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「ば、馬鹿な……」
人間は崩れ落ち、やがて動かなくなった。
『やったー!! あーし達、もしかしてめっちゃ強くない!?』
『私も何だか余裕が出て来た気がする』
かれこれ人間討伐もこれで五回目。駆け出しや弱っている冒険者を狙っているとは言え、パーティとしてかなり安定して戦えるようになって来た。
基本戦術はこうだ。俺が囮になり、隙を見てワッフルが突進。相手の姿勢を崩す。そうやって確実に仕留められるタイミングを作り、最後はミラのボウガンで仕留める。
俺とワッフルにも決定打となる攻撃方法が欲しいところだが……今はまだ模索中だ。
『グレイルー! 見て見てー! 今回の人間は薬をいっぱい持ってるよ!』
遺体から回収した戦利品をワッフルは露天商のように広げる。
確かに回復薬が多い。持ち運びには少し苦労しそうだが、これだけ常備があれば安心して戦える。
……って、あれ? 薬の中に何やら光るものが混ざっている。これは……。
『……おぉっ!!』
『うわっ、ビックリした〜』
『ちょ、急に大声上げてどした!?』
『悪い悪い。これ見ろよ。マジックリングだ』
『『マジックリング??』』
マジックリング。装備者の魔力を消費する事で魔法が発動できる指輪型の魔道具だ。使える魔法はマジックリングに埋め込まれている魔法石の種類によって違うのだが……。
『簡単に説明するとな、これを付ければ魔法が使えるようになる』
『おぉっ!? 凄い!!』
『マジか!? めっちゃヤバくない!?』
マジックリングをモンスターが扱えるのかはわからない。だが、マジックボウガンをミラは使い熟している。これだって使える可能性が高い。
『ワッフル。腕にはめてみてくれ』
『わかった』
人間用の指輪だが、ワッフルのサイズなら腕輪として装備可能だろう。……ちょっと窮屈そうだがギリギリ装着出来たようだ。
『そうしたら、魔法の発動をイメージするんだ。攻撃魔法が飛び出すと危険だからターゲットはその辺にある木に向けてくれ』
ワッフルは近くにある木を見つめ、そのまま呼吸を整える。
力強く目を見開き、言い放った。
『魔法出ろー!!』
『『『…………』』』
……どういう事だ? 声掛けは兎も角、意識すれば何かしらの魔法は発動するはずだが。
特に何かが起こった様子はない。
それともモンスターだと発動出来ないのか?
『ワッフル。何か変わった様子はないか?』
ワッフルは俺達をジッと見つめながら顔を赤くする。
『何だか……ムラムラする……』
ズコーッ!!
想像もしていない発言に俺とミラは勢いよく滑ってコケた。
『ちょ、ちょっとあんた何言ってんの!? てか、あんた割と普段からムラムラしてるっしょ』
『は、はぁっ!? してませんー!! 全然ムラムラしてませんー!! そう言うミラこそどうなの?』
『あ、あーし!? べ、べべべべ別に』
『おやぁ!? その反応、あやしー?』
うわぁ、こいつら兎と芋虫の分際で何ちゅう会話してるんだ。
◉
そう言う会話は女同士の時だけにして欲しいものだ。男として……いや、俺スライムだから本当に男かはわからないけど、男としては何とも反応し辛い。
『それは肉体強化の魔法が付与されているでござる』
突然何処からか聞き覚えのない声がした。
声の方を向くとそこには一体の大きな蝙蝠……ウイルスバットの姿があった。
あいつは初めて人間を討伐した時に最後まで残っていた奴だ。……時折何処からか視線を感じる事があったが……もしかしてずっと俺たちを監視していたのか?
『ご丁寧にどうも。それで、俺たちに何か用か?』
『まぁまぁ、そう慌てなさるな。取り敢えずそこの兎嬢。魔法の力を試してみるでござるよ』
『試すって? 私はどうすればいいの?』
『そうでござるなぁ。……そこの木を力一杯蹴ってみるでござる』
ワッフルは言われるがまま、木に向かって思いっきり飛び蹴りを決める。
すると木は大きな地響きと共に根本から折れて倒れた。
俺とミラは唖然とする。張本人であるワッフルも唖然としている。
『そのムラムラに似た感覚は肉体が強化されている証拠でござる。体温の上昇と細胞の活性化で肉体が強制的に興奮状態になるってわけでござる』
『そうなんだぁ。少し複雑だけど……私嬉しい。これなら私も戦える』
これでパーティの力はさらに大きくなった。これからは更に戦い易くなるだろう。それと……ワッフルが嬉しそうで何よりだ。
『それはそれとして……おい、ウイルスバット。お前の目的を教えて貰おうか』
『そうでござるなぁ……。折角だがここで話すのはちと……。……どうだろう。話も長くなりそうなので、一度拙者の屋敷に足を運んでくれないだろうか?』
屋敷? このウイルスバットは屋敷を持っているってのか?
……いや、それ以前に人間だった頃からこの森は何度も探索したいるが、屋敷なんて見た事ないし、目撃したと言う話を聞いた事もない。
マジックリングについても知っている様子だったし、このウイルスバット一体何者なんだ……。
……まぁ、それもこいつといれば自ずとわかるか。
『別に構わない』
『忝い。では道案内をする故、このウイルスバットについて来て欲しいでござる』
ん? このウイルスバット……だと?




