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13.王が直接やってきた。文句を言うために

 翠がいつものように庭で鍛錬をしていると、向こうのほうから、なにやら騒がしい集団が近づいてきた。よく見ると、その中心にいるのは王だ。こちらへ向かってくる。


(王が、こんなところに?)


 王が先触れもなく後宮に来るなんて初めてだ。


 王の周りには、慌てふためく護衛と女官。それらを引き連れ向かってくるのは、翠のほうだ。


(私!?)


 周りに人はいないから、そうなのだろう。


 王は翠の前までくると、視線で人を払った。ささーっと護衛と女官は下がっていく。


「主上が後宮にお渡りになるとは、珍しいですね。何用ですか?」


「お前の仕業だろう!下女が、文字入りの扇子を振ってきた。こっちを向いてだの、手を振ってだの……あれはなんだ!」


(ん?少し怒っている?)


 なかなかいいアイディアかと思っていたが、あの二人組、やりすぎたのであろうか。


「主上は下女の間で人気があるそうです。ステキすぎて視力が回復するから見ていた、と。それが、あなたが感じる目線の正体でした」


「なるほど。それで?」


「扇子を持った彼女らは、その中でも熱狂的で、主上ににガチ恋しているそうです」

「が、がち?何だって?」

「ガチ恋です。憧れが膨らみすぎた結果、視力が回復し、恋愛感情に発展する現象だそうです」

「初めて聞く現象だな……」


 王は眉をひそめる。


「チラチラ見られるよりは良いかと思い、扇子を作成し、堂々と見るように彼女らに言いました」

「分かった……」


 王はなぜか頭を抱える。堂々と見られ、扇子を振られるのも、あまりよくなかったのかもしれない。


「主上は、敵ばかりと言っていましたが、味方もたくさんいるじゃないですか」


 王はハッと顔を上げ、少し笑った。


「ふ……、そうだな」

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