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男女比1:99の世界で“男”になった俺は、愛ではなく管理対象として扱われる  作者: こうた
第5章余白の始まり

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余白の始まり


回収システムは、沈黙していた。



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停止ではない。



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“判断保留”。



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この世界ではほとんど起きない状態だった。



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神代湊と一ノ瀬梨沙は、封鎖フィールドが消えた後の空間に立っていた。



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風が戻っている。


音も戻っている。



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だが、何かだけがまだ戻っていない。



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「……終わった?」



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梨沙が小さく聞く。



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神代は少しだけ周囲を見る。



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回収ユニットは消えている。



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警告音もない。



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しかし、自由とも違う。



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「終わってないと思う」



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神代は言う。



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梨沙は少し笑う。



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「うん」



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その“うん”には、いつもの確信があった。



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神代は初めて気づく。



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梨沙はずっと、“結果”を見ていない。



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“選んだ事実”だけを見ている。



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遠くで都市の放送が流れる。



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【異常個体の観測停止】

【通常運用へ復帰】



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通常。



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その言葉が、逆に遠い。



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神代はゆっくり歩き出す。



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梨沙も並ぶ。



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「これからどうなるんだろうね」



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梨沙が言う。



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神代は少し考える。



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そして答える。



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「分からない」



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その言葉は、もう以前の“分からない”ではなかった。



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“未定”だ。



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都市は変わらない。



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制度も変わらない。



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男の希少性も、管理構造も、何も変わらない。



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それでも。



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たった一つだけ違うものがある。



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“決められていない二人”。



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梨沙が少しだけ空を見上げる。



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「ねえ、湊」



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「生きてるってさ」



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「こういう感じなのかもね」



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神代はすぐに答えない。



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だが否定もしない。



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ただ、歩く。



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都市の中に戻っていく。



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だが以前のように“戻されている”感覚はない。



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自分の足で。



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自分の意思で。



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管理システムはまだ動いている。



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観測も続いている。



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それでも今だけは。



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神代湊は“未定の存在”としてそこにいる。



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(第5章・終)



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