29.国の風紀が心配だ
雪蘭から、「お色気三姉妹の珍道中~ポロリもあるよ~」を押し付けられた。
雪蘭と翠が夢中になる本、少し興味がある。
王はとりあえず、パラパラと読み始めた。
曲芸師である三姉妹は、興行として様々な町へ行く。その行く先々で、トラブルに巻き込まれ、男と恋に落ちる。毎話、判で押したように同じパターンだ。
奔放で性格の異なる三姉妹は、時に協力し、時にライバルとなり、男を奪って奪われ、ポロリもある。男は毎回、眉目秀麗な美丈夫だ。
(おいおい。あいつ、こんなのを読んでいるのか……)
ストーリーは実に荒唐無稽。次から次へとトラブルが降ってくるが、三姉妹は無敵の色気でかいくぐってしまう。
王が普段読むものは、推論に基づき思考実験をし、真理にたどりつくようなタイプのものだ。
それと比べると、恐ろしく自由だ。
作者は素面で書いたとは思えない。
(しかし、読み切ってしまったな)
早く寝なければと思いつつ、気づくと読みふけってしまっていた。実に不思議な魅力の本だ。最終ページで、ぱたりと本を閉じる。
(男を知らない、うぶな娘が読むものではないぞ……)
かなり際どい表現もあり、王としては国の風紀が心配になってしまう。
(「男女の心の機微を学びました」とあいつは言っていたな)
その時の、自信ありげな顔を思い出す。
実際にこの本から学べるのは、色っぽい女が服の裾をまくり上げれば、男が即座にかぶりつくという、現実ではありえないパターンだけだ。
(これが、男女の心の機微……くっ、くっ、くっ……)
あまりにこらえきれず、王は肩を震わせた。
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