を踏み入れる事を躊躇する領域だ。
人間だった頃に何度か入ったことがあるが、正直言えばもう二度と行きたくない。そんな場所だ。
現れるモンスターは兎に角手強く、執念深い。何より厄介なのは道だ。これまでと違い獣道と呼べる程の道も殆どなく、木々は見分けがつかないほどに高く太く成長している。そんな事もあり、一度入ると方向感覚を完全に失い簡単には戻って来れなくなってしまうのだ。
『ここから先は危険だ。特に今の俺達じゃあ……』
『あーしもそう思う』
『私は何だか寒気がする』
二人も同じ感覚のようだ。
今までのエリアと違って肉食のモンスターも多数存在する為、モンスターであっても捕食対象として襲われるリスクがある。
『どうしたでござるか? 拙者の屋敷までもう少しでござるよ?』
ウイルスバットは平然とした様子で喋る。本来であればこいつも俺たちと同じで捕食される側のモンスターなのだが……やはり何かあるな。
興味はある。だが……。
『悪いがここから先へは行けない。ワッフルとミラを危険に晒すわけには行かないからな』
『『グレイル……』』
『な、何と!? う、うぅ〜。それは参ったでござる。皆は拙者が命に代えても守る故、どうか何卒』
命に代えても……か。
『それは困るな。俺としてはお前にも死んで欲しくない』
『面倒臭い漢でござるなぁ』
『おい、今面倒臭いって言ったか!?』
元カノにも言われた事ないのに!!
『相分かった。拙者は死なない』
『おい! 無視なのか!? おい!?』
『そしてお主達を守ると約束しよう』
こいつ……無理矢理話を進めやがって。
だがこのウイルスバット、どうしても俺たちを屋敷に連れて行きたいらしい。
本当に帰らずの森最深部に拠点を持っているのならば、こいつにとってはこの先も庭同然か。道に迷わない確証さえあれば肉食のモンスターにだけ気をつければいい。ならば俺達でもどうにかなるか。
問題は万が一にでもこいつに何か悪い企みがあって俺たちを嵌めようとしていた場合だ。まぁ、無いだろうが一応頭の片隅にでも想定しておかなくては……。
『そこまで言うならわかった。だが、お前が俺達を守るように、俺達もお前を守る。俺とパーティを組め』
『本当に面倒……面白い漢でござる。引き連れている美女二人では飽き足らず拙者まで欲するか。ははぁん。さてはお主、ハーレムパーティを作るつもりでござるな?』
美女って何処にいるんだよ。
メスっちゃメスだろうけど、兎と芋虫だぞ? そんなのに発情するほど俺は落ちぶれちゃあ……。
◉
そんなつもりは無いんだがなぁ……。てかこいつ、薄々は感じていたがやはり女か。
『『グレイル……』』
二人の視線が痛い。
『べ、別に下心があるとかじゃぁねぇぞ? 同じ目的を持っているモンスター同士は協力するべきだし、お互いを大切にするべきなんだ』
『なるほど。立派でござる。だが心配御無用。拙者の強さはチート級故』
チート? 聞いたことの無い言葉だ。
『なぁ、ワッフル、ミラ、チートって何だ?』
『『さぁ??』』
二人も知らないようだ。
『随分な自身だな。……まぁお前が強いってのはとりあえず信じよう。それよりパーティを組むんだ。お前の名前を教えてくれ』
『拙者はミチルと申す。グレイル氏、ワッフル嬢、ミラ嬢、よろしく御頼み申すでござる』
俺達の名前を知っている。やはりこいつは……。
『俺達はまだ名乗っていない。けど俺達の名前を知っている。ミチル……お前、ミラと出会った日から俺達をずっと監視していたんだな?』
『なんと!? 気付かれておったか!』
『当然だ。俺を誰だと思っている』
『魔獣殺しのグレイルでござろう?』
『生前の俺のこと知ってるのか!?』
『知らんでござる』
ズコーッ!
『しかし拙者、グレイル氏が自信満々に語るのを聞いてしまったでござる。神獣グリフォンの首を両断! いゃぁ〜痺れたでござるなぁ。異世界にて初めて出会った二つ名持ち……しかも厨二病全開の二つ名! 拙者興奮が止まらないでござる』
ちょっと何言ってんだかわからない。厨二病って何だ? 少しバカにされている感じがされて腹立つが、本人はマジで感動しているみたいだ。……うーん、わからん。
『と、兎に角、俺達の自己紹介は必要無さそうだな』
『ミチル! よろしくね!』
『ミチル! よろ〜』
ワッフルとミラはミチルを歓迎しているようだ。
……にしても、新たな仲間はまた女。男は俺一人。そろそろ男の仲間が欲しいぜ。




