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あれから数日。
ワッフルの傷口は完全に塞がり、身体も普通に動くまでに回復した。
だが、失ってしまった角はもう戻らない。代わる何かしらの武器を手に入れないと今後この森で生きて行くのは困難だろう。
『__と言うわけで、これから武器を探しに行くぞ』
『おー!』
何とも気の抜ける返事だが、本人はやる気十分の様で何よりだ。
……さて、これからが大変だ。
探すと言っても目的の物があるわけではない。『ワッフルの武器になりそうな物』という漠然としたものをひたすらに探す事になる。
そもそも角の代わりになる武器が何なのかさえ、今はまだイメージが湧かない。
ワッフルはうさぎなので人間のように手が使えるわけではない。つまり剣や斧は使えない。
頭部に固定して角のように使える武器なんて見たことも聞いた事もないし、そもそもあの小さい頭に武器を固定出来る気がしない。
森の中を漠然と歩き回る。何か見つかるか、何か思い付くまでひたすら歩くしかないのだ。
『グレイル! 止まって!』
ワッフルが足を止め、小声でそう言った。
二つの大きな耳がピクピクと動いている。
『何か聞こえるのか?』
『うん……。近くに人間がいる。ここからは少し離れた方が良いかも』
人間か……。
危険だが、もし人間が持っている武器や道具を手に入れる事が出来れば大きな一歩になりそうな気がする。
スライムと角の無いホーンラビットで人間を倒すのは難しいだろうが……。
『ワッフル。その人間が見えるギリギリまで近付いてみよう』
『えぇっ!? 私の話聞いてた!? 離れようって言ったんだよ!? 何で近付くのさ!?』
『隙を見て人間の道具を奪う。上手く行けば森では手に入らない物が手に入る』
『そうだけどさぁ……。何か策はあるの?』
『策は主に二パターン。基本は尾行だ。気付かれないようにひたすら尾行。人間は他のモンスター達と戦うはずだ。次第に疲弊してくる。弱ったところを俺たちで仕留める』
『なるほど。もう一つのパターンは?』
『夜まで尾行しても疲弊しなかった場合、野営しているところを狙う。寝入った際に道具を奪い去る』
『なるほど。了解!』
耳を澄ませて集中するワッフルの後ろに付きながら、ゆっくりと静かに移動する。
やがて俺の視界でも捉えられる位置に人間達の姿が現れた。
先日俺が遭遇した冒険者と同じだ。しかし鎧は傷と汚れまみれ。剣は刃こぼれを起こしている。顔は随分と窶れており、疲弊している様子が目に見えている。
『お、これはチャンスだな。もう少しここから様子を見るか』
『…………』
ワッフルの返事がない。
身体は小刻みに震えており、その表情は悲しみと怒りで満ちていた。
すぐに理解した。先日俺が遭遇した時に奴らは「ホーンラビットに逃げられた」と口にしていた。つまりこの人間達はワッフルに怪我をさせた奴らだ。
それとこれは推測だが、ワッフルの仲間達もこいつらにやられてしまったのだろう。音を聞き分けて安全な距離感を維持出来るワッフルが角を折られるとは考え辛い。つまり、戦わざるを得ない状況があったと言うことだ。
……ここで逃すのは惜しいが、今回は見送った方が良さそうだ。
『ワッフル。今回は中止だ。一度帰ろう』
『何で? あいつら、殺すんでしょ? やるよ、私』
目、怖っ!!
血のように真っ赤に染まった瞳がこちらを見つめる。瞳孔は開いており、その奥に深い渦が見えた気がした。
どうやらワッフルは興奮すると目が赤くなるらしい。
『モンスターとの連戦で疲弊した場合は、な? もしこのまま夜になった場合、道具を盗み出すだけであいつらを仕留める事は出来ないぞ?』
『わかってる』
可愛いうさぎくらいに思っていたが、やはりモンスターか……。そう思ってしまうくらいに今のワッフルからは殺意や脅威と言ったオーラが漂っている。
冷静にさせる事も、引き上げる事も現実的に難しそうだ。
『ならいい。このまま尾行しよう』
俺とワッフルは息を殺して冒険者が疲れ果てるのを待った。




